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交流試合 沖田宗次郎3

竹刀を中段に構えた沖田は、

「沖田さん、がんばれ!」との、道場生たちからの声に声に苦笑いを浮かべる。

両足に力を込めてみると、ガクガク震え言う事を聞かない足に、

活を入れるべく睨みをきかせ、

「動かぬなら、この場で切り捨ててしまうぞ!」

自らの両足にたいして罵倒した。


一方の永倉はというと、下段に構えて次の攻撃に備えていた。

はじめ!の声がかかるなり、この勝機を逃すべく事無く飛びかかるというよりかは

襲いかかったといった方が正しいだろう。


その攻撃にたしてい沖田は反応する。

しかし下半身が自分の思ったように動かない事をしると、

ただ歯を食いしばるしか出来なかった。


後の事はm永倉が間合いに飛び込んで来てから考える。

それ以上何も考えられないと思ったし、

他の手は残ってもいなかったと思わざる得なかった。


相手の竹刀より先に打たなければ負ける。

当たり前の事なのだが、これが頭にこびり付いて取れない。


相手より先に打たなければ負ける。

永倉は沖田の間合いに入る。だが、鍔迫り合いを行うばかりで手を出そうとしない。

打たなければ負ける。そう思ったのか、我慢の限界がきたのか、沖田は永倉との鍔迫り合いを制す。


目にも止まらぬ動きにより右小手目掛けて打ち込む。

すると待ってました!と、永倉が攻撃にうつす。

沖田の攻撃を下から跳ね上げる。後は、面を目掛けて切り下ろせば終わると言う場面で、

珍事が起こる。永倉に跳ね上げられた勢いにより、

沖田の体はうつ伏せのまま倒れ込んだのだ。


「待て!」と声が掛かると、永倉は仕留めきれなかった悔しさから、

「くそ!」と吠えた。


倒れ込み動こうとしない沖田に対して、斉藤弥九郎が声を掛ける。

「早く立ちあがり、そして開始線へと戻りなさい」と急かしたが、

中々起きようとしないのか、起きられないのかは分からないが、

「早くしないと、負けにするぞ!」の一言により、

「はい!」と、答えてはいるが、沖田の両腕はプルプルと振るえている。

床を押さえつけながら、立ち上がろうとするが、思うように力が入らないのだろうか、

中々立ち上がれそうにない。

その姿を目にした斉藤弥九郎は、止めるべきか、悩んでいた。


すると、永倉が、沖田に手を貸すと立ち上がせるという事件が起こる。


その行為にたいして、異論を唱えるものもいたが、

永倉の睨みにより、一時は静まりかえったが、

「そこまでして倒したいのか・・・」という声が道場内に響き渡ると、

永倉は何とも言えない笑みを浮かべる。

しかし試衛館の連中は、黙って宗次郎を見つめる。

一方の練兵館の連中は固唾を飲んで見守っている。


沖田は、体を支えてくれている永倉を見ていると、

「どうだ、やれるか?」と永倉は問うと、小さく頷いた沖田の口から、

「かたじけない・・・もう大丈夫です。ありがとうございました」

その声を聞いて安心したのか、沖田の側から離れる永倉、

そして、なんとか両足で立っている感じの沖田は、足を引きずりながら開始線へと戻る姿はとても痛々しく見え、

そんな後ろ姿を見た永倉は思う。

「立派だな・・・立派な剣士だ。手を抜いて倒すべきで相手ではない」

と心に誓う。



やっとの思いで立ち位置へ戻ると沖田は、一旦は中段に構えたてはいたが、

何をしているのか、面に竹刀でポンポンと打っていた。

そして、永倉に浅く一礼を行うと、次は永倉を睨みつけていた。


「そうだな、私は剣士にたいして、いらぬ事をしたのかも知れないな。

眠っていた鬼を目覚めさせてしまったらしい」


「はじめ!」の声がかかると、先ほどまでの目にも止まらず動きは何処へやら、

ゆっくりと近づいていく両者。

少しずつだか間合いが縮まっていく。

