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桜20“*****”

 アウラさんとの話し合いから俺達は、一旦セリアさんの部屋に戻り、事情を説明した。


 「──という訳で俺と舞は瀬良さんのお家に伺うことになりました」

 「うーん……やっぱりそうなちゃったのね……。残念だけどわかったわ」


 セリアさんは頬に手を当てて少し困った顔をしたがすぐに笑顔になる。セリアさん的にはどうやらこうなることはある程度は予想していたようだ。


 「すいません……。せっかく開いてくれた勉強会なのに……」

 「こういうことは仕方がないわよ? それに舞ちゃんの記憶手がかりがあるなら今はそっちを優先するべきだし……。あ、でも、だからと言って学生の本文である勉強をおろそかにしないでくださいね」


 生徒会長モードで注意を促すセリアさんは笑っていた。


 「もちろん、わかってますよ」

 「でも、想真くん想真くん。テストが明日だよ~。大丈夫なの?」


 寝起きといった顔で詩織が少し心配といったように聞いてくる。

 そうか、明日がテストか……。

 改めて勉強時間がないことを再確認させられる。


 「ま……まあ、なんとか乗り越えるさ……」


 乗り越えられない気がして思わず苦笑いを浮かべてしまう。


 「あの……想真くん……」


 そう小さな声で俺を呼んだのはリュアナだった。

 リュアナは詩織と違ってはっきりとして、起きたばかりとは思えないきちっとした凛とした姿。ほんと思わず見惚れしまいそうなくらい。それなのにリュアナはなぜか少し顔を伏せながら俺を呼んでいた。


 「ちょっと言わないといけないことがあるの……」

 「ん……?」


 深刻そうに呟くリュアナ。どんなことを言われるかわからないが心構えはしておこう。次の言葉を待った。


 「実はね、想真くん。私のお母さんが言っていたアポは想真くんじゃなくて私になっているの。だから、私がいないと瀬良家には入れないんだよ……」


 暗く沈んだような表情を浮かべるリュアナ。

 どうして、こんな表情をするのか、いまいち理解が出来なかったが、アウラさんがあの事件を知っていることを考えればなんとなく予想はついた。


 「そうか、わかった。それじゃあ、リュアナには悪けどついてきてくれるか?」

 「「えっ?」」

 「えっ!?」


 リュアナとなぜか舞が驚き、その態度に俺も驚いた。


 「なにか問題でもあるのか?」

 「だって、想真くんは……」


 また、俯く。そんな綺麗な顔を下げるなんて勿体無い。なんて言ってやりたいところだけど、事件のことを知ってそうなリュアナには簡単に顔を上げることは出来ないのだろう。でも。


 「俺は大丈夫だ。俺は一人じゃなければなんとでもなる。だからさ、一緒に来てくれるか?」


 リュアナに手を伸ばす。

 顔を上げてくれたリュアナはまだ、しんみりとした感じだったが俺を見てようやく笑ってくれた。

 その笑顔に俺は我慢出来ず、自分からリュアナの手を取る。


 「うわっ、ちょっと待ってよ。想真くん」

 「残念だけど時間がない。行くぞ舞!」

 「うん!」


 リュアナの手を引きながら俺達はセリアさんのお家を後にした。


〜*****〜


 「でも、本当によかったの想真にぃ? せっかくの勉強会だったのに……これじゃ、想真にぃのテストが……」


 一歩先に歩いていた舞がくるりと振り返ると心配そうな顔を浮かべた。


 「壊滅的な点数になるって?」

 「うん……」


 舞はコクリと頷いて肯定する。

 素直に頷くなよ。いや、舞が素直で実際そうなのかもしれないけどっ!


 「俺にそんな心配は無用だ。俺はちゃんと真面目に授業を受けているし、ノートも取ってる。これで最低限の点数は取れているはずだ」

 「うーん……」


 納得いかない唸り声をあげる舞。


 「それにな、これから行く場所は舞にとっても大事だけど俺にとっても行って意味のある場所なんだ」


 そう、たとえ舞のことがわからなくても俺は一度ちゃんと美羽ちゃんに会いに行かなければいけないと思っていたところだ。


 「それって……」


 肩並びに歩いていたリュアナが小声で呟いた。

 今の俺の発言で勘の鋭いリュアナなら気づいてしまったのかもしれない。だけど、それを話すのは今じゃない。心構えをして次の言葉を待ったがそれ以上リュアナは何も言うことはなかった。

