表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

溢れる涙と嗚咽の中、答辞は進む。

時は戻って1時間前。

登校し、教室に入る。

黒板には大きく書かれた「祝!卒業」の文字。

いつもと変わらない風にしながらも少し緊張した様子のクラスメート。

無駄に大きなハンカチを持った女子が複数人。

背後の扉が開く。

「よーし、じゃあ移動してー」

担任だ。呼びに来て移動を喚起している……あぁ、今年も始まってしまうのだな卒業式よ。


パッヘルベルのカノンに合わせてゆっくり、ゆっくりと入場する。

写真撮るなオカン。フラッシュが眩しい。

席に着いた。音楽が止まる。

ここから始まる、キュウ○ネコカミじゃぁ……ない。俺の戦い。

卒業証書をもらう。振り向く。写真撮るなオカン。

校長の話。教育委員会長の話。PTA会長の話。

無駄に長いんだよな……これからは1行30文字、3行制限を設けよう。よし。

そして送辞。

現生徒会長、真田君が読む。

多分書いたのはほとんど直されたのであろう文章。

ふと周りを見渡す。全4クラス、総勢約150人。撃沈率、実に45%。

まだ1時間ちょっとしか経ってないぞ……?

「これからの益々のご活躍を祈り、送辞とさせていただきます。」

はい。よくできました。

「答辞。卒業生代表、榊奈々。」

「はいっ」

元生徒副会長、榊奈々(さかき なな)。

身長165㎝程度、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。

運動神経抜群。優秀な頭脳。そしてこのルックス。

榊のことが気になって仕方がない男子、約83,4%。ソースは俺。

だがしかし残念だったな。榊には彼氏がいる。

意外と知られていない事実だ。

と、いらないこと言ってる間に答辞は進んでいた。

現状報告。撃沈率、80%。

なるほど。榊奈々……マジかこの女。

「3年生、最後の合唱コンクールではっ……ぅっ……綺麗な……歌声が体育館に―」

このタイミングで泣かれますか。いやぁすげぇ。怖ぇ。

文章はただ自分たちの中学校生活を振り返った稚拙なモノだ。

それなのに撃沈率はどんどん上昇する。

只今の撃沈率、87%。

まずそもそも。

何故泣く。

そんなに想いがあるのか。

この学校に。この学年に。このクラスメート達に。

我が第一湊中学に受験はない。

学区に住んでいれば自動的に通うことになる学校だ。

そんな学校に思い入れが?いや、ない。

中学なんて設備、構造は学校ごとにそう変わるものではない。

では学年、クラスメートか?それもない。

どんな奴だって嫌いな奴の一人や二人はいるだろう。

そいつと離れられると考えれば気が楽で仕方がない。

でも仲のいい奴とも離れるって?何を言う、笑わせるな。

今やLINEなどという便利で画期的なものがあるではないか。

遊びたければ集まって遊べばいい話だし。

話したければLINEすればいい。

と、いった具合だ。何が名残惜しいのだ。何か足りないと言うのか。

答辞を終え、涙ながらに帰ってくる榊。

撃沈率が90%超える中、俺は思うのだ。

「俺には……分からないッ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