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6 フラグ粉々にへし折られる

「――では、美咲様はいずれ魔王様とご成婚を?」

「ん~。どうなんだろうね。一応婚約者って事になってるけど」

「美咲様のような方が婚約者なんて、魔王様は御羨ましい方ですね」

「え~。そうでもないと思うけど」

とかなんとか一応謙遜して否定言っておいたが、気分は最高潮。

あまりに人に褒められすぎると、自分がそのような人間なんだって思えてくる。

やばいな、これ。天狗になりそう。

っていうか、もうなってる。


逆ハーの主人公は戸惑ったり相手の気持ちに気づかなかったりで、

天狗にならなけど私はすっかり舞い上がっている。

もしかして、これって私が非モテだからか……?

いや、違う!!断じて違う。

きっと適応力が高いからだ!!きっとそうだ!!


あ~。もうなんかもうすっかり気分的には絶世の美女。

こりやぁ、紅茶も一段とおいしく感じる。

紅茶を啜る私の頭にはすっかり花が咲いているだろう。


「ところで美咲様」

「何?」

「宜しかったら、美咲様のお姿を拝見させて頂きたいのですが?」

「は?姿?」

何言っちゃってんの?王子ったら。

姿も何も私は平安時代の姫君のように御簾に姿を隠しているわけでもない。

だから姿を拝見って言ってもさ。

一瞬この人達には私が見えないのか?って思ったけど、容姿褒められたし。


「美咲様は、あの魔王様のご婚約者様。ということは、女神のように美しいお人。

この世界は魔界と違い、容姿の整っているものばかりではありません。

今のお姿は、我が世界に合わせて頂いていると思うのですが、

僕達はそのような地味な仮の姿ではなく、美咲様の本来の姿を拝見したいのです」

……ちょっと待て。

もしかしてこいつらは私がこの世界で浮かないように魔法か何かで今の姿をしていると思ってるのか?

んで、本来は魔王の婚約者って言うぐらいだから超絶美少女のはずだと?


――んなわけあるかいっ!!私はずっとこの顔だっうの!!

大体魔法も使わずにどうやって姿形変えるのよ!?特殊メークでもしなきゃ無理だろ!?


ん?ということは、今までの逆ハー展開だと思っていたのもただのリップサービスじゃね?

つまりは社交辞令って事かよっ!!


「またこのパターン!?」

いきなり立ち上がり叫んだ私を、王子達が目を丸くして見ている。

魔界で慣れたと思ったのに、またこれかよ~。

私にはやっぱり逆ハー展開はないのか。


「え。美咲様はまさか本当にそのようなお顔なんですか!?」

王子達が全員あげた声は見事に重なった。

すげぇな、こんなに大人数なのにハモるなんて。滅多にないよ。

私はそのことに関心すら覚えてしまう。


「そうだけど何か?」

「あの失礼ですが、本当にあの魔王様のご婚約者なんですよね?」

「悪かったな、その辺にいそうな地味顔で」

「ほ、本当に申し訳ございません。歴代の妃様達はとてもお美しい方ばかりだったと伺っていたので……」

「すみませんねぇ~、歴代妃と違いイレギュラーな者で」

言葉の一つ一つを強調してやった。

それはもう、わざとらしく。


「そんなっ!!美咲様はとても愛嬌のあるお顔をなさっていますよ!!」

「それ、褒めてねぇし」

腕を組み威圧的な声で王子達に問いかけると、彼らの視線が面白いように泳いだ。

ほら、どうした~?さっきの褒め殺しはどこに行った?


「に、人間外見より中身が大事だと思います!!」

そうきたか。

だが、それには同意する。

魔王だって見た目パーフェクトだけど、デリカシーのかけらもないし。

それに前の女神みたいに、見た目よくても悪女って事もあるもんね。


「まぁ、たしかに。だって可愛くても悪女だとかなりマイナスだもんね。

でもさ~、美女に甘えられてちょっと我儘言われたら嬉しいんじゃないの?

ほら、小悪魔系の子とかいるじゃん」

そう何気なく言ってみたら、想像外な王子達の反応が返ってきた。


「嬉しいわけ無いじゃないですか!!あんなの女神の皮を被った悪魔ですよ!!」

「たしかにあれは無い。大体、ちょっとの我儘が金掛かりすぎ」

「けどさ、駄目だって頭ではわかってるけど、あんなに綺麗すぎると聞いちゃうよな~」

「そうなんだよ。潤んだ瞳で、お願いって抱きつかれると……あれ、反則」

「何、お前もやられたの?」

「お前も!?」

王子達は各自話がはずんでいるらしく、声がだんだん大きくなったり、

机から身を乗り出している奴まで出てきている。


…… 一体、どこでスイッチ入ったの?こいつら。


「ねぇ。私、ちょっと部屋戻っていい?」

立ち上がり、そう彼らに告げる。

だってこのままずっと王子達の話が続きそうなんだもん。

それに逆ハーフラグでテンションあがった分疲れが大きくて、少し部屋で休みたいし。


「お待ちください、美咲様」

「何?」

振り返ると、王子達が一斉に口を一文字に結んで私を見ていた。

ちょっと、なんなの?この空気。

さっきまでの彼らのノリは何処にいったのかってぐらい、はりつめている。


「部屋に戻る前に重大なお願いがございます――」








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