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小話集2

ブログより転載。拍手まとめです。

☆『指切りげんまん』魔王×美咲


「ちょっと~。なんで一人で勝手に拗ねてるのよ?」

私は仁王立ちになりながら寝室のベッドの前へ佇むと、中心部がもこっと盛り上がっている布団へと声をかけた。

だが、返事は一切ない。それどころかぴくりとも動かない。


――なんなのよ、一体。


つい先ほどバイトへと出掛けると魔王に声をかけたらこうなった。

いつもなら「気をつけて行ってくるのだぞ」とかなんとか言うのだが、今日に限って「なぜシフトをいれてしまったのじゃ!? 余は今日のために準備をしておったのに!」って魔王が半泣きしてこうなった。


「ねぇ、今日ってなんかあるわけ?」

「酷いぞ……美咲。記念日を忘れるとは……」

「記念日? 二人とも誕生日はとっくに終わってるわよね?」

「余と美咲が運命的に出会った日じゃ!!」

「あぁ」

そう言われればそうかもしれない。

まぁ、あれは決して運命的ではないが。運命的であってたまるか。


なんせ寝ている所を勝手に召還されただけでなく、理由が「容姿が整っている奴が結界内に入れないので、お前行って魔王を連れてこい」だもんな。

そこは世界を救う巫女としてとかだろうが。

気を利かせて召還しろって。


しかし、まぁ相変わらず乙女的な思考だな。

出会って1年とか、付き合って1年とか、そんな記念日なんて祝った事ないぞ、私。

というか、んな事そもそも覚えてない。


「あぁって、なぜそんなにあっさりなのじゃ!?」

がばっと布団が飛び、魔王が姿を現したが髪がぼさぼさだ。


「お前、あの状況を運命的だったねって言えるか? 言えないだろ」

「何故じゃ!? 余は言えるぞっ」

「あれを運命と言えるほど、私は器がでかくない。それよりさすがにバイト時間迫っているからそろそろ行くわ」

「なぜそうもドライなのじゃ……余の事を愛しておらぬのか?」

「それとこれとは別。取りあえず大人しく待ってなさい。取りあえず後よ、後。 帰りにケーキでも買ってくるから」

「絶対じゃぞ!?」

「わかった、わかった。ほら」

私はベッドへと足を進め上がると、魔王の前へ小指を差し出す。

すると魔王は首を傾げて見せた。


「指切り。私の住んでいる世界では、約束をするときに小指と小指を絡ませるのよ」

「ほぅ」

魔王は手を伸ばし小指を絡ませた。


「ゆびきりげんまん、嘘付いたら針千本飲ます。ゆ……――」

「ギャーッ」

突如室内に響きまくった叫び声に、私は顔を歪める。 今度はなんなのよ!?


「余は美咲にそのような非道な事したくはないぞ! 針を千本も飲むなんて……」

「飲まないわよ。っつうか、飲めるか!! しかもなんで私が約束を破る事になってるわけ!?」

「約束とは実に怖い……」

ぶるぶると震える魔王を見て、なんだか余計な事を教えてしまったような気がした。





☆妄想癖な魔王様~番外編のハロウィンその後の魔王の様子~ (美咲がお風呂に行った後)


『十五分後』


余の胸はこれでもかというぐらいに高鳴っておる。



美咲は余にどんな甘美な悪戯をしてくれるのだろうか。

余は美咲が与えてくれるのならば、どんなものでも全て受け入れるぞ。



『三十分後』


少しばかりじらしすぎではないか……?

余はだんだん待てなくなってきたぞ。



『一時間後』

長い、長いぞ美咲。余はもう待ち切れぬ。

はっ!もしかしてこれが美咲の狙いか!

