7 さくっと本題に入ります
宇宙人って見たことある?
いや、本物じゃなくて私が言っているのは、宇宙人の写真のこと。
ほらモノクロ写真のやつ。
見た事ないかな?オカルト番組とかでたまに映像が流れると思うんだけど。
コートを着た男二人組の間に捕えられた某宇宙人が、両手をその男達に持ちあげられている構図のやつ。
今の私の現状は、なんとなくそれを思い出してしまう。
「あのさ~、さっきまで客人扱いだったよね?それに自分で言うのもなんですけど、あんた達に比べるとかなりひ弱なんだっうの。どうせだったら、夢のあるお姫様だっこで運ぶとかしてくれない?あんた達筋肉ありまくりだから、私なんて軽々でしょ?」
だってこれじゃあまるで、オカルト番組で良く見る某宇宙人みたいだ。
私はガシッと左右の両手をマッスル騎士二人に拘束され、引きずられるように長い廊下を無理やり歩かされていた。
その場に留まるように両足に力を入れているが、無駄な抵抗で終わっている。
私がそんな風にしながら過ぎていく城の廊下には、絵画が壁に飾られたり廊下の脇にはやたら高そうな壺が飾られていた。
こういうところは、どうせならドレス姿で優雅に歩きたい。
今、Tシャツにデニムというかなりラフな格好なんですけど。
……まぁ、魔界の城でも普段着だけどさ。
「すみません。お姫様だっこはちょっと。俺、彼女いるんで」
「すみません。俺は好きな子にしかしたくないので」
お前ら、仕事って割り切れよ。
なんでもそうだけど、仕事っていうのはやりたい事だけじゃないだろうが。
「っていうか、あんたら以外と足早いんだね。そんな甲冑着ても走れるなんてさ」
「はい。一応騎士なのでそれなりに体力はありますから。しかし、美咲様は足がお速いんですね~。全体的に平凡オーラ漂わせているのに」
「平凡オーラとはなんだ。平凡オーラとは。こう見えても、元陸上部なのよ」
あくまで元。……なので、こうしてあっさり捕まった。
まぁ、中学の頃からじゃかなり現役退いているからしょうがないけど。
それに最近全然走ってないし。
「ねぇ。逃がしてくれない?」
「無理です」
「なんでよ。大体さ、金も権力も兵もある王子達がわざわざ私に頼みごとをするなんて、絶対に面倒で厄介な物に決まっているじゃん。それに話だけでも聞いてみようものなら、絶対に引き受けなきゃいけない状況に持っていかれるに決まってるし。私、異世界召喚に良くあるオプション的なの持ってないから、ラスボス級の敵を倒せとかそういう厄介ごとはごめんだよ?」
逆ハー中で浮かれている頭なら引き受けたけど、今は思考はっきり正常化している。だから私はあの部屋から逃げ出した。頼みごとの内容も聞かないで。
そしたらこの騎士達に掴まってしまったのだ。
そんでただ今、元の部屋に連行中。
「大丈夫です!!美咲様なら!!」
「そうですよ。あの魔王様のご婚約者様なんですから!!」
「ちょっと。その自信どっから出てくんの?さっきも言ったけど、異世界召喚したらいきなり今まで使えなかった高度な魔法を習得していて自分最強!!とかそんなテンプレ私には存在してないから。一応言っておくけど、魔界ではカリスマ性を持った絶対的な女神とかでもないよ。女神は女神でも補欠だし」
「補欠でも女神様は女神様ですよ。美咲様になら、きっと出来ますって!!」
「そうですよ。エンベラに行き、あの女を元の人間界に追い返すことぐらい簡単ですって」
騎士のその言葉に思わず顔が硬直した。
……おい。
今、なんかさくっと本題言わなかったか?