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四季の思い出  作者: 川澄 成一
四季のプロローグ
6/82

四季の始まり5

 それから何日も経ったある日、事件は起こった。俺はいつも通り美羽ちゃんの家に遊びに行って、美羽ちゃんと何をするか話していたときだった。


 「ねえ、美羽ちゃんなにして今日は遊ぶ?」

 「そうだね。なにして遊ぼうかなー」


 突然、屋敷の下から爆発音のような鈍い音が響き渡った。


 「なに、今の音は!?」

 「怖いよ想真君……」


 不安そうな顔で近づいてくる美羽ちゃんの手を握った。


 「きっと、大丈夫、大丈夫だよ。美羽ちゃん」


 そう言って笑顔を見せた。だけど、何がどうなっているのかわからず怖かった。手が震えそうになる。でも、美羽ちゃんに伝わらないように必死に耐えた。

 急にドアが開いて、家政婦さんが現れた。

 不安の中での急激な変化に俺は体が震えてしまった。しかし、そんなことを気にする間もないほどに家政婦は早口で俺たちを誘導した。


 「二人ともあちらの部屋へ。さあ早く!」


 家政婦さんも焦っていた。

 この状況の説明もなく俺達は急いで家政婦さんについて行く。

 走りながら窓の外を見ると、家の片隅からは黒い煙が立ち上がっている。門の方には野次馬までもが集まっているのが見える。

 何の部屋なのかわからない部屋に着くと、家政婦さんは入るように指示をして俺達を中に入れ、外から鍵をかけた。


 「大丈夫かな……?」

 「きっと大丈夫だよ。なんとかなるって……」


 そう言って部屋の隅に移動すると、けして一つではない足音が聞こえてきた。そして、銃声が聞こえたと同時にドサッと何が倒れる音が聞こえる。


 「家政婦さんがいたこの辺の部屋にいるのかなー?」


 甲高い男の声が聞こえる。


 「たぶん、ターゲットがいるのはここだ。はやく開けろ!」


 もう一人の焦っている声が聞こえる。

 俺達は怖くて手を強くに握っていた。


 「……あれ? 鍵掛かってるぜ」

 「そんなもの壊せばいいだろ、はやくしろ!」

 「はいはい。……まったく人使いの荒い人だぜ」


 そう聞こえた後、激しい爆発音とともにドアは部屋に木くずとなり吹き飛んでくる。


 「おっ、みーつけた。坊ちゃんかお嬢ちゃんどっちが力をもっているのかなぁ?」


 男が二人、入って来てくると、甲高い声の男が俺と美羽ちゃんをどちらから打とうかと楽しむかのように銃を交互に向けた。

 『怖いことってこう言うことなのか』と以前の記憶を遡り、悟った。


 「力を持っているのは俺だ。俺を殺せばいい、だからこの子を殺す必要はない!」


 俺は美羽ちゃんの前に立つ。

 あの日、あの時に守ると約束したのだ。だから、美羽ちゃんだけでも、せめて代わりぐらいにはなれるはずだ。

 そう思って……。

 だけど、それは叶わなかった。


 「おーおー、頑張るねー坊ちゃん。でもなー、そっちのお嬢ちゃんが力を持ってること知ってんだよ! 邪魔だ、どけっ!」


 男は俺に向かって発砲する。

 黒光る銃から放たれた銃弾は左足の太ももに当たり、気を失うほどの痛みが広がった。


 「あっ……ああああああッ!!!」


 俺は味わったことない痛さに膝を着き、手で必死に押さえる。


 「想真くん!? 想真くんっ!」


 心配になった美羽ちゃんが慌てて手を伸ばそうとしてくる。


 「ダメだ……! 早く、早く逃げてっ! 美羽ちゃん!」

 「もう無理だ、もう無駄だ、諦めろ。呪うのならその運命を呪え」


 男はそう言うと、美羽ちゃんの方に近づき銃を向ける。


 「じゃあな、お嬢ちゃん」

 「やめろおおお──っ!!!」


 叫び虚しく男が持った銃の引き金は引かれ、銃弾が放たれた。

 銃弾は美羽の心臓目掛け飛び、打ち抜いた。

 鼓膜に響く銃声と共に美羽ちゃんは倒れた。


 「よし、ターゲットは殺った。急いで戻るぞ!」

 「はいはい、わかったよ」


 その時だった。窓から見える空が輝きだし、光り輝く様々な花や花びらが降ってきた。

 その花びらは、屋根を通り抜け、下へ積もることなく吸い込まれるように消えていく。

 夢だと思った。俺はもう死んでしまうのだと思った。だけど、そんな信じがたい現象を目の当たりしているのは俺だけではなかった。


 「これは一体、何が起こっているんだ?」

 「不気味だ。はやく逃げるぞっ……!?」


 男がドサッと倒れた。


 「おい、大丈夫……」


 倒れた男に手を伸ばしたもう一人の男も倒れていく。

 俺はすかさず左足を引きずりながら、美羽の所へ近づいた。


 「美羽ちゃん! 美羽ちゃんしっかりして! 美羽ちゃん!」


 体を起こして何度も何度名前を呼んだ。

 その呼びかけに応えるようにうっすらと美羽ちゃんが目を開けた。


 「想真……くん……?」


 その声が聞こえたとたん胸が痛くなり、俺はギュッと自分の体へ抱きしめた。


 「ごめん……美羽ちゃん。俺は……俺は守れなかった。君を守ることが出来なかった……」


 涙で掠れた声は憎くかった、こうして何も出来なかった自分が。泣きながら、謝ることしかできない自分が……。そして、なによりも悔しいかった、目の前で生き絶えようとしている子を助ける力のないことが……。

