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第四話 魔法使い4

「空?」


 ライドウが何を言っているのかわからず、聞き返すアリア。


「そう。まぁ、見てて。」


 ライドウはそれには答えず、右手を顔の前にかざすと、人差し指と中指を立て、他の指を握る。


『奇跡の力をこの手に宿す。』


 そして、ライドウが言葉を発すると、指先が光りだした。


「魔法?しかし、水の魔術は苦手なのでは。」


 アリアは訝しげに問いかける。

 

今、ライドウがしたのは、魔術師が魔法を行使する際の予備動作だ。

 魔法には、大別すると、3種類の発動方法がある。詠唱、魔法陣、無意識だ。

 詠唱の場合は、魔力を喉にこめて、言葉を発することで、魔法を行使する。そのとき重要となるのは、術者のイメージだ。詠唱魔法は術者の体内の魔力を使って発動するので、どのような魔法を使うのか、という確固としたイメージが必要となる。詠唱は術者のイメージの補完なので、どんな呪文でも問題ないが、無詠唱はよほどの強いイメージが無いと使えない。

 魔法陣を使う場合は、指先などに詠唱魔法で自分の魔力を込め、魔法陣を描くことで発動させる。魔法陣1つにつき1つの効果しかないので、応用がききづらいが、大気中の魔力を使用するので、威力や規模は詠唱魔法より大きい。ただし、普通、体に込めるのではなく、大気に放出した魔力はすぐに大気中に霧散するので、霧散しない魔力を描けるかが、赤鷹と銀狼の魔術師の差となる。

 無意識はそのまま。無意識に魔法を行使することだ。アリアのように剣を持ち戦う者たちが使う魔法は、大概がこれだ。基本的に身体の強化の魔法しかできないが、魔力を持つものはだれでも行使できる。ちなみに、体に込めやすい魔力は身体の強化が容易いが、大気中に霧散しやすいので、魔法陣を描くのが難しい。もちろん、身体強化ができて、魔法陣も描ける魔法戦士も数は少ないだけで、いるのだが。


 まあ、それはともかく、ライドウが指先に魔力を込めたということは、魔法陣を使って魔法を行使するということだ。火を消すための水の魔術は苦手だと言っていたはずだとアリアは思ったのだが。


「水が無いなら、集めればいいんだよ。」


 そう言ったライドウは、凄まじい速度で魔法陣を描き出した。

 光の軌跡が、円を形作り、その円を基準に、正方形、ひし形、星形、逆三角、更に小さい円、と様々な図形が加えられていく。

 図形を一通り描き終えると、今度は波打つ様な魔法文字が陣に書き足される。そこに迷いは無い。

 指先の動きはますます早さを増して、しかし、ゆがみは一切無い。

 

 ライドウの魔法陣を描く超俗的な姿、機能的な美しさを持つ魔法陣、光がきらきらと舞い散る幻想的な景色。


 綺麗だな。アリアは素直にそう思った。まるで、御伽噺の魔法使いのようだ。


『顕現しろ、我が力よ。』


 そして、発動のキーワード。


 ひときわ強い光が発されて、魔法陣が眩しく輝く。

 変化は、すぐにあった。

 ポツポツ、と音がしたかと思うと、それはすぐにザァァーという轟音に変わった。


 「これは、雨音!?」


 アリアは急いで寝室へのドアに駆け寄ると、ドアを少しだけ開けて寝室にある窓の向こうの景色をみてみる。

 

 そこでは、嵐が来てもこうはならないと思うほどの雨が降っていた。


 アリアは、驚愕の表情を顔に貼り付けながらライドウに振り返った。


「雨を降らしたのか!?どうやって!?」


 ライドウは、ピンッと指を立てると、自分がやったことの説明をした。


「簡単なことだよ。確かに、俺は水の属性は苦手だよ?ただ、水ってのは、結構そこら中にあるんだよ。川であったり、海であったり、空に浮かぶ、雲であったりね。だったら、それを集めてやればいい。今回は、空にある雲を使った。いいか、雲ってのは、小さい水の集まりなんだが、普段は小さすぎて、下から吹き上げてくる風とかの影響でなかなか落ちてこない。じゃあどうすればいいか。風の魔法を使って下にたたきつけてやればいい。」


 なんでもないことのようにいうが、そんなことをするにはとてつもない労力がいる。雲の位置、量の確認。現在の風向き、および、どの程度の風が必要になるかの計算。落下地点の確認、大気中の魔力を使った際の影響の計算、軌道の修正。

おまけに、ライドウは、今の魔術をさほど時間をかけずに発動させた。


「これが、金獅子の魔術師の実力、というわけか。」


 アリアは、今まで金獅子の魔術師が魔術を行使するところ見たことがなかったが、ここまで桁違いだとは思わなかった。


「そんな大層なもんじゃないよ。それより、どうするの?そろそろ雨も降り終わるよ?火は消えたし、もし予備の火矢があっても、しけってて使えないと思うから、ここにこもっててもいいと思うけど。」


 アリアは、首を横に振った。


「いや、打って出る。敵は今かなり混乱しているはずだ。雨がやんだら行く。あとどれくらい降る?」

「あと、30秒ってところ。」

「了解。」


 アリアは、外に通じるドアに張り付くと、腰に装備していた長剣をひきぬいた。そして、いつでも動けるように準備して、時を待つ。

 1、2、3、4、5、・・・10、・・・20、・・・25、26、27、28、29、30。

 

 

 

 音が、やんだ。


 




ご感想、大変ありがとうございました。参考にさせていただきます。

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