仮面の日常
短いですが第10話更新です~(*^^*)
優香里に俺達の秘密を知られてから一週間。優香里の昼飯時はみんなで集まろうという提案により、俺達はほぼ毎日屋上で昼飯を食べて雑談をするという関係になっていた。まあほぼ優香里とオカマが喋ってるだけなんだが。
そんな中ふと西条 伶以子が呟く。
「もうすぐ夏ですね~」
「そうだな」
俺は心底どうでも良いという感じで同意する。なんとなく西条がジト目で睨んでいる気がするが気にしないぞ。
しかし、そんな西条の発言に食い付いたのは優香里だった。
「西条さんって水着とかどうしてるの?」
「へ?」
「だから、水着! やっぱり毎年買ったりしてるの?」
「あ、私はですね…」
西条はそのまま優香里とガールズトークに入ってしまった。なぜこうも女子というやつは、やれ水着だのやれ服だのと買い物話が好きなのか。俺には全く理解できない。
「なら、アタシとボーイズトークでもするぅ?」
俺の心情を勝手に読んだオカマ(南島 十夜)が話しかけてくる。
「いや、いい」
「つれないーー!」
一人叫ぶオカマと、ガールズトークに花を咲かせる乙女たちを横目に俺は昼飯のサンドイッチを頬張る。そんなとき陽気な音楽が流れ始めた。どうやらお昼の放送が始まったらしい。
『グッド・イブニ~ング! エヴリワン!! お昼の放送のお時間でぇ~す!』
テンション高っ。陽気な音楽と相まってさらに陽気な少女の声が聞こえてくる。今まではこんなにもテンションの高い声が聞こえてくる事は無かったので、俺は思わずサンドイッチを口に持っていくのを止めてしまう。そんなことはお構い無しに放送の高いテンションは続く。
『さてさて、本日のハッピーな曲をお届けする前にはじめちゃんの雑談を聞いちゃいな~! この前買い物をしに商店街に行こうとしたらね…』
俺が半ば唖然としつつ放送に聞き入っていると、ガールズトークを終えたのか優香里が話してきた。
「面白いよね、この放送」
そう言って同意を求めながら微笑んでくる優香里。俺が何が何だか分からないという表情を浮かべると
「あ、そう言えば雷斗は知らないか。あのね、放送部の部長で坂上 一ちゃんっていう女の子なんだけど…」
坂上 一。聞くところによると、家庭の事情で五月ぐらいから休学をしており、一昨日ようやく復学してきたようだ。放送部の部長で、俺達と同じ学年の女子。ちなみにこの坂上 一の放送はいつもノリノリなテンションで面白いと、優香里を含む周りの生徒からも評判が良いらしい。俺が今まで知らなかったのは、ちょうど坂上が放送を行っているときは生徒会室にいたからだそうだ。
忘れられているかも知れないが、俺はこの学園の生徒会長だ。生徒会室で忙しく書類の整理だの何だのをしているときもある。生徒会室では放送を切っているので、こんな放送があることは知らなかったのも無理はないかもしれない。確かに四月は生徒会室にこもりがちだったしな。
『さぁてさて~!! お待ちかねミュージックタイムだ! 今回はこの季節に持ってこいのサマーソングをかけちゃうよ~! そんじゃヒィヤウィゴー!』
そんな掛け声と共に、どっかのアーティストのサマーソングが校内に響き渡る。こういう学生が自ら学園を盛り上げようとする活動には、教師陣が積極的に推薦してくれる学園だ。かくいう俺もこういう生徒の一生懸命さというのは嫌いじゃない。
何かに熱くなれるというのは、いいことだと思う。例えそれが人から理解されなくてもだ。端からみれば俺の本当の性格だって、あまり理解できないだろう。俺はケンカが好きでしているのだが、一般論からすれば暴力と一括りにして否定的な言葉が飛び交うのが普通だろう。だが俺は人を傷付けたいわけではない。ケンカを通じてわかりあいたいというか、認め合いたいのだ。そいつを、そして俺を。ケンカはその為の尺度といっていいだろう。分かってくれなくても良い。ただ、それが俺のやり方なんだ。
そんな考え事をしていると、優香里が何か思い付いたように声をあげる。
「そうだ! 海だ! 海に行かない!?」
きっと先程の放送でかかっていたサマーソングにあてられたのだろう。優香里はやたらと海に行きたいと言い出した。他の二人も存外嫌では無さそうである。
「なんでまた急に?」
俺は優香里に問いかけた。
「いやね、さっきの放送してたはじめちゃんいるでしょ? その子と仲が良いんだけと、なんと別荘持ってるんだって~!!」
「スゴいわねその子」
南島が相づちをうつ。
「でしょ? それでそこにはプライベートビーチもあるんだって!! あたし今度一緒にいこうって誘われてたんだけど、みんなも行こうよ!」
「でも、私たちもお邪魔しても大丈夫なのでしょうか?」
西条が不安そうに訊ねる。そりゃそうだ。俺はともかく、南島や西条は不良という『仮面』を付けている。
「大丈夫! 私の友達なんだから。それにバレるような事は言わないし! ね?」
優香里の押しに負けたのか、西条はそれならという感じで承諾した。南島に至っては早速ビーチでの妄想にふけっているように見える。
「おい。ほんとに良いのか? 『仮面』がバレたら困るんだろ?」
俺は西条と南島に訊ねる。すると優香里が俺に対して熱弁してくる。
「大丈夫! はじめちゃんなら私も信頼してるし、それに私が上手く説明するから!!」
「いや、でもな…」
俺が渋っていると、今度は南島が俺に熱弁してきた。
「大丈夫だって!! それに雷斗は見なくないのか? 青い空、白い砂浜、そしてそこの広大な海で戯れる水着の美少女たちを!」
「水着…」
南島に言われて俺は考える。水着ということはだ、あの西条も水着だということ。控えめではあるが、あのスレンダーな体つきが露になると言うことだ。
「ま、まあそこまでお前らが言うなら…」
「やったね!」
俺の反応をみて、全員小さくガッツポーズをする。西条も心なしか嬉しそうに微笑んでいる。すると、そんな俺の視線に気づいたのか俺の方を振り向きたずねてきた。
「どうしたんですか? 東川さん」
「へ? あ、いや何でもないぞ」
「? 変な東川さん。クスクス」
西条の水着姿が見たいとかじゃないからな!断じて違うからな!あわよくば、ラッキースケベとか期待してるわけじゃないからな!
「雷斗。その気持ちはよくわかるぞ」
「だからお前は勝手に人の心を読むんじゃねぇ! カマ野郎が!」
「ひどすぎーー!!」
こうして俺達は別荘にいく事になった。まさか別荘でも新たな事件に巻き込まれるとも知らずに。
ってなわけでまだ名前だけですが、新キャラ登場です!
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