一歩、一歩確かめるように近づいていく両者にたいして

惜しみない声援が送られている。


両者の間合いに入るが、睨み合ったまま動こうとしない両者だったが、

永倉の竹刀が沖田の面を襲うが、辛うじて攻撃をかわすが沖田の体はよろめいた。

この勝機を逃す馬鹿はいないだろう。続けざま小手を狙う。

だが、またしても辛うじて攻撃をかわす。そしてよろめく。


次は外すまいと右胴に叩き付けるように竹刀が襲うと、かわせないと思った沖田は、

竹刀で受けながそうと試みるが、踏ん張りのきかない足の事を忘れており、

体ごと左へと飛ばされそうになる。

やっとの事で、なんとか踏みとどまる事が出来た。

そして飛びかけた意識に活を入れるため吠えた。

「きぇぇぇ!」


だが、永倉の竹刀は止まる事を知らないようで、

次から次へ、ありとあらゆる攻撃を繰り出していく。

そして沖田は、左からの攻撃にたいしては、辛うじて体を入れ替えて交わしていたが、

やはり足がもつれる。永倉も同じ過ちを繰り返すほど馬鹿では無いのだ。

ここぞ!という場面で、渾身の一撃を加えようと襲いかかる。


そして永倉は異様の光景を目の当たりにする。

沖田の笑っていたのだ。


こんなにも辛いなら、負けた方が良いと思ったのかも知れない。

そう思えたのも一瞬の出来事らしく、次第に沖田の表情から笑みが消えていた。


そして沖田は思う。

「私は何を考えていたのだろう・・・」

そして、一瞬意識が飛んでいたことに気づく。それにくわえて、右肩に強烈な痛みを感じる。

だから怒りがこみ上げてきていた。それは自分にたいしての怒りと、

もちろん永倉にたいしての怒りだ。その二つの怒りにより自分の持っている許容範囲を突破した。


永倉は鬼の形相をした沖田宗次郎を見る。両者とも鬼の形相で立ち会っている。

「ぱ〜ん!」

その音にたいして道場は静まりかえるが、

「一本!」斉藤弥九郎の声が道場内に活気をもたらせた。

勝ったのは沖田だったが、自分では勝ったと思ってはいないのか首を傾げていたが、

どこか晴れ晴れとした表情を浮かべている。


一方の永倉は悔しそうに見えたが、やっぱりどこか楽しそうな表情を浮かべていりる。

二人の攻防に道場内から、割れんばかりの拍手と、

両剣士を讃える言葉が飛び交っていた。

沖田は面を取りながら、そんな歓声を聞きながら気を失っていった。


どれくらい立っていたのだろう・・・。

私の横には、なぜか源さんが心配そうに、私を眺めている。

「えっと、源さんの試合はまだですか?」

「す、すまん宗次郎・・・わしは、わしは負けてしもうた・・・」

一瞬、噓かと思ってしまった。あの源さんが負けるなんて信じられない。

そう思っていたから、練兵館の嬉しそうな声が聞こえてくることにより噓では無い事を知る。


源さんを打ちのめした相手とは、後の奇兵隊を率いた高杉晋作その人であった。

「宗次郎よ、わしも頑張ったんだぞ。1対1まで行ったんじゃが、最後の最後で、

負けちまったよ。いやぁ、世の中は広いぞ宗次郎よ・・・わしも頑張らねばな。いやぁ、敵ながらが天晴な腕前じゃったぞ」

嬉しそうな声で喋り続ける源さんの隣には、試合が終わったのだろう面を外している山南さんの姿に尋ねる。

「あれ?山南さんも試合終わったのですか?」

すると山南は、少し残念そうで、拍子抜けしたようすで、

「なんだい、宗次郎。試合は見ていなかったのかい?

まぁ、何とか勝つ事が出来たが、やはり紙一重の勝負だったよ。

まぁ後は、歳さんと勇みさんだから、大丈夫だろう」


山南は、自分の目的を果たしたからか表情は明るく、

次の副将戦を、今か、今かと待ちわびている様子なのが傍目からでも感じとる事が出来た。


つづく。


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