もう僕はどうしたらいいかわからないよ……。
生徒会長が壇上に上がる。
頭脳明晰で秀麗な男は何故か体育教師から竹刀を借り受け、原稿と共に携えていた。
原稿を卓上に置き、送辞、と呟いた後、卓の前に進み出る。
すぅっと息を吸い込み、肩幅に足を開き、ダンッとステージに突いた竹刀の柄頭に両手を置くと、くわっと目を見開いた。
「先駆者達よ、その旅立ちに幸いあれ!」
涼やかな面立ちと温厚な笑みは一変、応援歌でも送るのかという猛々しさで唐突に彼は吼えた。
「見よ、汝等をことほぐ、いにしえよりこの地を守りし大樹の、祝福の聖なる吹雪を!」
……ハラハラ舞い散る桜は学校が建つ前から存在していたと聞く。
「日々我らを鍛え、研ぎ澄ませた、折々に触れ授けられし素晴らしき薫陶、厚く御礼申し上げる!」
…………それにしても、よく通る声である。
「連綿たる輝かしき伝統を受け継ぐ事を我らは今ここに誓う! だが!」
キリッと男の眼尻が切れ上がる。
「だが! ここは汝等の古巣ではあるが、今日より我らが根城であり、今これよりは我らこそがこの砦の主である!」
ダンッと竹刀がステージ上に突き立てられる。
「我らは今ここに汝等に反逆の狼煙を上げる! そして、革命を宣言するものとするッ!」
男は竹刀を振り上げ、天高く突き上げて高らかに宣言した。
…………………………もう僕はどうしたらいいかわからないよ。