第三話 魔法使い3
ヒュー ドスッ ドスッ ドスッ ドスッ
風切り音がしたと思うと、連続して何かが突き刺さる音がした。
パチ パチ パチ パチ
そして、しばらくすると、物が燃える音が聞こえてきて、焦げ臭い匂いが漂ってくる。
ライドウの家が燃えている。
「これは、火矢か!?何の確認もせずに攻撃するとは、何を考えている!?」
「敵さん、問答無用だな。」
ライドウは呑気だが、アリアは落ち着いてなどいられない。ライドウを巻き込んでしまったこともそうだが、いくら追手が殺気立っていたとしても、いきなり火矢を放つなど、アリアには信じられなかった。
しかし、呆けてはいられない。
急いで立ち上がり、自分が寝ていた、寝室らしきところに戻ると、荷物を取り、剣帯を腰に巻き、長剣を装備する。
すぐに戦闘準備をするところはさすがだ、が、
部屋の窓から外を見てみると、茂みから、こちらを狙う弓兵と目が合った。
「くっ!!」
間一髪でしゃがみこむと、自分の頭の上を通り過ぎた矢が、壁に突き刺ささる。傷が痛む。
急いで居間に飛び込むと、ドアを閉めた。
居間にいたライドウは、顎に手をあて、冷静に現状を分析していた。
「有効な手だね?中にいれば蒸し焼き、外に出たら待ち構えた弓兵に撃ち殺される、と。よっぽど君を殺したいみたいだね。容赦が無い。」
「どうする?射線に出ると、今の私みたいに、速攻で撃たれる。かといって、このままここにいられる時間も少ないぞ?」
だんだん、火の勢いは強まっている。
「魔法で火を消したりできないのか?」
「さっき言った思うけど、俺、水の魔術は苦手なんだよね。」
むぅ、とアリアは考え込む。が、ライドウの魔法に頼れないなら、手は少ない。
「だけど、」
そう思ったが、続きがあるようだ。
「手が無いわけじゃない。」
にやり、と笑ったライドウは、上を指差す。
「天井?」
アリアが問いかけると、ライドウは、更に笑みを深くした。
「いいや、空だ。」