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僕らの仮面生活  作者: あるあーる
第四章
37/38

仮面の嫉妬

二ヶ月ぶりです(-_-;)


お待たせしました。忘れてるかたも新規のかたもよろしくお願いします。


どうぞ!

 夏休みが終わり、約一ヶ月ぶりの登校だ。クラスメイト達は各々夏休みが終わってしまったことに嘆いたり、はたまた思い出話に花を咲かせたりと教師が来るまでの間好き好きに過ごしている。

 まあ皆来年には受験を控えている身だ。所々勉学の話になる辺り、遊び呆けている人間は少ないことが分かる。

 そんな俺も、この夏休みは勉強に勤しんだ方だと思う。お陰で今すぐに抜き打ちテストをされても、満点をとる自信があるくらいだ。


「あれから西条さんとは会った?」


「いや…」

 いつの間にか側にいた優香里に話しかけられ、俺はあの日の事を思い出す。

 俺があの場でもっと他のやり方で不良たちを処理していれば、西条はあんな怪我をせずにすんだかもしれない。

 あの件があって以来、俺は喧嘩をあまりしなくなった。また身近な人間があんな目にあうのは、正直なところもう経験したくなかったから。


「まだ来てないから心配だな」

 ポツリと優香里が呟く。見渡せば確かに西条はまだ来ていなかった。教師がそろそろ来る時間帯だと言うのに。

 やはりあの怪我が原因だろうか。俺は再び自分の愚かさを呪い、自己嫌悪に陥る。

 俺がいることで西条達が傷つくんじゃないか。そう思ったことがあったが、今回のことで余計にそう感じるようになってしまった。

 俺の性格上、馴れ合うべきではないんじゃないか。いっそ距離をとって何もなかったことにしてしまうべきか。そんな考えが頭を支配していると、ガラッと音を立てて教室のドアが開いた。


 教師が来たかと皆が一斉にドアの方に振り返る。そこにいたのは西条伶以子だった。

 普段なら教師以外が教室に来た場合、その人物を一瞥しただけで皆はまた思い思いの雑談などに戻るだろう。

 しかし、今回ばかりは違った。どういうわけか西条の格好は、普通の女生徒のそれだったのだ。


 西条伶以子が学校では、不良という仮面をつけて生活している。冬服の場合でも、夏服の場合でも腕捲りをし、スカートは地面に引きずられそうなほど長く、いわゆるスケバンというような格好だ。

 何故そんな仮面をつけているかといえば、それは西条の過去に由来するものであり、それが西条の一つのアイデンティティーだからだ。


 無論、他の生徒はそんな事情など露知らず。西条伶以子とは、他の女生徒とは違う不良だと認識している。

 そんな西条伶以子が、優香里と同じような今風の女子高生の格好をして登校してきたのだ。

 皆が目を反らせなかったのは、驚きだけではなかったであろう。普段から不良の格好をしていたことによって、近寄りがたかった雰囲気も、今この時においては感じられなかった。

 俺達だけが知りえた西条伶以子の優しい素顔。その姿は男女問わず見惚れるものだった。


「おはようございます。東川さん。優香里さん」


「お、おはよう」


「もう怪我は大丈夫なの?」


「はい! もうすっかり元気です!」

 西条は教室に入るなり、俺達の方に寄ってきて挨拶を交わす。

 仮面をつけていた時は変に干渉することはなく、昼休みか放課後まではお互い話すとしても小声でこそこそと一言二言交わす程度だった。


「おまえ…何で……」


「よーし! お前ら席につけー!」

 一体どうして?そう続けようとした言葉は、時間より少し早い教師の到着によって阻まれた。

 西条の登場でざわついていた教室内も、ようやく落ち着きを取り戻していった。





「西条さんいきなりどうしたの?」


「そうだよ伶ちゃん! イメチェンなんて」

 時間は流れて昼休み。俺たちはいつものように屋上に集まって、昼食を食べていた。


「えへへ。何となく…ですかね?」

 優香里と坂上に詰め寄られた西条は、少しはにかみながら答えた。


「何となくって…。お前はそれで良いのかよ?」

 俺は堪らず西条に問い掛ける。西条にとってのあの仮面は、そう簡単に切り離せるものではないはずだ。

 それなのに今日、西条は自ら仮面を外して皆の前に姿を現してみせた。それはつまり……。


「何となくって言うか、東川さん達といると勇気が貰えるんです」


「は?」


「東川さん達といると、今まで怖かったものが怖くなくなってきたんです。多分、昔の私は臆病すぎたんだと思います」


「けど、何も仮面を外さなくたって良かったんじゃない?」


「それはそうなんですけど…。昔は仮面をつけることで、自分を変えようとしました。だから今度はありのままでも変われる気がしたんです」

 そう話す西条の表情はどこまでも穏やかで、瞳には強い意志が感じ取れた。


「うんうん! 分かるよ~! 伶ちゃんは私達に出会って良かったってことだね!」


「何それ素敵ーー!」


「ふふ。そんなところです」

 坂上と南島のとんちんかんな言葉に、西条は笑いながら返す。その場は明るい笑いに包まれていた。

 そう。俺ともう一人、優香里の二人を除いては。




 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。既に昼食を食べ終えて雑談に花を咲かせていた俺たちも、そろそろと皆立ち上がる。


「南島君~。次の授業は何だったかな~?」


「美術だったかしらね。芸術ーー!」


「う~~美術苦手なんだよ~。今度伶ちゃんモデルになってよ!」


「ええ!? 私がですか?」


「うん! 伶ちゃんがモデルならきっとピカソ顔負けの作品が描けるよ!」

 そんな雑談を繰り返しつつ、俺達は屋上を後にする。

 そんな中、俺と優香里は終始無言のまま階段を降りていた。



 西条は自分の過去と向き合って、とうとう仮面を自ら外した。それが意味することは人によって違ってくるかもしれないが、要は『変わった』のだ。

 西条は変わった。多分人と付き合いを重ねていく中で、人は何かしら変化していくものだろう。

 人間の臨機応変さがなせる業だ。その変化は人によって良い変化と、悪い変化の二種に別れる。今回の西条の変化は、これからの学園生活において良い変化になったと思う。


 もう不良とレッテルを貼られて、教師達に詰め寄られることは無いだろう。

 もう不良だからと言って、近寄りがたいと思っていた人間も減っていくだろう。

 結果を想像すれば、決して悪い変化ではないはずだ。そして、その西条の変化を喜んでやるべきなんだろう。

 今までの自分を変えることが出来たのだから。


 でも、俺は素直に西条の変化を受け入れることは出来ない。

 多分、どこかで俺は同じような境遇の人間が欲しかった。そしてそれが手に入ったことに喜んでいたんだ。

 自分で距離を取ろうなんて思いつつ、この空間が心地よかったんだ。そして、それに甘えていた。


 けれどもそれはたった一人、誰かが少しだけ変わるだけで、全体が揺らぐほどのものだった。

 そして、この変化は絶対的な力で俺達を否応なしに変えていくだろう。

 それが俺は怖くて、恨めしくて、でもそんな変化を受け入れた西条が羨ましかったんだと思う。


 そんな事を考えて、俺はあの穏やかな笑顔を遠くから見ることしか出来なかった。






はい。というわけで暗い(笑)


久しぶりに書いたのが暗い。まあでも物語が大きく動くこの章にはぴったりの出足かと。

…………大丈夫かな?


暇があるときに他の話もまたご覧ください♪

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