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僕らの仮面生活  作者: あるあーる
第四章
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仮面の逃避

なんだか乗ってる内に更新!

 西条が自ら仮面を外してから、一週間が過ぎようとしていた。

 その間も俺達は昼飯は屋上で一緒に食べたり、他愛もない話で盛り上がったりと前と変わらない日常を送っていた。

 ただ少しだけ前と違うのは、西条が以前より積極的に俺達に関わろうとしている事と、優香里がどことなく元気が無いように見受けられる事だった。



「そう言えばもうすぐ文化祭だね~」


「もうそんな時期かー。体育祭も近いよね」


「アタシのクラスでは女装喫茶が有力ね! アタシの中で!」


「多分お前の中だけで止まるんだろうな…」

 坂上と優香里の雑談に割って入った南島をあしらいつつ、今年も忙しい時期に差し掛かってきたのだと項垂れる。

 この時期はこいつらの言うように、文化祭、そして体育祭と二つの祭りがほぼ連続して行われ、秋真っ只中になると修学旅行というイベントも控えている。

 生徒会長である俺は、このイベントがそつなくこなせるように尽力しなければならないのだ。


「東川さん東川さん!」


「ん?」

 まずは今年の文化祭のスローガンでも勝手に考えてようかと思っていると、西条が小声で耳打ちをしてきた。

 ふんわりと香る女子特有の匂いにドキリとする。


「文化祭と体育祭って同時期にやるんですか?」

 何を今更とも思ったが、よく考えれば西条は転校生だった。知らなくても当然か。


「あぁ。うちの学校ではな。さらに俺達二年生は、祭りの後には修学旅行も待ってる」


「わぁー。楽しそうですね!!」

 目を爛々と輝かせながら西条は言う。その純粋な笑顔に思わず俺は鼓動が高鳴ってしまう。


「ま、まあ…そのお陰で忙しいのは俺なんだがな!」


「ふふ」

 誤魔化すように軽口を叩く。これ以上西条を見てるとおかしくなりそうで、俺は明後日の方向を見てやり過ごす。

 ふと、その視界の端に優香里が映った。その表情はやはり元気が無く、生気のない目は誰かに対する敵意を含んでいるかに思えた。


「あ、優香里ちゃん! 文化祭ではどうするの? もしライヴやるなら放送部部長が協力しますよん!」


「あ、そうだね。ちょっと皆に聞いてみるから、また後で連絡する」


「ほいほーい」

 だが、次の瞬間にはいつもの優香里の表情に戻っていた。

 俺の気のせいか。あまり深く考えようとはせず、俺は俺で今日から生徒会に足繁く通わなければならないという現実に少し陰鬱な気持ちになりながら、放課後までの時間を消化していった。




