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ことわざ探偵シグの返報性  作者: 穴開き靴下
プロローグ
1/4

気まぐれ

 僕はきっと神様に選ばれたのかもしれない。

 でも、その神様はバカ野郎だ。野郎かは知らないけれど、きっとバカだ。できれば美女がいい。大抵神様は白髪の髭がもじゃもじゃに生えたおじいさんだろう。残念だ。

 とにかくそのバカは地上に人間を誕生させ、特定の人物に能力を与えた。特定の条件があるかはわからない。僕以外に能力者にであったことがないからだ。

 もしかしたら、能力を持つのは僕一人なのかもしれない。そうだったら荷が重い。きっと世界の命運を懸けて、邪悪な奴と戦わせられるのだろう。そうだとしたら一発で殺される自信がある。

 それだけ僕は臆病で、脆弱で、弱虫だ。

 なので、神様。僕は戦いなど望んでいません。僕が前世に何をしたのかはわかりませんが、戦わせるのだけはやめてください。痛いのは嫌いなんです。

 テレビゲームのアバターが毒に侵され、バタンッと倒れる。そしたら画面いっぱいにGAME OVERと描かれる。それに、悲し気なBGMを添えて。ゲームの主人公ですら、毒に侵され無様な死を遂げる。ゲームの中でさえも、愚かな死に様なのだから、現実はもっとひどいだろう。

 タンスの角に小指ぶつけて死ぬのではないか。

 段差に躓いて受け身も取れずに死ぬのではないか。

 蔓延しそうで蔓延しなかった疫病で唯一の死者になるのではないか。

 僕が死ぬのならば、きっとそれくらいくだらない理由なのかもしれない。

 そうでなければ、この神様は現代社会に適さない能力を与えなかったはずだ。

 締め切ったカーテンを開ける。

 まぶしい。これが夕日なのだからおかしい。夕日にすら目を細めてしまうのだから、僕はどれだけの時間を暗い部屋の中でボタンを押す作業に費やしてきたのだろう。

 暗くてほとんど見えなかった部屋の全貌が明らかとなる。殺風景で個性の欠片もない部屋。ベッドとタンス、テーブル、テレビ、家庭用ゲーム機、もう勉強しなくなった勉強机があるばかりだ。

 これを個性と言っていいのかわからないが、何日前かわからないカップ麺とコーヒー牛乳のパックが二、三個テーブルの上に放置している。フローリングの床にはティッシュが散乱している。

 汚部屋だ。何週間も掃除していない。

「掃除しよ」

 部屋を出ると、廊下があり、左の端にある階段を下れば一階に降りる。ちなみに左の部屋は妹の部屋で、右の部屋は姉の部屋だ。階段を下りると、すぐそばに風呂場がある。掃除機などの掃除用具が収納されている物置はその隣だ。

「その前に風呂入ろ」

 なんとなくそう思った。 

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