序章
産まれて5年が経った。
どうやらこの世界は異世界物によくある中世で魔法あり魔物ありの典型的な異世界だ。階級もしっかりあり予想通り爵位で奴隷も居る。人種も人、獣人、亜人、妖精族がいる。妖精族はエルフだ。フェアリーじゃなくてよかったよホント。
国の名前は『シオン王国』濁点があればと思ったのは内緒だ。
海と山に囲まれ肥沃な土地、広大な森、かなり大国だと思ったけどそうでもない魔物、魔獣の存在だ。少しづつ領土を広げているのが現状で隣国も似たような状態らしい。
2ヶ月もすれば赤子の体にも慣れ色々思考の日々が続いた。歩けるまでは苦労したよ。家は裕福でも貧乏でも無かったむしろそこそこにいい暮らしのようだった。
歩けるようになってからは圧倒的なMPを活かして無双!その為にも魔法習得だ!と思い家にあった書物もみたりしたが読めずに断念。
そうだよな。日本語なわけないよな・・・馬鹿すぎ俺・・・。
またしても人生設計の失敗と思ったけど救いはあった。
それは時折家に来てくれた金髪の綺麗なお姉さんだ。
よく俺の面倒を見てくれて色々と話してくれた。流石に赤子相手に国の話や魔物との戦闘での出来事や魔法の話ほんと幅広く喋りかけてくれた。最初俺の異常性に気づいたのか!と焦ったけど違っていた。何故解ったのかと言うと
「メリー?赤子相手にその話は無いんじゃないかな?ほらさ、御伽噺とか英雄伝とか子供の向けの話ってあると思うんだけど?」
と笑いを堪えるように話かけていた。メリーってのが金髪のお姉さんの事だってここで知った。
「すいません・・・何を話していいのか解らず自分でもこれでいいのか?と悩みながら喋っていました・・・あまりに無邪気に笑っている姿が可愛すぎて・・・。」
と真っ赤にしながら俯いてる姿が正直・・・萌えた!
とまあ、こんな事があったのさ!色々しれて嬉しかったからね。仕方ないね。はしゃいじゃったしね!色々知れて助かりました!
それから3年の月日が流れ、3歳にして初級魔法が使える様になった以外は平凡な子供だ。家事手伝いをしながら魔法を教わる。本当はもっと早く教えて欲しかったんだけど書物も読めないから文字の習得を優先して短い時間で教えて貰っていたのでここまで時間が必要だったけど今ではよかったと思う。
やりすぎて異端児とか気味が悪くなり売られるとかリアルに起こりえる事を失念していたからな。知った時に凄い寒気と安堵を覚えたんだ。それからはゆっくり始める事にしたわけさ。
そうして今に至るわけだ。家族の話もここでしておこう。
俺の親父殿レインは平民で鍛冶師をしている苗字は無い。
驚いた事に親父殿は国でも5位に入る名工として知られ3人しかいないマエストロの称号を持っている。なにやらコークスを発見した功績が高く評価されたらしい。
今は鋼の精錬に向けて頑張っているみたいだ。
お母様ソフィアはなんと子爵令嬢で魔法騎士の元隊長で今でもたまに軍の指導を行っている。苗字はあったみたいだけど平民の親父殿との結婚を機に苗字を捨てた。色々あったらしい。
魔法騎士は魔術師以上の魔法が使える騎士な訳だけどその人気は凄い。
魔法使いには魔法士、魔術士、魔導師、魔導王の4つランクに分けられ、低位、下位、中位、高位と分化されている。例外として超位があり主に固有魔術を持ちを指す。ちなみに【皇】は魔法容量=MPが一定以上ありなにかしら成果を得、認められたら名乗る事が出来る。魔法皇も一人居て宮廷魔導師をしている。
かなりハイスペックな両親なのになんで俺は微妙なんだろうと時折思いに耽る。
「バルカ!もし聞こえていたら手伝ってくれないかしら!?」
バルカってのは俺の名前だ。雷光って意味があるらしい。
「はーーい!今いきまーす!」
お母様に呼ばれた。どうせ何時もの弁当のお使いか家事の手伝いだろうな。
「じゃあ悪いけどごしごし洗ってくれる?私は絞って干すから。終わったらお昼にしましょう?」
洗濯板で洗うものだから腰が痛い。5歳児には辛いっす洗濯機が恋しい・・・。
「所でバルカ、貴方学校はどうだったの?」
この世界では5歳の3月から学校に入学する事が出来る。とはいえ1年だ。
ここで一般的な常識と適正があれば魔法の基礎を習う午前中だけなので家の手伝いも出来るように配慮?されている。働きたくないでござる。
10歳からは本格的な学校で5年学ぶ。15歳で成人とされるこの世界ではこの5年で進路を決め自分達の人生を歩む事になる。軍属での成り上がりもいいなと最近思っているから今から進路については幅が広い贅沢な悩みだ。それはさておき。
「ふつーだよ~」
「ふ~ん・・・そうなんだあ」
「ん?な、なにさ・・・?」
「好きな子でも出来た?八百屋のマイちゃん!あっ~商家のアンジュちゃんかな?」
どうしてそうなる・・・てか友達すら・・・・・・。うっ・・・石鹸が目に・・・。
「すきなこなどまだいませんよー、でもメリーさんとかはすきですねー」
つか男友達でもいいからくれ・・・家の農家で学校に全然来れないせいで男の比率少なくて辛いんだよ・・・あいつ等今の年ですでに3人も居ればめんどくせーんだよ・・・。男を・・・助けを・・・・友情を・・・。
「ふ~ん、そっかーじゃあ好きな子が出来たらお母さんにいいなさい?協力してあげるから♪」
ああ、これ通じてない奴や・・・。ま、いっか・・・楽しそうでナニヨリデス。
取り敢えずは親父殿の職場見学だな。今まで危ないから!って事で見れなかったけど5歳になってから解禁になったし興味あったんだよねー。
「ぼく、ごはんたべたらお父さんの所にいってくるよー」
「そう?気をつけて行くのよ?」
「はーい。わかってるよー」
こうして午後から工房に行く事になるが、新たな岐路に立たされる事を俺は知らない。