「じゃあ今日はここまで! 日直!」

 ホームルームの終わりを告げるチャイムと共に、担任の掛け声で日直が挨拶をする。

 さて、今日から生徒会は文化祭の議題がメインになってくる。

 スローガン決め。参加クラスの出店希望。有志団体の募集。当日のタイムテーブルとその他諸々。

 決めなきゃならないことは山積みだ。最近は会長らしいこともあまりしてなかったので、しわ寄せが来たといった所だろうか。


「あ、雷斗~」


「どうした?」

 鞄に荷物をしまい、肩にかけた所で優香里に呼び止められる。


「はいこれ。有志団体の希望表」


「お、おお。早いな」


「早い方が雷斗も助かるでしょ? だから一番乗りの特権として、丁度良いタイムスケジュール組んでね!」


「分かった。任せとけ」

 優香里の厚意に感謝しつつ、俺はその場でざっと書類に目を通す。誤字脱字、未記入などはないかどうかを軽く確認していく。

 そこで俺は気になったことをそのまま口に出す。


「そう言えばライヴって言ってたな。ここに軽音部の出し物って書いてあるけど、優香里は助っ人か何かか?」


「何言ってんのよ。私軽音部だよ? 言ってなかったっけ?」


「え?」

 知らなかった。幼馴染みでもある優香里の事はある程度知ってるつもりだったが、所属してる部活動までは知らなかった。


「他にも、料理部にも入ってるし、後は漫研にも時々顔だしてるよ!」


「そうなのか?」

 しかも、一つだけじゃないと来たもんだ。そこまでは流石に把握できない。


「もう…。雷斗は私に興味なんてないのね…グスン」

 わざとらしく目を両手で隠して、鼻を鳴らす。


「ああ…。いや、そうじゃなくてだな! ほら今まで部活の話とかしなかったしだな!」

 もちろん優香里のはわざとだと分かっている。しかし、何となく知らなかったという罪悪感から俺は必死に言い訳をしようとしてしまう。


「なんてね。冗談だよん」


「いや、分かってたけどさ…」

 俺の反応に満足したのか、舌を出してウィンクをする優香里。その小悪魔っぽいイタズラな表情は、今まで何人が心を撃ち抜かれたであろうかと思えるほど可愛かった。


「じゃあ、私はこれから部室に行くから」


「あ、あぁ。帰るときは気を付けてな」


「うん! 雷斗も頑張ってね!」

 そう言って優香里は走り去っていく。

 そろそろ俺も生徒会室に向かうとしよう。



「では今日の議題ははここまでとします。明日実行委員の取り決めを行うので、この後各職員に通達してください。それから明日より本格的に有志団体とクラス出店希望を募集するので、有志の方で参加する人は書類の提出を期日までにするように。以上!」

 俺の言葉を皮切りに、役員の人間も各々帰り支度をする。

 気づけば時間は午後六時を半分過ぎたぐらいだった。これからはこれ以上遅くなるようなら、職員に必要書類を提出しなくてはならない。

 結局文化祭が近づくにつれて、クラスの方もその書類を提出したりするので毎年本番前は夜遅くになっても学生の大半は残ってるといった状態になる。

 それすらも生徒会が把握しなければならないので、自ずとストレスも貯まっていく。


 今日はもう既に、今まで一緒だった生徒会役員の他には学生はいない状態だ。

 さらに言えば一人で帰るのも久しい気がする。今までは何かと西条達が一緒だったから。


「久々に一人だし、暴れにいくかな」

 そう一人ごちながら俺は生徒会室に鍵をかけ、職員室を目指す。


「東川さん」

 急に声をかけられ俺はビックリして振り返る。するとそこには西条が笑顔で立っていた。


「西条…。どうした?」


「エヘヘ。一緒に帰ろうと思って待っちゃってました」

 そう言ってはにかみながら笑う西条。

 そんな西条に俺の鼓動は速まるばかりだ。


「ダメですか?」


「いや、分かった。一緒に帰ろう」


「はい!」


「……」


「どうしました?」


「…いや、行くか」

 不意にどこからか刺さる視線を感じた。だけども周りには誰の影も見えず、気のせいだと思い直し俺は歩き出す。



 玄関を出て、帰り道を西条と話ながら歩いていく。

 笑う西条。拗ねる西条。哀しむ西条。その一挙動ごとに俺の鼓動は反応する。

 多分俺の鼓動が速いのは、さっき急に声をかけられたからだ。それが今でも尾を引いてるだけだ。


 そんな誰に言うわけでもない言い訳を、頭で考えながら俺は歩く。

 見えるものを見えない振りをして、分かっているものに嘘をつく。

 そんな俺の態度が新たな事件を引き起こすのは、思えば当然だったのかもしれない。





ご拝読ありがとうございます♪


これからは修羅場に持ち込んでいきたいと思ってます。

ほんとはコメディ部分頑張りたいけど……。


お気に入り登録ありがとうございますm(__)m

感想などもお気軽にお聞かせいただければ嬉しいです。


では。

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