魔剣
俺は今、親父殿の工房『雷神の槌』に来ている。
塩と水を持ってだ。汗かくしね。熱い職場って大変だよね。
「おっ!よく来たなバルカ!前から言ってた見学か?」
汗を布でぬぐいながら笑顔で話しかけてくれた仕事中にすまいないね。親父殿
「はいっ!お父さん!塩と水だよ!さっき汲んで来たからまだ冷たいはずだよ!」
「そうか。大丈夫だったか?まだ重いだろうに。」
そうなんだよね、重いんだよね・・・つるべと桶の古い井戸だから子供の俺には正直かなりの重労働だ。ポンプが欲しい!
ポンプの事を言うべきか?いや・・・でもこれは革命が起こる・・・どうするべきだ・・・。
「うん。でも普段からやってるからね!重かったけど大丈夫だったよ!」
日和見最高!えへへ。まだ慌てるような時間じゃないってね!
「坊ちゃんは相変わらずに凄いですね。」
20半ばになろうか。筋肉達磨だが快活に笑って褒めてくれる。親父殿の親友にして武器の製作統括をやっている一番弟子だ。
「ありがとうゴーズ!でも僕には最近覚え筋力向上の魔法があるからね。少しは増しだよ!」
「もう初級魔法を習得したんですか!?流石ですよ坊ちゃん!」
初級魔法は早くても11歳からと言われている魔力の扱いが難しいからだ。才能がある人でも8歳前後、5歳で使える俺は凄い驚かれた。予想以上だったみたいだ、そりゃ常識で言えば驚いて当たり前だけど。
「今日の仕事はもう終わりなの?何か作ってる所を見たかったんだけど・・・。」
この流れをぶった切る!驚かれるのにはもう飽きたっちゅうねん!
あ、でもメリーさんは相変わらず萌えたな。流石俺の萌えキャラやで
ちなみにメリーさんに前から説明注意事項と教えて貰ったわけだけどその時が
「なるほどー。難しそうだけど頑張ってやってみるよ。・・・・・・う~ん、やっぱ難しいね・・・」
「それはそうだよ~バルカくんが思ってるほど初級魔法は簡単には行かないよ~?基礎とは格が違うからね~」
と凄く微笑ましい感じで慈愛に満ち溢れ緩みきった笑顔で言っていた。
まあ俺に勝算はあったからすぐにハチャメチャになったけど
「あ!これもしかして出来たっぽい?ぽい~?」
「ええええええええええええええええええ!!!!!!」
凄まじい勢いで俺に近づきなんでー!?と連呼する。
あの・・・近いっす。あ、いい匂いするな・・・てか本当に胸でけーな・・・。
って事があった。
閑話休題
「え?あああ~今昼飯が終わったんで最後に俺が剣を1本打とうとしてた所だよ」
気を取り直してなんとか俺に教えてくれた。
「よかった~それみててもいいかな~?」
「そりゃ光栄だな!でも焼けどには注意してくれよ?」
どうやら乗り気になったようだ。この工房の鍛冶師は子供の憧れの職業で人気があるから得意げにもなるんだろうな。
「だいじょうぶだよ。離れてみてるからさ!」
そうしてゴーズは剣を打つべく作業に取り掛かった。
俺は夢中になって作業を見詰めていた。単純に格好良いなと思った。
たしか焼きいれと焼き戻しがあるんよな~と考えているとゴーズは焼入れを行った。
それを見て流石は第一級の鍛冶職人と思ったその直後焼き戻しをしない事でつい俺は運命の一言を発してしまう。
「あ~焼き戻しはしないんだなー」
その言葉にゴーズは反応して打っていた剣を落としたのもお構いなしに俺に問いただす。
あ~あ~、あの剣はおじゃんだな~もったいね~。
「坊!焼き戻しってなんだ!何処で聞いた?!どういう効果がある!?」
凄い形相で俺の肩を掴み聞いてくる。
「痛いよ!ゴーズ落ち着いて!?痛くて喋れないよ~」
はっとなり俺の肩を掴んだ手を放し頭を下げ何度も詫びる。
いやーマジで痛かった・・・てかこれやっちまったな・・・はぁ・・・。
「すまなかった。坊ちゃん取り乱した。本当に大丈夫か?」
「うん、すぐに離してくれたし大丈夫だよー」
一度深呼吸をして俺は語りだした。
「えっと焼き戻しってのは水で冷やした後にまた火入れをして叩くんだってそうするときょうじんせいが増すらしいよ?でも同じことをやったら失敗したみたいでぼくにも本当かわからないかなそういう話を街で聞いた気がするって位あやふやだし・・・」
最後の方は苦しかったか?でも俺もにわかで詳しく知らないし知っていたらそれはそれで不自然すぎるからこの辺が妥当かな?上手くいってくれよ!
