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軽い息抜き回です。


余談ですが、なんで日本の自動車会社は昔ながらの車名を簡単に変えるんでしょうね。

 ブランドイメージって歴史そのものなのにねぇ。


 こちらの世界でも色々とイギリスと提携していたことがあるようで、ホンダとローバーとか、いすゞ自動車とロータスとかダイハツとデトマソとかがマニアには知られているようです。


 作品世界の提携はおおむね作者の趣味です(笑

 おとといの逆回しのような感じで東京に戻って来たぼくとリデル嬢は午前十時を回ったところで家に到着した。


 リデル嬢とは玄関先で別れ、ぼくは浴槽にお湯を張り、たっぷりと浸かった。デリバリーピザと一緒にビールも頼むという贅沢をして、マルガリータのSサイズを一人でたいらげて、夢も見ず眠り続けた。


 約束通り、次の日にはリデル嬢と彼女のチームメイトであるヴィヴィアンさん、そしてパートタイマーのママさんたちが手伝いにやって来た。彼女らはテキパキとぼくの家財道具を梱包しダンボールに詰め込んだ。本はダンボールの口まで詰め込むととんでもない重さになるが、ママさんたちはかまわず詰め込み、苦もなく積み上げた。


 翌日には彼女らの他にリデル嬢が手配してくれた引越し業者がトレーラーでやってきた。業者の方々はどう見ても、今でも「ナイフ一本で入山だ。」といった雰囲気の目つきの鋭い方々だった。

 本が多いので、とんでもない数のダンボールになったため、普通の単身者向けの引越しパックなんかではなく、貨物鉄道で使うような小豆色のコンテナに詰め込んだ。ママさんたちはもとより、業者の方々もエレベーターを使わず階段で重い荷物を持ちながら早足で働いていた。ぼくも手伝ってはいたが、どうにも業者さんたちの背中には立ちたくなかった。


 だって、偶然立つとすごい勢いで振り返るんだもんなぁ。


 ぼくらはトラックを見送ったあと、ママさん達には挨拶とせめてもの気持ちということでお茶のペットボトルとお弁当をお渡しした。ついでに冷蔵庫の中のものも未開封で賞味期限が大丈夫なものを持って行ってもらった。微妙な顔をするママさんもいたが、おおむね喜んでくれたと信じたい。残りは廃棄した。






 「やっぱ、リアはきついね。」


 「一応、四人乗りなんですけどね。」


 リデル嬢のトレイランフにはぼくの他にヴィヴィアンさんも乗って、厚木基地を目指していた。リデル嬢チームの固定メンバーはヴィヴィアン・コーワ・スワレイさん一人だけなんだそうだ。リデル嬢がイギリスに戻ることになり、ヴィヴィアンさんも一緒に戻ることになった。


 「代わりますか?」


 「いいよ。きみ、ゲストだし。」


 ヴィヴィアンさんは肩をすくめて、ヒールを脱いだ両足を後ろからのばしてきた。


 「ビヴ、素足なんて下品ですよ。」


 「ストッキング、はいてるよー。」


 気楽な様子で運転席と助手席の間にあるアームレストの上に乗せた黒いストッキングに包まれた足の指を動かしてアピールしたあと、ぼくの脇腹辺りを足の裏で押し付けてきた。


 気恥ずかしいが狭いから仕方がないと思うことにした。ぼくはヴィヴィアンさんに疑問に思っていたことを尋ねてみた。


 「ヴィヴィアンさんは日本語が苦手なんですか?」


 「別にそうでもないわよ。ただちょっと発音するときにうまく舌が回らないから、たどたどしくなるのが嫌なの。だから簡単に話しているだけよ。あとはちょっとしたキャラ付けかしら。」


