表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/52

☆逆お気に入りユーザー444お礼☆ もしも魔王が惚れ薬を飲んだら?

「シリウスっ! これなんとかしてよ!」

「でもねぇ……薬の効果が切れたら勝手に治るし」

「待てない。バイトがあるんだってば!」

私は腕にしがみついている人物を引きはがしつつ、優雅に応接セットに座っているシリウスに訴えた。

これからバイトだというのに、魔王が腕にしがみついて離れない。もうべったりだ。

カラオケ店というのは、平日の夕方もそうだけど土日が込むというのに。


何故いつもに増して魔王がこんなにも面倒になったかと言えば、惚れ薬を飲んだから。

本当は私に飲ませようとしたらしいが、一緒に自分の分の飲み物も持って来たらしく、

どちらに混ぜたのかわからなくなったらしい。

それでこの状況だ。こういう所が本当に魔王っぽい。どっちに混ぜたか覚えておけよ。


「魔王、離れろって!」

「いやじゃ。美咲のバイト先には男もおるじゃろ? 蓼食う虫も好き好きというではないか。

美咲を見初めない男がいない可能性がなきにしもあらずじゃ。余は許さんぞ」

「はぁ!? お前、今なんて言った!?」

そう怒鳴ればきょとんとした魔王がこちらを見詰めていた。


「バイト先にも……」

「違う! その後! 後だ!」

蓼食う虫もって可笑しいだろうが。しかも可能性がなきにしもあらずって言うなよ。


「どうしてじゃ? ことわざとやらの意味もあっておるはず……」

「惚れ薬飲んでるんだろ!? なら、もっと上げろよ! 持ち上げろ! 褒めろ!」

「何故、美咲はいつも怒っているのじゃ? とにかく外出は禁止じゃ」

「ぐえっ」

魔王が一瞬拘束を解いたかと思えば、今度はその胸に抱き込まれてしまう。

そのため私はすっぽりと魔王に抱きしめられた。

しかも絶対に離しません! というぐらいに力強く。


「バイトがあるんだってば!」

「駄目じゃーっ! 今日の美咲は珍しくスカート。それが馬子にも衣装で似合っておる。

なおのこと駄目じゃ」

「おい。だから可笑しいと何度も言っているだろうが!」

「だから何故そうも美咲は怒っておる?」

「もういい。離せ。バイトに遅れる」

「駄目じゃ!」

そんな攻防が繰り返される中、「ねぇ」というシリウスの妖艶な声が耳に届いてきた。


「何? 解毒剤作ってくれるの!?」

「いいえ。私がそのバイトを代わりに引き受けるわ。人間界にも興味があるもの」

そのシリウスの申し出に、私は眉を顰めた。

カラオケなんて魔界にはない。そのため、どういった事をするのかすら知らないはず。

バイト先に来たのも1・2度だけだし。


「無理だよ」

それにはすかさず即答。考えるまでもない。


「あら、問題ないわ」

そう言って髪をかき上げたシリウスに対し、私は頭を抱えたくなった。

何故そんなに自信があるのだろうか。どっから湧いて出て来るんだ……


「でも、このままならあちらも困るでしょ? 一度窺ってみて駄目そうなら戻ってくるわ」

「まぁ、たしかにそうだけどさぁ……」

結局、私はシリウスにお願いする事にした。

駄目かどうか店長が判断すると思うから、大丈夫と判断すれば問題ないだろうな。






「ただいま」

「シリウス! おかえり!」

ベタベタとひっついている魔王にもなんとか慣れた頃、シリウスが戻って来た。


「はい、これ。臨時のバイト代だそうよ」

そう言われ差し出されたのは銀行の封筒だった。

いつもは口座振り込みだけれども、1日だけだから店長が現金で渡してくれたのだろう。


「いいよ、シリウスが働いたんだもん。シリウスの物だよ」

「あら、でも……」

「いいから」

「そう? なら頂くわ。ねぇ、美咲の世界の物価がわからないのだけれども、十万円あればお寿司食べられるかしら?」

「……待って。なんで十万円なの!? 今日のシフトは五時間だから、その計算だと時給二万円になるんだけどっ!?」

……って、まさか。


「今日おかげでお客さんがいっぱい入ったから、お礼で弾んでおいたって言っていたわ」

店長ーっ! やっぱりか!

私、あそこで働いて長いですよね!? なのに一日でこの差かよっ!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