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僕らの仮面生活  作者: あるあーる
第一章
13/38

仮面の旅~衝撃~

遅くなって大変申し訳ありません!!

第13話更新です(*^^*)

 昼間は気付かなかったが、暗闇が侵食する山は思ったよりも険しい道なりで、上手く走れず足を取られそうになってしまう。途方に暮れてしまいそうな自分を叱責するように、俺は暗闇に向かって叫ぶ。


「坂上ーーーー!!」


「キャー!?」

 俺が叫ぶと何処からともなく女性の悲鳴が聞こえた。悲鳴の聞こえた方向へ駆け出す。


「坂上!」

 しばらくすると、道の隅にうずくまる人影を発見した。俺は坂上だと思い近づく。


「あ、雷斗君…」


「大丈夫か!?」

 うずくまっていた人物は、案の定坂上だった。だが坂上は足を抑えて、顔を苦痛に歪めていた。


「ちょっと足を挫いちゃって…」


「何やってんだよ…」


「雷斗君の大声にビックリしたんだよ?! つまり雷斗君が悪い!」


「あぁ……その、すまん」

 そう言いながら、軽口を叩いてくる坂上に少し安堵する。どうやら深刻な怪我ではないようだ。


「ひとまず戻るか」

 俺は怪我をしている坂上に向かって言う。


「え、でも南島君が…」


「大丈夫だ。俺が探しとくから。それにお前は怪我してるだろう?」


「でも!!」

 坂上の発した大声に俺は一瞬たじろいてしまう。このときの鬼気迫るといった坂上の態度に俺は違和感を覚えた。いくら自分のしたことで、南島がいなくなってしまったとは言え反応が過敏すぎるのではないか。


 それに今、坂上自身は怪我をしていて俺の言うことも理解は出来るはずだ。俺はただならぬ雰囲気の坂上に対して、問いかけてみる。


「……お前は何でそんなに必死になるんだ?」

 俺の問いかけに、坂上はフッと寂しそうな顔をしながら口を開いた。



「………雷斗君は独りがどれだけ辛いか分かる?」

 坂上が言った言葉に俺は息をのむ。


「私は、独りがどれだけ辛いか知ってるよ…。ずっと独りだったから」

 坂上は、黙っている俺に捲し立てるように続ける。自分は今まで如何に孤独だったかを。


 坂上 一。坂上家の一人娘として生まれ、世間一般からは令嬢として認識され、育てられてきた。小さな頃から、お嬢様としての礼儀や作法を叩き込まれ、家族の食事でも、話されることは他の金持ちとの付き合い方ばかり。学校も送り迎えがあるので、友人との帰り道なども経験したことがなかった。


 さらに友人と思っていた人間達は、陰では「お金持ちだったから近づいた」などと言っていた所を聞いてしまったらしい。両親との付き合いも、同級生のそれと同じなんてことはなく、一見恵まれているように見えた一人の少女はずっと『独り』だったのだ。


「だから私は、バカみたいに笑うことにしたんだよ。周りに合わせるようにテンションの高い子を演じていれば、誰も令嬢とは思わないし、見ないでしょ?」

 坂上は、自虐的な笑みを浮かべながら言った。



「だから、南島君を追いかけるのは南島君の為じゃない。私自身の為なんだよ…」

 そうすることで自分は誰に対しても、分け隔てのない明るい人、優しい女の子として認識されることが出来る。それが独りにならないための方法だった。



 幼少期に独りの辛さを知ったお嬢様は、バカみたいなテンションで、みんなのムードメーカーという『仮面』をつけた仮面生活者だったのだ。



 俺も仮面生活者の一人だ。こいつが辛い経験を経て、仮面をつけるようになったと聞いても否定なんて出来ないし、するつもりもない。しかし、一つだけ言えることがある。俺はようやく口を開いた。


「……別にお前がどう思っているかは知らんが、少なくとも今日お前と知り合ったやつらは、お前をそんな風には見てないと思うぞ?」


「え?」

 坂上は不意をつかれたという表情で聞き返してくる。俺は坂上の反応を見て、さらに続ける。


「優香里はああいうキャラだから、心底お前を友人だと思っているだろうし、西条は無愛想に見えたかもしれないが仲良くなれて良かったと思ってる。南島は……まああいつのことだ。何も考えてないだろう。だから、お前のことも一人の女の子としてしか見てないんじゃないか?」

 西条と南島が同じ仮面生活者とはさすがに言わなかったが、俺は坂上に対して思ったことを伝えた。


「……それにまあ俺も、お前のことはまだよく知らんが今日一日見てきたお前が、俺にとっての坂上 一だと思ってる」

 我ながら少し恥ずかしい言葉だと思う。しかし、こいつに限らず女性の悲しむ顔を俺はあまり見ていたくない。これだけの言葉で、どれほど効果があるかは分からないが今こいつに言えることを俺は伝えることができたと思う。


 少し間をおいて恐る恐る坂上の方を確認してみる。すると、坂上は笑っていた。いや、正確には笑いを堪えていた。


「……俺はなにかおかしな事を言ったか?」


「フッ…フフフ……いやいや♪ うん!そうか、そうだね!!」

 それだけ言うと、坂上は満面の笑みで手を差しのべてきた。


「は?」


「だーかーら! おんぶだよ、お・ん・ぶ! 私をみんなのとこまで連れてって♪」

 どうやら坂上は、皆のところまで戻るのを承諾してくれたようだ。しかし、背負えと言うのはいささか怠慢過ぎるのではないか?


 少しばかり呆れたが、今回はまあ仕方ないか。俺は渋りながらも、坂上に背を貸す。すると、坂上は勢いよくおぶさってきた。


 えへへと笑いながら、俺の背中にしっかりとしがみつく。顔は見えないが、きっと今の坂上は少女のように無邪気な微笑みを浮かべていると思う。


 同じ仮面生活者だからこそ、分かり合える事もきっとある。坂上の辛さがどれだけ軽減されたかは定かではないが、少しでも力になれてれば良いと、俺はちょっとだけ思っていた。ちょっとだけな。



少し半端ですが、今回はここまで。

思ったよりここのパートが長いですね(-_-;)(笑)


ご感想や評価、こころよりお待ちしております♪

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