仮面の追憶
やっと更新です(-_-;)
夏休み初日に坂上に振り回されて以来、特に目立った出来事もないままに夏休みも半ばを迎えようとしていた。元々休日はゆっくり過ごすのが好きなのだが、あいつらと過ごしていると静かな休日が少し寂しかったりもする。
思えば、この二ヶ月とちょっとぐらいの間に随分と環境が変化したもんだ。
最初は西条に俺の本当の姿を知られ、続けざまに南島にも知られた。ある日に優香里にも知られ、坂上も俺や西条、南島と同じような仮面生活者だと分かった。
何の縁かは分からないが、優香里以外は全員が何かしらの仮面をつけて生活している。そして、何故かそいつらは俺の周りに集まってきたのだ。
特に考えたことは無かったが急激な環境の変化に、俺は何かしらの前触れなのではないかと思い始めていた。
「ま、考えてても仕方ねえわな」
自分に言い聞かせるようにそう吐き捨て、俺は外へ出掛ける準備を始めた。
せっかくの夏休みだ。一人の時間を有効活用しよう。
「本屋にでもいくかな」
来年には受験の追い込みが待っている。今から少しずつでも対策しておいて損はないだろう。
俺は服を着替え、玄関へと向かう。そして靴を履き、ドアを開けたときだった。
「ひゃ?!」
女性特有の小さい悲鳴が聞こえた。
「優香里?」
ドアを開けて姿を確認する。そこにはピッチリとしたティーシャツにミニスカートと言う、シンプルな私服姿の優香里が尻餅をついていた。
「何やってんだ?」
「あ、雷斗。お出掛け?」
「あぁ、ちょっと本屋にな」
「じゃあ私も付いてって良い?」
そう言って優香里は、体勢を整え小首を傾げながら可愛らしい笑顔で聞いてきた。
「別に構わんが…」
俺がそう言うと、「やった」と嬉しそうに小さくガッツポーズをする。
なんだか優香里とこうして話すのは久しぶりな気がする。そしてそれは優香里も感じていたのか、隣を歩いていた優香里が話し掛けてきた。
「何だか久し振りだね」
「そうだな」
「昔は毎日一緒だったよね。学校行くときも、遊びに行くときもさ」
「ああ」
小学校の入学式当日に遭遇して以来、親同士子供同士での付き合いだ。
「お風呂にも一緒に入ったよね」
「入ったっけか?」
「そうだよ!もう! 何なら今度一緒に入る?」
「……」
無意識に優香里の裸を想像してしまう。今となっては、すっかり女性の体つきだ。出るところは出て、締まるところは引き締まっている。
「雷斗のエッチ…」
「いや!?ち、違うぞ?」
顔に出ていたのだろうか、俺はだらしなく伸びてたかもしれない鼻の下を思わず手で隠す。
「っふふ。冗談に決まってるじゃん」
そう言って悪戯な笑みを浮かべる優香里。冗談とは分かっていたが、どうにも女性のこういう部分には慣れない。それとも親い(ちかし)間柄だからだろうか。
「あ、あそこの公園でもよく遊んだよね!」
優香里が指をさした方向を見る。そこには小さな公園があった。
「そうだな」
小学生の頃、俺と優香里。そしてもう一人の男子の三人でよく遊んでいた公園だ。あの頃は周りの遊具もとてつもなく巨大に見えていたが、今ではどれもが体の半分ぐらいしかない。当時、一番大きかったジャングルジムも今の自分の身長ぐらいだ。
「龍ちゃんどうしてるかな?」
「龍ちゃん?」
「よく三人で遊んでたでしょ?もう一人の男の子の名前だよ。龍斗君」
どうやらあの時の男の子は、龍斗と言う名前だったらしい。俺は名前を覚えてなかったが。優香里に言われてそういえばと徐々に記憶が蘇っていく。
雷斗と龍斗で二人して『サンダードラゴン』なんて言ってたような気がする。龍斗は当時比較的に大人しいやつで、よくクラスの奴らに苛められてたらしい。その時に俺が自己防衛の為に、ケンカの手法を教えていたのだ。そして、俺と優香里が中学に上がる前ぐらいに県外に引っ越していった。
「まあ流石に私も名字までは覚えてないんだけどね~」
優香里は自分の頭を手で軽く小突きながら言った。
「そうか…」
優香里の言葉に、呟くように返事をする。
俺は改めて夏休み初日に見た夢を思い出そうとする。俺はあの時、龍斗と何を『約束』したのだろう。
俺の考えを遮るように、いつの間にか目的地である本屋に到着していた。優香里に促され、建物のなかに入る。
「そう言えば雷斗って、大学はどうするの?」
「あぁ。国立の六方大学にいこうと思ってる」
特に目標が明確にある訳じゃない。だが、そこの大学には色んな学部に加え、研究設備などは普通の大学より良いものが揃っている。将来なんてどうしたいのかは自分でもよく分かってない。それに今は、この何でもないような毎日が心地よかったりする。
「雷斗の成績なら余裕かもね」
優香里は微笑みながら言う。かくいう優香里も、成績なら学年では上位に並ぶ実力者だ。
優香里はどうするんだろう?俺は思ったことをそのまま優香里に聞いてみる。
「優香里はどうするんだ?」
「んー。私は雷斗と一緒が良いんだけどな~」
口元に指をあて、少し考えた様子で呟く。
「でも、雷斗の行く大学は保育の資格取得支援やってないんだよね」
どうやら優香里は、俺なんかよりも将来を見据えているらしい。俺はそんな優香里を見て少し自分がちっぽけな存在に思えてきた。
「そうか。スゴいな、優香里は」
「ほんとはまだ迷ってるんだ。私は今の生活が楽しいからさ」
そう言いながら笑う優香里は、どこか寂しそうだった。
だが今は、優香里も俺と似たような事を考えていたことに驚き、そして安堵していた。
「出来れば今のまま、時間が止まってくれれば良いのにね…」
無い物ねだりだ。いくら成人していないとはいえ、それが不可能な事ぐらいは分かる。当の優香里ですら、自分の発言は永遠に叶うことのない願いだと分かっているのだ。
「そうだな…」
でも俺は、肯定することしか出来なかった。
「でも、『今』を壊しちゃうのは私かもしれない」
優香里の独り言のような言葉に、俺は何も言わなかった。
やがて来る『終わり』に、それでも今だけは目を背けていたかったから。
如何でしたか?
少し短めですが、何とか更新できました。
物語としては、あまり動いてませんが(笑)
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