 桜舞い落ちる桜坂。この景色はあと何度見れるだろうか。そう思い桜を眺めながら歩いていると、舞が突然止まって振り返る。


 「ねぇ想真にぃ、リュアナねぇ……ひとつお願い聞いてくれる?」


 手をもじもじとさせながら顔を伏せる舞に俺達は尋ねる。


 「……ん? どんなことだ?」

 「どんなこと舞ちゃん?」


 えーとえーとと少し躊躇うような仕草をしながら舞は言った。


 「三人で、手を繋ぎたいんだ。ちょっとだけでもいいから……ダメかな……?」


 俺とリュアナは顔を見合わせて、微笑み合う。


 「ダメなわけないだろ」

 「そうだよ。舞ちゃん」


 それを聞いた舞がまぶしいくらいの笑顔を浮かべて俺とリュアナの間に入って手を取る。その瞬間、何かが繋がった。だけど、その何かはわからない。

 なんだこれは……。そう思って舞と繋いだ手を見ていると急に揺すられる。

 俺は驚いて顔を上げると舞が面白そうに笑っていた。


 「舞……?」


 ──想真にぃ。今のは想真にぃの力が発現したんだよ。


 発現? それは一体どういうことだろうか? 舞に尋ねようとして俺は困惑した。

 今、舞は喋ったか? それは、舞が笑っていたさっきから困惑している今までずっと舞を見ていたから思ったことだった。


 ──想真にぃの力は人と人とをつなげる力。だから想真にぃは今、私とリュアナねぇと繋がっている。


 また、舞の言葉が聞こえた。と言うよりは響いてきたの方が正しい気がする。なぜなら、舞は一切、口を動かすことなく語りかけているのだから。


 (舞、これは一体どういうことなんだ?)


 そんなことを想い舞を見つめる。


 ──あ、やっと聞こえた。聞こえてないのかなとか思ちゃったよ。

 また、聞こえてきて、今の自分の想いが舞に届いていることがわかる。 


 (聞こえてる。聞こえてるから、どういうことなのか教えてくれ)


 ──そんなに急かさなくてもちゃんと教えるよ〜。もう、こんな時だけ積極的なんだから……。


 余計な一言を……。


 「痛い痛い痛い痛い!」


 さっきまで笑っていた舞が叫びを上げる。


 「ど、どうしたの舞ちゃん!? どこが痛いの!?」


 突然、痛がる舞にリュアナは焦りながらも膝を折り聞いていた。


 「手……」

 「どっちの手?」


 リュアナは何も疑わずに尋ねていた。


 「想真にぃと繋いだ手……」


 それを聞いたリュアナは俺をジト目で見上げた。


 「想真くん、これはどういうことかな? 小さな女の子の手を力強く握ることはあまり褒められることじゃないと思うんだけど?」


 あれ? 俺そんなに強く握った覚えはないんだけど……。まさか、舞のやつわざとあんなに痛がってリュアナを味方につけたんじゃ──。


 「ねえ、想真くん。どうしてそんなことをしたか、ちゃんと私に教えてくれるよね?」


 なぜここで笑顔!? ああ、そうか、怒らないよみたいな雰囲気を醸し出して自白させるつもりか。だけどリュアナ、それが効くのは小学校高学年までだ。高校生の俺には効かない。


 「え、えーと……。あっ、つい舞のことがかわいくてやりました」


 顔を伏せる俺にリュアナはまだにこやかな笑顔を向けてくる。


 「違うよね? これは先に言っておくんだけど、想真くんが誤魔化そうと頑張って嘘をついても私には通用しないからね。だって今の私は人の心が見えているから、見抜けないなんてことはないでしょ?」

 「な、なんでそんなことに力をつかっているんだよ……!?」


 駄目だ。……どれだけ、頑張っても力を使われればリュアナだけは騙せない。何か何かもっと真実味のある嘘は……。


 「ね……ねえ……想真くん。私と舞ちゃんと想真くんの心間に線のような繋がりが通っているんだけど……これって……?」


 恐怖に満ちた笑顔は消え、真剣な表情をするリュアナは何かを考えながら俺に聞いた。


 「俺にもさっぱりだけど、舞が……」

 「ねぇ、リュアナねぇには見えてるの?」


 舞の勢いに押されてか、リュアナは一歩下がった。


 「え? え? ……はっ! えーと……なんのことかな? 舞ちゃん? 私には何も見えてないんだけど……?」


 キョロキョロ、キョロキョロ。

 舞がどれだけ目を合わせようとしてもリュアナは絶対に目を合わせようとしない。まさに挙動不審。

 リュアナにしらを切るなんて高等テクニックだよ……。


 「リュアナ、別にしらを切らなくても舞は力のことを知ってる、それにもしかしたら俺達よりも知っているかもしれない」

 「それは無いよ、想真にぃ。だって私が知っているのって、想真にぃのことしか知らないもん」


 舞はそう断言する。


 「……なんか想真くんにとって都合の良いように記憶が残っている気がするんだけど?」


 俺を疑うような目で見るリュアナ。


 「先に言っておくけど、記憶の改ざんなんてしてないからな」


 どうだか、と呆れたようにリュアナは俺から視線を外した。


 「それで、舞。俺の力って一体……?」


 何度目になるかわからない問に、舞はやっと答える。


 「人と人とをつなげる力だよ……。伝えたいこと、思ったことをその相手に伝えさせて共有することが出来る。そして、この繋がりは、どこにいても切れることの無い繋がり。今で言う携帯電話みたいな感じだね」

 「テレパシー……」


 舞の説明を聞いてリュアナは思わずと言った様子で呟いた。


 「そうなんだけど、想真にぃの力はそれを遥かに超えている。想真にぃ、私とリュアナねぇに意識してみて」 

 「ああ、わかった……」


 舞の言われるがまま、俺は舞とリュアナに意識を集中させる。


 ──聞こえてるでしょ? リュアナねぇ?