 英語に切り替えて返事をしてくれた彼女は足の指でつついてきた。ため息をついたぼくは隣のリデル嬢に話しかけた。


 「むこうで、新しく車を買ったほうがいいかなぁ?」


 「別にいいですよ。私がお付き合いしますから。」


 「毎回そんなわけにはいきませんよ。それにイギリスでしか売っていない車種にも興味がありますよ。例えば、タートス グリーンバード SSSとかならヴィヴィアンさんもゆっくりと乗れるのじゃありませんか?」


 豊田=レイルランド社だけではなく、ダッチサンや本田モトダ=MJ、フォンデンプラス=プリンスなどの自動車会社はバッジエンジニアリングだけではなく、ブランドイメージにあったボディへの換装やチューニングを行い、地域限定車を作っている。軽い車オタクとしてはやっぱり試してみたいところだ。


 ぼくのことをよくご存知のリデル嬢は肩をすくめて見せたが、ぼくの右わき腹にヴィヴィアンさんの左の足先がねじ込まれた。


 鍛えているわけでもなく、デスクワーク中心の生活を続けていた柔らかい腹に彼女のつま先がめり込むのは恥ずかしいし、そもそもそんなことで悦にいる特殊な趣味嗜好はもっていない。ちょっと口をへの字に結んで振り向くと、ぼく以上に機嫌の悪い表情のヴィヴィアンさんがいた。


 「ビヴ。」


 「えっ?」


 「ビヴ。そうね。いいかも。でもどうせだったら、スカイライト プリンセスの方がいいわ。」

 どうやら彼女の呼び方がお気に召さなかったらしい。とはいえ愛称で呼ぶほど親しくなった覚えはなかったのだがと考えているとさらにつま先がめり込み、体がくの字になった。


 ぼくは頷いて見せて、愛想笑いを浮かべた。


 「ああっと、あれはいい車ですよね。でもあれって華族が乗るものですから、ちょっと。」


 「どーして?」


 「ロンドンで弁護士がベントレーに乗るようなものですよ。有名な弁護士はジャガーかダイムラー、お医者さんはローバーって感じじゃないですか? それと同じです。プリンスのスカイライト、グロリアは華族が、ダッチサンのセドリックや豊田=レイルランドのクラウンは会社の社長が乗るものなんです。」


 「おぉ、なるほどね。よくわかった。」


 「ええ、だからぼくはグリーンバードやコロナやシビックがちょうどいいんですよ。」


 「じゃあ、エリーに買ってもらおう。ボスなら持っていてもおかしくないよ。」


 「ビヴ…、余計なこと言わないでください。」


 ビヴさんの言葉にリデル嬢の顔を見てしまった。日本語も堪能でしかもきれいな言葉を使う。どことなく品はある。思わずぼくがリデル嬢に尋ねてしまった。


 「リデルさんは貴族なんですか?」


 リデル嬢は運転しているために振り向くことができず、ため息をついた。そして面白くもなさそうに答えてくれた。


 「親がナイトってだけです。一代限りですから私は一般的な市民です。それより公務員がベントレーのような車を乗り回していたらおかしいでしょう、ビヴ?」


 「そうかぁ? よそのチームリーダーにはアストンマーチンのヤツがいるよ?」


 「あれは映画です。それよりも、もう着きますよ。」


 リデル嬢は再度ぼくの方をちらりと目を向けた。エージェントの割によく表情が変わる人だと思うが、ビヴさんの失言の時とは違った感じのじめっとした目線をぼくによこした。


 「ヴィヴィアン・コーワ・スワレイのことをビヴと呼ぶのでしたら、これから私のこともリデルさんではなく、エリーかエルシーと呼んでください。個人的にはエルシーの方が好みです。」


 「は、はぁ、わかりました。エルシーさん。」


 「とてもよろしいです。」


 プロットだけ妄想していた他の作品の中でアリスさんの名前がジェイミー・ボンドでした。ジェームス・ボンドをもじった偽名なんですけどね。


 あと、華族制度は戦争に負けてはいないことと、英国と合わせる形で特権をだいぶ排した法整備として残っています。だから名目だけですね。それでも一応、こちらの世界よりも日本は階級社会が残っています。

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