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僕らの仮面生活  作者: あるあーる
第一章
8/38

仮面の憂鬱

お待たせ?しました♪

第一章目に突入です(*^^*)


 六月、この付近でも梅雨入りを果たし、湿度も高く不快指数の高い時期になり、ここ紫鳳学園でも衣替えが行われた。


男子はポロシャツにズボン、女子はブラウスにスカートという格好だ。まあさしあたって珍しいものではない。だが、夏が近づいているという事実を季節が証明していると言うことが、生徒たちをどこか浮わつかせていた。


 そんな中、俺、東川雷斗は珍しく頭を抱えていた。理由は簡単だ。

今まで俺は優等生という『仮面』で学園を過ごし、夜には『本当の自分』の姿で街へ出てケンカに明け暮れるという生活をしていた。しかし、あることがきっかけで、そんな生活を過ごすことが困難になってしまったのだ。


 そのあることとは、西条 伶以子に秘密がバレてしまったことだ。西条 伶以子とは、黒くて長い髪をくくりあげていて、スケバンのような格好をしている不良生徒だ。目付きも、元々切れ長な目をしているのも影響して鋭い。一昔前の典型的な女の不良である。

そんな彼女に俺は秘密を知られてしまったのだ。だが、事はそう単純ではなかった。彼女にも驚くべき秘密があったのだ。


前述したように、彼女は周りも認める不良生徒だ。しかし、それは『仮面』をつけているに過ぎなかった。彼女の本当の姿、それは不良でもなんでもなく、ただの世間知らずのお嬢様だったのだ。どういうわけか知らないが、俺と西条 伶以子はお互いに秘密を知ってしまい、今に至る。さらにもう一人、南島 十夜という、中性的な顔立ちに、くすんだ金髪、両耳にピアスをつけた不良の男子生徒にも俺の秘密がバレてしまった。だがそいつにも実は秘密があり、それは不良という『仮面』をつけたオカマだったということ。



とまぁこれだけの出来事が、ここ数日間で俺を襲ってきたわけだ。普通なら訳がわからなくて発狂するレベルだ。幸いにも、秘密をバラすだのなんだのというやり取りがあったわけではない。だが、自分の生活リズムを崩されたことで俺は少しやるせない気持ちになっていた。



「はぁ…」

自然とため息が漏れる。

そんな俺の心中を知ってか知らずか、何処からともなく明るい声が聞こえてきた。


「雷斗~♪」

ふと見上げると、大きな丘が二つ目の前に並んでいた。制服の上からでもわかるその豊満な二つの丘、つまり胸を俺はボーッと見ていた。あくまでボーッとしていただけだぞ?


「っもう! どこ見てるの!? 雷斗のエッチ! でも、雷斗がどうしてもみたいなら……//」


「何のようだ?優香里」

北森 優香里。俺の幼馴染みで学園の人気者だ。勉強も出来て、スタイルも良い。髪は黒くないが、よく手入れされた茶髪のセミロング。目はパッチリと大きく、鼻筋も整っている。

風の噂で聞いたのだが、芸能人事務所からスカウトされたとかされてないとか。

まあ優香里ほどの人物ならあながち噂も嘘じゃないのかもしれない。


俺は考え事を止めて、話しかけてきた優香里に向き直る。


「んもー、素っ気ないんだから!! 雷斗が元気ないから励まそうと思ったのに…」


「ありがとう。気持ちだけ受け取っとくよ」

俺は再び素っ気なく返答する。

俺がこういう態度がとれるのも幼馴染みという安心感もあるのかもしれない。

それでも周りに『本当の自分』を、自らバラすようなことはしない。もちろん優香里にも。


「そんな雷斗君に吉報があります!」

俺の素っ気ない返答をもろともせず、優香里は底無しに明るい声で続ける。優香里も俺の正体以外のことはよく知っている。

例えば普段からニコニコするような人間ではないと言うことも。それを知っていてなお、付き合いを続けている。いや、だからこそこれまでも良い幼馴染み関係を築いてこれたのだと思う。そして多分これからも…


そんなことを考えていると、どうやら優香里の話は終わったようだ。

「ってちゃんと聞いてた!?」


「何が?」

俺は優香里に聞き直す。 どうも考え事をしてると話を聞くのを疎かにしがちだ。


「だーかーら!!今度の土曜日遊びにいくからね!」


「誰が?」


「あたしが」


「どこに?」


「雷斗の家に」


「なんで?」


「雷斗を励ますために♪」


「いや、俺は別に……」


「とにかくそう言うことだから! しっかりもてなしてよね♪じゃね~」


「あ、おい!?」

そう言い残して、優香里は自分の教室に戻っていってしまった。追いかけるにしてもあと数分でホームルームが始まってしまう。仕方なく俺は席に座り直した。土曜日…何かあったような気がしたが、思い出せないまま時間が過ぎていった。



