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僕らの仮面生活  作者: あるあーる
第三章
30/38

仮面の言い訳

遅くなりましたが更新です(*^^*)

 少しの間、気まずい雰囲気が流れていたが、暫くすると俺達はどちらからともなく普通に会話していた。優香里と他愛ない話をしながら、本屋で問題集などを物色すること約一時間。気になっていたものをある程度手にいれることが出来たので、俺は満足していた。


「そう言えばお腹すいたね」


「そうだな」

 時計を見れば、午後一時を回ったところだ。ちょうど昼飯時になる。


「優香里は何が食べたいんだ?」


「奢ってくれるの?!じゃあねぇ…」


「割り勘だぞ?」


「えー。ブーブー」

 そんなやり取りをしつつ、俺達は近くにあった喫茶店へと入る。この頃には、さっきの気まずさの名残(なごり)もなかった。

 二人で席につき、適当に注文を終えて一息つく。


「雷斗はキノコ派?たけのこ派?」


「どうしたいきなり?」


「いいから!」


「うーん……たけのこかな」


「そっか。一緒だね!」

 嬉しそうな顔を惜しげもなく見せてくる優香里。やはりモデルのスカウトが来たと言う噂があるだけあって、並みの高校生が放つよりも魅力的なオーラを発している。一挙動ごとに洗練された可愛さがある。それを狙ってではなく自然体で出来る優香里は、一般的に言えば間違いなくモテるのだろう。

 そんなことを考えていると、先程注文した品を上品なウェイターが持ってきた。長年勤めているのか、動きも滑らかに机の上に料理を並べていく。


「さあて!じゃあ食べよ!」


「あ、ああ…」

 早速と食べ物を口に運んでいく優香里。だが、俺は目の前の光景が信じられなかった。

 優香里が注文したものは全部で四種類。オムライスにパスタ、そして中々のボリュームがあるサラダにスープ。そこに飲み物のレモンティー。いくらなんでも多くないか…?


「ん? 雷斗は食べないの?」


「い、いや。頂きます」

 正直、優香里の食べ物を見てたら胸焼けがしてきた。俺は自分が頼んだハンバーガーを細々と食べながら胸焼けと戦っていた。


「いやー食べた食べた!」

 満足そうに笑顔を浮かべながら言い放つ優香里。


「あ、すいませーん! グランドパフェ一つ!」


「まだ食うの?!」


「あ、雷斗も欲しかった?」


「いえ、もう大丈夫です…」

 女性は意外によく食べるというのは本当だったんだな。恐ろしい子…。

 優香里はしばらくして運ばれてきたパフェを、みるみるうちに平らげてしまった。


 その後、優香里とのんびりと談笑をして、気付けば午後二時半を回っていた。俺達は会計を済ませ、店を後にする。


「さーてと。これからどうしよっか?」

 優香里が体を伸ばしながら訊ねてくる。


「そうだな…」

 今日の予定はもう済んでいるので、特にやることはない。俺が何をしようかと迷っていると、突然優香里が声をあげた。


「あれ? 西条さん?」

 優香里の視線の先へ目をやると、そこには西条がいた。

 薄いピンク色のワンピースに、七分丈のデニムシャツを羽織っている。髪の毛はいつものポニーテールではなく、下ろしており茶色のカチューシャをしていた。

 今日の優香里がメリハリのある私服とするなら、西条の私服はふわりとした雰囲気だった。


「あ、優香里さんと東川さん…?」


「ここで何してるの?」


「今日は本屋さんに立ち寄ったあと、ちょっとお散歩を兼ねて歩いてたんです。お二人はどうしたんですか?」


「あぁ、俺達は…」


「デートだよ!」


「は?」

 俺は今日の行動をありのまま西条へ伝えようとした。しかし、それを遮るようにすかさず優香里が口を挟んできた。


「デート……」

 優香里の言葉を繰り返し呟く西条。その顔は何処と無く元気がないように思えた。


「い、いや! 違うぞ? そんなんじゃなくて、ただ今日は一緒に問題集とかを買いに来てただけだぞ?」

 このときの俺は、なぜか必死に西条に対して弁明をしていた。思えばなぜこんなにも必死になっていたのかは、後になっても分からなかった。


「…………」

 俺の必死の弁明も虚しく、居心地の悪い沈黙が流れる。


「あ、ああ…。そうだ! 西条は今は時間あるよな?」


「はい…」


「な、なら三人で遊ばないか? ちょうど俺達も何しようか迷ってた所だし。ほら! 人数は多い方が良いだろ?! 優香里も良いよな?」


「私は別にそれでも良いけど…」


「優香里もああ言ってくれてるし、だから……。ダメか?」

 俺は一気に西条へ捲し立てる。最後の方は西条の表情が読めず、尻すぼみになってしまったが。

 恐る恐る西条からの返答を待つ。


「分かりました! ならご一緒させてもらいますね!」

 そう言って顔をあげる西条。その表情はいつも西条だった。


「そっか。良かった…」

 自分でも驚くほどに、西条の返答に安堵していた。


「……雷斗のバカ…」


「ん? 何か言ったか?」


「何でもない! それじゃ西条さん、カラオケ行こうよ! 雷斗の奢りで!」


「なんで!?」


「カラオケ…ですか? 私行ったこと無くて……」


「じゃあちょうど良いじゃん! レッツゴー!」

 優香里は西条の手を取り、先々に行ってしまう。一瞬だけ優香里の言った言葉が引っ掛かったが、次に俺の思考を支配したのは、他でもない自分の懐具合だった。


「……これで足りるか?」

 自分の財布を覗きながら、独り言を漏らす。なんだか少し寂しい気持ちになったのは何故だろうか。


 それでも二人を見ていると、『仕方ないな』なんて思って微笑んでいる自分がいた。

 自分の気持ちと向き合うのはまだまだ先になりそうだ。




如何でしたか?記念すべき第30話でした。


この次のお話辺りで、第三章は終わりになると思います。

その次からは二連続でサイドストーリーを挟むつもりです。


お気に入り登録、ご評価誠にありがとうございます!

これからもよろしくお願いいたします。

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