 舞の声が心に響いて聞こえてくる。しかし、これは間違いなくリュアナに向けて言っていることだ。


 ──聞こえているよ……舞ちゃん……。


 沈んだリュアナの声が鈍く響いてくる。それが舞に伝わったのかコクリと頷いた。


 「これでどうかな? わかったと思うんだけど……」

 「うん、わかったよ……」


 はっきりと答えるリュアナ。そんなリュアナに対して俺は理解するのに必死だった。


 「えーと……つまりは俺を通して繋がった相手と会話が出来るということで間違っていないか?」

 「間違ってはいないけど、それだけじゃないよ。伝えたいと思ったこと全て、想真にぃに伝わるし、その他の人にも伝えることが出来るんだ。だから……」


 舞は何かを言うのに躊躇って迷ったように顔を顰めつかせる。しかし、何かいい案が思い浮かんだのか、ぱっと明るい顔をうかべるとクスッと笑った。


 ──だから、その人が見た写真とか音声とか、それどころかリュアナねぇの力だって伝えることができてしまう。その上、繋がった人に送ることも出来てしまうんだ。これがどれだけの力なのか、想真にぃにはわかるよね。


 舞にそう言われ、俺はしみじみと俺の力について理解した。


 (ああ……)


 そして、舞がどうして俺だけに教えたのかも納得がいった。

 もし、この力が世間に知られたら? その後どうなるのかは、身を持ってよく知っている。だから舞は俺だけに教えたのかもしれない。だけど、そこにはもうひとつ、俺にとっての利点がある。

 この場に居合わせているリュアナに余計な心配をかけさせないでおけることだ。

 この話をリュアナにすれば、間違いなく助けようといろいろなことをしてくれるだろう。しかし、それを見ている俺の方が心配になってしまうのは明確なことだった。


 「……ナイスだ、舞……」

 「そうでしょ〜」


 自慢げな顔をする舞にサムズアップをする俺。それについていけないといった感じでリュアナは首を傾げていた。


 「なんだか、舞ちゃんにも釘を刺されたみたいだけど、私も想真くんに言っておきたいことがあるの」

 「どんなこと?」


 ──力について……だよ。想真くん、力を使うってどういうことかわかる?


 なんでだろう……。こいつら、俺よりも俺の力を最大限に引き出している気がするんだけど……。


 (んー……この力を使うためになんらかのリスクがあるとか……?)


 ──うーん……惜しいような惜しくないよな回答だね。ねえ、想真くん、もうすぐ瀬良さんのお家がある道に曲がるんだけど、想真くんは気づいてた?


 「えっ?」


 驚いて辺りを見回せばリュアナの言う通り、左折しなければいけないところまで桜坂をおりてきていた。

 無意識のうちにここまで……。


 ──もうわかった? 力というものを使うということはこの現実から離れてしまうということを。


 確かにそうだ。力というものを使おうとすれば、その力に意識を持っていかれ現実が疎かになってしまう。現に今の俺がそうだった。


 ──だから、その力は本当に必要な時だけ使ってほしい。じゃないといつか……。


 言葉をと切らせたリュアナは何も言わず沈んだ表情を浮かべていた。

 心配をかけてしまった。ああ、こうなるなら俺が力を持っていること自体伏せて置くべきだったか……。

 誤った選択に後悔しつつ、俺は二度とリュアナにこんな表情をさせないよう、胸に誓ってリュアナに伝える。


 (わかった。これからは無闇に使ったりしないように自重しておく)


 ──本当にだよ?

 ──絶対だからね。

 ──絶対の絶対に守らないと針千本なんだからね。


 (……なぁ、リュアナ。心配してくれるのはありがたいんだけど、せめて声に出して言ってくれないかな? じゃないと、リュアナのせいで俺がこの世界から遠ざかっていく気がする)


 ──あははっ……ごめんなさい……。つい便利だから使ちゃいました。


 そう伝えてくるとリュアナ本人の表情は苦笑いを浮かべていた。

 表情に出ている本人は自覚しているのかな〜、っと思っているうちに門が見えてきた。

 昔、母と手を繋いで来たことがある。あの時の門が……。

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