そして昼休み。今日は朝、昼飯を買い損ねたので購買にでも行こうかと俺は席をたつ。

と、その時俺を呼ぶ声がした。


「おい雷斗、昼飯いこうぜ!!」

振り返れば、そこには先日俺と殴りあった南島 十夜(オカマ)がいた。


「あいつ隣のクラスの…」


「なんで不良が東川君のとこに…?」

周りの生徒がこれ見よがしにざわつき出す。そりゃそうだ。俺は学園では優等生、こいつは不良。互いに相容れる事なんて普通ではない。


「っ!あー…南島君?ちょっとこっちに来てくれるかな?」

俺は、なるべく笑顔で南島 十夜の片腕を掴んで教室の外へ出る。もちろん心のなかでは一切笑ってないがな。

そして人気の少ない所にまで引っ張ってきて、俺は南島 十夜に詰め寄る。



「……お前はなにを考えてんだよ?」

ちょうど今の俺に効果音をつけるなら、マグマが沸き上がって来るようなゴゴゴと言った音が一番しっくり来るだろう。


「いやさ、せっかく仲良くなったんだし一緒に飯食おうかと思って…」


「一ミリもなかよくなってねぇよ!? それに学園ではいつも通りって言っただろうが!」


「まあまあ気にすんなって! 拳を交えた仲だろ?」

こいつはっ! 全く反省の色が見えない南島 十夜に俺はイラつく。そこへ、さらに厄介事の第二派が襲いかかる。


「お前たち何をしているんだ?」

声の方を見ると、西条 伶以子がいた。


「あ、伶以子ちゃん♪ちょうど良いや。雷斗と一緒に飯食うんだけど一緒に飯食おうぜ!!」


「いや、俺はまだ肯定してないぞ…」

そう言いつつ西条 伶以子の反応を横目で窺うと、何処と無くモジモジしていた。まさか……


「ま、まぁお前たちがそんなに言うなら私も…」


「別にそこまで言ってないんだが…」


「うっし!!じゃあ決まりな。屋上行こうぜ!」


「いやいや待て!!だから俺は行くとは…」

俺は強引に話を進めるこいつらに必死の抵抗を試みる。


「良いじゃねえか。行こうぜ!」


「そんなに行きてえならお前ら二人で飯食えよ!!」

そう言って自分の教室に戻ろうと(きびす)を返そうとする。するとふと裾を引っ張られた。



「ッ!だからっ!……」


「……一緒はダメ…ですか?」

文句の一つでも言ってやろうと、勢いよく振り返ると顔を赤らめながら仔犬のような潤んだ瞳で、上目遣いをしてくる西条 伶以子がいた。その顔は反則だろう…


「っう!? …あーもう分かった。屋上に行こう…」

俺はとうとう観念して、こいつらと一緒に昼飯を食べることになった。なんでこんな目に合うんだ……




 昼飯を持ってきてない俺は、購買でサンドイッチと飲み物を購入し二人と共に、なるべく人目につかないように屋上へ向かう。

が、そんな俺の努力も虚しく厄介事は続く。


「あれ?雷斗?」

なんとそこには優香里がいた。


「ゆ、優香里!?」

俺は意外な人物との遭遇に慌てふためく。

片や学校一のドヤンキーと噂されてる不良少女。片や西条程ではないが暴走族を追い返した実力を持つ不良少年。そんな二人に囲まれている学園の生徒会長。周りから見れば不良二人に絡まれているようにしか見えないだろう。あながち間違いではないが。


「ら、雷斗に何か用ですか?」

優香里も例に漏れず、そう見えたらしく震えながらも俺を庇おうと不良二人に話しかける。


「別に…ただ屋上に向かう途中なだけだ」

優香里に対し、ぶっきらぼうに返答する西条 伶以子。今のこいつは不良の『仮面』をつけているので威圧感がすごい。一般人にしてみればかなりなものだろう。


「お、屋上にいってなにするんですか?雷斗に変なことしたらゆ、許しませんよ!?」

しかし、優香里も引き下がることなく食らいつく。よく見れば少し涙目になってる。

これ以上言い合っても仕方無いので、俺が優香里を説得するために口を開いた。


「大丈夫だよ優香里。ほら、この前の暴走族たちの事件があっただろ?あれのお礼をしたいって俺から誘ったんだよ。」


「そうなの…?」

涙目のまま、不安そうに聞いてくる優香里。そんな優香里に優しく微笑みながら俺は続ける。


「ああ。だから優香里は心配しなくて良いんだよ。ありがとうな」


「……うん、分かった♪」

優香里に笑顔が戻ってくる。なんとかこの場は収まってくれたみたいだ。


「じゃあ気を付けてね?土曜日の約束忘れないでねー」

そう言いながら優香里は走っていってしまった。



ふぅ…と一息ついていると後ろから睨まれている気がした。

嫌な予感がして振り向くと、西条 伶以子が何やらすごい形相で俺を見ていた。 俺はなるべく刺激をしないように西条 伶以子に訊ねる。


「…えっと、何か…?」


「……って何ですか?」

消え入りそうな声で話す西条 伶以子。


「え?なんて?」


「…土曜日って何ですか!? 土曜日は私に勉強教えてくれるんじゃないんですか!?」

そう怒鳴られてようやく思い出す。そう言えばそんな約束をしたかもしれない。

俺がそんな顔をしていると西条 伶以子はさらに問い詰めてくる。


「何ですかその顔は!? もしかして忘れてたんですか!? ひどいです!!」


「そーだそーだ」


「ちゃんと約束したのに…あたしの方が先に約束したのに…」


「ひどいぞひどいぞー」


「オカマは黙ってろ!」


横やりを入れてくる南島 十夜を一喝し、西条 伶以子に対して弁明する。


「あー、すまなかった。お前との約束は守るから、だからそんなに怒るな」


「……ほんとですか?」


「ああ。だから土曜日はウチに来れば良いから」


「ほんとにほんとですか?」


「ああ。ほんとにほんとだ」


「…分かりました♪ちゃんと守ってくださいね!!」

そう言って満面の笑みを浮かべる西条 伶以子。どうやら俺はこういう顔に弱いらしい。


「じゃあ早く屋上行きましょ」

そう言って西条は一足先に屋上へと向かっていった。


「……モテる男は辛いな、雷斗」


「………ぶっ飛ばすぞカマ野郎」


「ひでぇ!?」




優香里には何て言うべきか。俺の土曜日はどうなってしまうのか。

俺はさらに頭を悩ませる事になってしまった。



ちょっと長めになった(;´д`)

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