 そんな気持ちが俺の手に力を入れる。

 抱きしめられていた美羽ちゃんに伝わったのか、美羽ちゃんは、俺に心配させまいとニッコリと笑った。

 その笑顔を見たとき、俺は堪らなく悔しい気持ちなった。

 もう美羽ちゃんは死が近いと言うのに、俺は美羽ちゃんに心配をかけさせてしまった。

 美羽ちゃんは、最後の力を振り絞り口を開いた。


 「仕方がないよ、そうなる運命だったんだから………だからねお願い、私のことを引きずらないで……前を……向いて……生きて……想真くん…………」


 最後の光り輝く花びらが美羽ちゃんの頭に乗りニコリと笑い、美羽ちゃんは目を静かに閉じた。


 「美羽ちゃん! 美羽……ちゃん……」


 俺の視界がぼやけ、視点がぶれる。

 くそっ、こんな時なのに……。

 防護服に包まれた自衛隊らしき人が部屋の中へ入ってくるのが見えた。


 「おい! 大丈夫か!?」

 「二人を急いで病院へ運べ! 急げっ!」


 そこから意識はなかった……。


~*****~


 意識が徐々に鮮明に戻り目を開けると、そこは病院だった。

 隣には母が居て、俺の手を握ってくれていた。


 「よかった意識を取り戻した」


 母は、ホッとした顔を見せる。


 「美羽ちゃんは?」


 母は目を閉じ首を横に振った。


 「…………ぁぁ……ああ、ああああ!!!」


 気づけば、俺の目から涙が流れていた。

 俺は、俺は美羽ちゃんを守れなかった。ただ、抱きしめてあげることしか出来なかった。それを考えると、声は嗚咽を発し、涙は滝のようになり、もう、止めることは出来なかった。

 そんな俺を母は抱きしめてくれた。


 「俺は……美羽ちゃんを、守れなかった……」

 「そんなことはないわよ。ちゃんとあなたは美羽ちゃんを守った……」


 そう、母は優しく声をかけてくれた。

 でも俺は、思いのままに言葉を吐くしか出来なかった。


 「そんなことない! 俺は守れてないよ……だって、美羽ちゃんはもう──」

 「想真がそう思うなら、いつの日か美羽ちゃんに会って聞いてみるといいわ」

 「そんなこと出来るはずがない! 美羽ちゃんは死んじゃったんだ。どうやっても会えないよ!」

 「……あら、それはわからないわよ。そりゃ、今の想真では無理だけどね。でも、いつの日か会える日が来ると私は思っているわ」


 母は俺が落ち着くまでずっと抱き締めてくれていた。

 そして、落ち着たこと見計らって体を離し、棚の上に置いてあったお見舞いのりんごを剥き始めた。


 「今回の事件はね。不思議な力を持っている人が怖いから、強くなってしまう前に殺してしまおうと考えた人達が起こしてしまったの」


 母は悲しい顔をして、話を続ける。


 「襲われたのは、想真がいた瀬良家と白木家が同時に狙われたみたいだけど、白木家の方では死人は出なかったそうよ。あの光の花達のおかげね」


 剥き終わったリンゴを手渡される。

 そうだ、あの時の光の花や花びらは一体なんだったんだ?


 「ねえ、あの光の花ってなんだったの?」

 「あれはね、きっと白雲公園にある木に咲く花だと思うわ」


 母はナイフを置くと病室からも見える一つだけ飛び抜けて大きな木を見た。俺も母につられるように見る。

 四季の木。今は桜の吹雪を吹かしていた。


 「あの四季によって咲く花が変わる木が?」

 「そうよ、あの木には力があるの」

 「え? あの木にも力があるの?」


 そんなこと初めて知った。でも、一年中、それも四季によって咲く花を変えるのだから、そういう力を持っていても不思議ではなのかもしない。


 「ええ、この町に住む人が危なくなったら今回みたいに花びらや花を飛ばして助けてくれるのよ……」


 そう言う母だが、その目は四季の木を眺めて、なんだか遠い目をしていた。


 「そう、だったんだ……。それで襲って来た人達はどうなったの?」

 「襲って来た人達は全員眠って、今は起きて牢屋に入れられているわよ」

 「あれ、眠ちゃったんだ……」

 「そういうこと。さっ想真そろそろ休みなさい。まだ無理をしちゃだめよ」


 母が寄ってきて、さっと胸まで布団を被せられる。


 「うん、わかったよ。お休みなさい……」

 「ええ、お休みなさい」


 これが、俺にとって最悪の事件であり、俺の心を縛る記憶だった……。

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