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クエスト・再開

「ほォ。先程までとは気迫が違うな…バグズ、ダグズ!てめぇら、手出しすんじゃねぇぞ!このガキとサシでやる」


相手のリーダーは俺とサシでやると言いだした。

それはこちらとしても好都合だ。シドはそれを承諾し、右手に魔力を送り零の刻印を発動させた。


「『我が手に刻まれし刻印よ、我が魔力を糧として、我に大いなる力を分け与えたまえ出でよ…

霧祿(むろく)』!」


唱え終えた時には俺の掌に黒い霧と共に短い日本刀が宙に浮いていた。



『霧祿』

この刀は森羅万象と共鳴し、かつ、万物を切り落とす刀。

柄、鞘、刀身までもが黒。本来ならば切口から霧に変えて霧散させてしまうが、今回は対人戦という事でその能力は使わず、『刀』として使う。



続けてシドが取り出したのは二本の針。なんの変てつもない普通の針だ。これは非常事態のためだ。


「禁術かよ……でも、その小さい刀でその上サシなら俄然、負ける気はしねえよ。そして、俺は盗賊だ。欲しいものは奪っていく!今捕らわれてる女を賭けよう…」


「あぁ…いいぜ。逆に、俺が勝ったら?」


「……俺らが今日奪った金目のもの、全部くれてやる。


さぁ、殺ろうぜ…!」


…先に仕掛けたのは相手だった。相手はククリナイフを取り出し迫ってくる。それをシドは軽く避けた。

それからも相手の猛攻は続く。何度かシドにダメージを与えていくも、ただ無造作にナイフを振り回しながらの単調な攻撃だ。


一方シドはというと、始まってからなにもしていない。ただただ、避け続けるだけ。

反撃の時を伺っているのだ。



(そろそろか……)


盗賊のリーダーがニヤリと口角を上げた


「……ぐぅ!?」


それと同時に、突然シドが傷口を抑え呻いた。


「…やはり、剣は良い…切っ先に毒を塗っておけば、なんだろうと無力化できる!…ポドラジャッカルの毒は即効性だが、何故だ…?てめえはすぐには膝をつかなかったが……まぁいい!これで仕舞いだ!死にやがれえええ!!」


相手が飛び掛かってきた。

腹、首、胸、腰、腕、脇…胴そのものがガラ空きの今が絶好のチャンス。

無論、この機を逃すわけがない。


俺はこの一週間、この禁術をモノにしようと、ルオやクレアの指導のもと鍛練を重ねていた。


例え身体に毒が回っていようと、膝をついている状態でも撃てるこの技は身体に支障を与えない。

俺は夢祿を逆手持ちにして、出来るだけ相手を刃ギリギリまで引き付ける。

そして、相手と刃の距離がゼロになったときに、この技は使える。


「『鬼道…空紅(からくれない)』!!」


途端に刃が赤く染まる。奴の血だ。

何処を切ってしまったのだろうと、飛び掛かってきた方向とは逆に吹き飛んだ相手をみる。腕を押さえて倒れ、呻いていた。


「━━━良かった…腕か…」


幸い、腕だったようだ。これが首筋や喉だった場合、間違いなく殺してしまっていた。

ルオを見張っていた馬主と盗賊二人組は急かさずリーダーに駆け寄る。


「━━━━グッ!……ルオ…今、助け…る…」


なんとか立ち上がり、ルオのもとへ急ぐ。

この鎖、切れんのかな…と思ったが夢祿の能力を使えば一発だ。

甲高い金属音と共に、鎖は黒い霧になり霧散していった。

鎖が解けたルオは迷わず、俺に抱きついた。


「━━━ッ!シド…!」


「…ごめんな、ルオ。心配かけて……おい、馬主!」


「ヒッ!?」


「俺はこの通り手負いだ。毒も回ってて厳しい。そこでだ、お前らのことは軍警には黙っておいてやる。

だから馬主、目的地まで送って、帰りも頼むわ。ちゃんと、金も払う」


「な…!?誰がそんな事……」


「いいな…?」


…この時馬主には、シドの双眼が『ここで死ぬか生きるかを訴えている』という風にしか見えなかったという……


「……はい…」


「よし…じゃあ、取り敢えず馬車に━━」


「「兄貴の仇!!」」


と、シドが言い終わるかどうかのタイミングで残り二人の盗賊が正面から飛び掛かってきた。


ここで教えておこう。

人間は針一本でも戦闘不能にできる、と…


俺は懐から針を二本取り出し、飛び掛かってきた二人の首筋に刺した。

…この仮説が正しいかは解らないが、人体には心臓麻痺を促進させるツボが数ヶ所有るらしい。そのうちの一つが首筋だ。


「今刺した二人は恐らく、10分程度で死に陥るだろう。死にたくないなら針を抜いてやる。そこのリーダーを連れて、ここから去れ」


「…グッ……チ、クショォ…」


「仕方、ねぇ…バグズ…ダグズ……針、抜いてもらえ…」


リーダーは体を起こしながら二人の助けを乞う。


「「兄貴!!」」


「頼む……こいつら、俺の大事な…仲間、なんだ」


「……」


俺は何も言わずに、二人の針を抜いてやった。


「ほら、さっさと行け…」


「あぁ…済まなかった。帰るぞお前ら…」


「「へい!」」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


さて正直のところ息絶え絶えで馬車に乗り込んだわけだが、車内ではルオが身体に回る前に毒抜きをしてくれると言うことでやってもらっているんだが…


諸君に問う。

ここは魔法の世界。火傷した時のように治癒魔法をかけてもらうのなら話は早い。火傷が治ったなら、毒だって手早く処置してくれるだろうと思っていた。


「はむっ……ちゅぅ…ちゅる、ちゅぷっ……」


「…………っ………ぅぁ………」



今俺は、ルオに毒を"吸出して貰っています"。



正直俺は今…恥ずかしすぎて泣き出しそうです……


「………お、終わった?」


「ぺっ………ま、まだ2~3ヶ所残ってる…」


「俺、恥ずかしくて…死にそう」


吸出した痕を見てみると、ルオの涎や吸出した痕でいっぱいになっていた。


「私の方が恥ずかしいよぉ…」


「…っ……ごめん続けて…」


「ん………はむっ…ちゅぷっちゅうぅ…ちゅる…」


「…っ………ふっ……ぅ………ぁ…………」


そんな感じで、ルオの毒抜き(意味深)は30分ほど続いたのであった………

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