西条伶以子の仮面生活
記念すべき第15話更新です(*^^*)
タイトル通り、西条伶以子視点で進みます。
これはまだ彼と彼の仮面に出会う前の話。
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五月の終わりごろ。春のうららかさも落ち着き、しかしながら人々が陽気にあてられほんわりとした雰囲気で過ごすこの季節に私はここ、紫鳳学園に転校してきた。
前の学校では、普通に過ごしていたのに周りの男子学生がしつこく付きまとってきた。そのお陰で、他の女子生徒から疎まれ同姓の友達は出来そうになかった。
唯一友達と呼べていた娘も、しばらくして私のもとから離れていってしまった。私はただ普通に友達と過ごしていたかっただけなのに…。
だから私は今度のここの学校では、『仮面』をつけて過ごすと決めたのだ。
髪を束ね、スカートも最近の女子高生のそれより長くし、ブレザーの裾をまくり、言葉遣いも男の子みたいにした。転校してきた初日の挨拶も簡潔に「よろしく」の一言で済ませた。
するとどうだろう。周りからは一斉に『不良』というレッテルを貼られ、誰も近づかなくなった。あれ?ここまでとは予想してなかったです。私的には『強い女性』というイメージを持ってほしかったのに。ぐすん……。
でも、また前と同じになるよりかはマシかな…。そう自分に言い聞かせて私は新たに『仮面生活』を始めた。
「ではホームルームを終わる。あ、東川。転校生の西条に色々と学園の事を教えてやってくれ。以上」
学校の授業が終わり、ホームルームが終わった。先生の言葉により東川という人物が私に学園案内をしてくれる事になった。
聞くところによると、彼は生徒会長を務めているそうだ。さぞかし優秀な人物なのだろう。でも、男性はやっぱりちょっと怖い。……ダメダメ!そんな気持ちじゃまた前と同じになっちゃう。強気な態度でいくんだ!
そんな事を考えていると、先生に指名された本人が私のそばにやって来る。
「どうも、東川雷斗です。西条さんだっけ?さっそく学園を案内するね」
彼は物腰の柔らかい言い方に、爽やかな笑顔で挨拶をしてくる。舐められぬようにここぞとばかりに私は彼を睨み付ける。
「? じゃあ行こうか」
「あ、ああ…」
あれ?この人全然動じない。自慢じゃないけど私はこれでも目付きは鋭い方で、睨めばここの生徒の大半の人は目をそらしたりとかしてたのに…。とにかく次です!次こそは!
「…んで、ここが別館。こっちには特に何もなくて、まあ僕ら生徒会が使ってる生徒会室ぐらいかな」
「そうか…」
ある程度学園の案内を終え、そろそろ解散という雰囲気になった。ここでまた私は彼を威嚇するため、鋭い目付きで悪態をつく。
「にしてもお前が生徒会長とはな。そんななよっちいナリじゃこの学園もたかが知れてるな」
どうですか!?これならこの人も少しは恐れたりするでしょう!
「……ふぅ。じゃあ西条さん。他にも分からないことがあったら何でも聞いてね?」
溜め息つかれました…。なんでしょう。この人全然なんのリアクションもありません。彼はそれだけ言うと、スタスタと教室に戻ろうとする。このままじゃいけません!せめて少しでも、私にたいして畏怖の念を感じてもらわなければっ。
そう思い私は挑発じみた呼びかけをする。
「おい!お前っ!」
「…チッ。……どうかしたかい?西条さん」
舌打ち!?今この人舌打ちしましたよ!?はわわ…、どうしましょう。この人怖いです。
「い、いや…何でもない」
「そう?じゃあ僕は帰るね?」
彼はそう言って行ってしまいました。結局彼に対しても、『強い女性』というイメージは植え付けられぬまま転校初日を終えたのだった。
一週間後。
あれから彼や、彼以外の男子生徒から特に絡まれることもなく過ごしていた。その分、女子生徒からも何もお声がかからないですけど…。
でも、これで良いのかも知れない。これならもう前みたいに裏切られて傷付くこともない。
『西条さんて、なんかムカつくよね~』
『男に色目ばっか使ってる女でしょ?』
『あいつってちょー淫乱らしいよ』
『ねえ西条さん、俺と付き合わない?』
『んだよ、せっかくヤれると思ったのによぉ』
『ごめんね…伶以子。さよなら』
ーーッ!!いけない。授業中なのに寝ちゃってた。
どうやら居眠りをしていたみたいだ。嫌なことを思い出した。冷や汗が頬を伝う。
「西条!授業中に居眠りとは…。後で職員室に来なさい。では授業終わり!」
授業中に居眠りをしてしまったせいで先生に呼び出しをくらう。『不良』というレッテルも影響しているようで、あまり先生たちに良いイメージを抱かれていないようだ。まあ、当然と言えば当然かも知れない。
そして昼休み。私は職員室にいた。根も葉もない噂などで説教を受け、正直うんざりしていた。やっと終わったときは昼休みが半分くらい過ぎてしまっていた。
溜め息をつきつつ、私は職員室をあとにする。するとちょうどあの生徒会長の彼が、一人の女子生徒と一緒に歩いてくるのが見えた。
誰だろう。すごく可愛い女の子だな。彼女かな。そんな事を思いボーッとしていると、二人が目の前にやって来た。あ、そうか。廊下のど真ん中にいたら、邪魔だよね。
その時の私は色々とムシャクシャしており、半ば八つ当たり気味に彼らに対して「どけよ」と言ってしまった。あ、でもちょっと良い感じに言えたかもしれないです。
しかし、彼に前と同様、冷静な感じで「廊下は皆のものだから譲り合うべきだよ」と言われてしまった。
はい…。至極正論です…。私は、そのまま渋々二人を避けて教室に戻りました。私カッコ悪いです。
「ハァ…」
私は教室に戻る最中、もう一度深い溜め息をつく。なかなかうまくいかない事に対しての苛立ちやジレンマを感じてるが故にだ。
それでも、前の学校のようにならなければそれで良いと思う。それほどまでに前の学校の出来事は、私にとってのトラウマなのだ。
だから、私はこの『仮面生活』を続けていくんだ。そう心に強く誓った。
この時は、まさか彼も仮面をつけていたなんて思いもしなかったのだけれども。
如何でしたか? と言うわけでメインヒロイン、西条伶以子の物語でした。
もう一パート続くと思われます(-_-;)
何でしょうね。最近文章が回りくどいのか、長引いてしまいますね。
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