「なるほど・・・焼き戻しか・・・挑戦する価値は十分ありそうだな・・・」
ふぅ~なんとかなったかな・・・?
「坊ちゃん!何かその話で気になった部分はあるか?」
「えっと・・・冷やしてまた熱を入れるんだからすぐ短時間でやってるのかな?わかんないな焼き戻しって響きが印象に残った程度だから・・・ごめんよゴーズ」
これでなんとか頼む・・・あとはプロの仕事だぜ!?
「そうか・・・すまない坊ちゃん。そもそも詳しく知ってるわけもないのにな・・・せっかく聞いたんだし短時間での焼き戻しを何度かやって試してみるよ。ありがとう」
「ねえゴーズ。何でそんなに気になったの?」
「ん?ああそうか、焼入れってのはそもそも失敗からの発見で得た事なんだが硬くはなるんだけど折れやすいんだよ、まあ魔法で折れにくくはしてるけどな」
なるほどな見えて来たぞ。
「それで正規の方法やなんとかならないかなと試行錯誤をしてた所で聞いたもんだったからついな・・・。」
やっぱりか~そりゃ気になるよなーつか魔法でか?硬化系でも施して誤魔化してるって所か・・・ん?待てよ・・・属性の付与って出来ないのかな?・・・気になるな・・・
「ねーゴーズ。魔法で折れにくくするのは解ったんだけど属性とか付けれないのかな?防具にはされてるのに武器にされてるって聞いた事ないんだよね」
「あはははははっ!坊ちゃんそりゃ無理だよ。例えば剣に火の属性なんか付けたらその熱で脆くなって使えないだろ?風だと相性が悪い、土だと重くて振れない、水だと俺にはその意味が解らないしな。だから意味がないからしないんだよ」
ゴーズは子供ならではの発想に対してとても愉快に笑っている。夢見る子供はいいね~とか言ってやがる。くっそー馬鹿にしやがってー!
でも確かに納得だわ。そりゃ鉄に火とか熱で溶けるわなー・・・。
あれ・・・?確か俺水を汲む時に火を腕にまとい筋力向上させてたけど熱く無かったよな・・・もしかして・・・。
俺は確認のために腕に軽く火をまとって見た、そうするとやはり熱くない。
これはもしかして出来るんじゃないのか?
「ねえゴーズ、そこの失敗した剣に試しにやってみてもいいかな?」
「ん?あ~失敗作になっちまったしな構わないぞ!」
イラつくほどニヤニヤして愉快そうにして剣を持ってくる。
今に見てろよー!
「ありがとうーじゃあやってみるね!」
さて本番だ!
付与するのは取り敢えず筋力向上だな。火を纏わせてみたいけど順序よくだ!
ちなみに防具だと文字通り筋力が向上するが効果は低い。武器だと現在は謎だけど予想としては攻撃力UPって所か?
俺は集中して腕から剣に魔力を流し同じように筋力向上を剣にかける。
そして剣は見た目では燃え盛りだした。熱くは無い問題なく持てる成功だ。
後は試し切りだな
「ゴーズそこのくず鉄の塊に切りつけてもいいかな?」
あっけに取られあっさりと許可が出る。
「よいっしょーっと!」
簡単に鉄を切れてしまった。攻撃力向上だなまさに!
「魔剣・・・・・・。」
そう消え入りそうな声で呟いた声を俺は聞き取れなかった。
そしてこの出来事が世界初の魔剣誕生の瞬間であった。