そうかそうか。余をじらしにじらしまくり、我慢できなくなる限界まで美咲は待っておるのじゃな。

お腹を限界まで好かせて食べる食事は格別な味。

そうじゃろ、美咲。

よいよい。余はその瞬間まで待とうぞよ。



☆バレンタイン前(美咲視点)


只今、リヴァとシリウスと共にお茶会中。

最初はシリウスの部屋で普通に私とシリウスで二人でお茶してたんだけど、

リヴァがやってきて城の売店で販売する新商品の企画について話をするためにやってきた。

それで珍しくこのメンツでお茶を飲んでいる。


「人間界にはバレンタインというイベントがあるそうですね。それを魔界に取り入れてみてはどうでしょうか?」

「バレンタイン? あーもうそんな時期か。今年はどうしようかなー。

手作りって言っても、買った方がおいしいし」

「そうですね。うちの妻の場合は作った方が美味しいですが、美咲様のはそうですね。買った方が見た目も中身も優れていると思いますよ」

「……言うな」

じろりと同テーブルに座っているリヴァを睨んだ。

リヴァはその視線を受け止めながら優雅に紅茶を飲んでいる。


たしかにリヴァの奥さんは菓子作りの腕がプロ級。

時々城のカフェにてその腕を振るって貰っているんだけどそれもすごく好評。

それに比べれば、私が作るものなんて決まっているじゃん。

チョコとかして固めるだけだし。


「あら? それなら美咲にチョコを塗ってリボンを巻いてみたら?」

同席しているシリウスが妖艶に微笑む。

いや、あのですね。貴方様なら様になりますが、私がやってもねぇ……


「あのさ、何度もいうけどそういうのは私がやるべき事ではないってば」

「たしかにそうですね。それ誰が得するんだって話です」

「だからお前が言うな!! それに誰が得するって魔王が得するだろ!!」

ダンッとテーブルに両手をつき、たまらずに立ち上がる。

魔王が得するかはわからないが断言しておく。

いや、むしろ得してくれないと私的に困るんですけど。


「そうですねぇ。魔王様ならば可能性が限りなくゼロではないかもしれません。

ですが個人的には反対です。そんな事したらカーペットや城の備品がチョコで

べたべたになりそうじゃないですか。備品交換やクリーニング代でお金が掛かってしまいますよ。

どうしてもやりたいのならば、何かビニールのようなものを敷いてやって下さい。それか自腹切ってください」

「結局リヴァの心配点はそこか」

「それ以外に何か?」

うん。まぁそうだよね。

汚れるし、2月だから寒いし。

今年どうするかなー。



☆バレンタイン当日(魔王視点)


今年のバレンタインは実用性重視。と美咲に今朝渡されたのはチョコ二粒と、

それからそれと一緒に同封されていた赤いパンツだった。

美咲の世界で戦隊モノというのがある。

それは黄色や緑などのカラーを持った戦士達が悪と戦うという、なんとも魅力的な話なのじゃ。

その中でもお約束と言っていいほど、赤はヒーロー達のリーダー。


おそらくこれは美咲からの『私のヒーローは貴方なのよ』というメッセージなんだと

言うことは察するのは容易い事。

そんな事をわざわざ美咲に言わせるほど、余も鈍くはないぞ。


「うむ。さすが美咲が選んだモノじゃ。余にぴったり」

鏡に映る余は、真っ赤なパンツ姿。

寝室には暖炉があるが、さすがに肌寒い。

これを渡して学校に行ってしまった美咲は、余のこの格好をみていない。

どんなに余に似合うのか、そして「無論。美咲のヒーローは余じゃ」という事を美咲に伝えねばならぬ。

それに余は赤も似合うようじゃ。これも美咲に伝えねばならぬ。

さすが美咲じゃ。余にぴったりの色も存じているとは。


「じゃが、さすがに寒いのぅ」

美咲が帰ってきたら見せようと思ったのじゃが止めておこう。

風邪をひいてしまうぞ。

仕方ないので余はマントを羽織る事にした。

美咲早く来ぬかな。


数分後、帰宅した美咲にマントを広げ赤パンツがいかに似合うかとくと見せようとしたら、「この変質者がっ!!」と正座させられお説教をされてしまった。


※美咲が赤い下着を選んだ理由は、赤い下着を着ると色の高効果で健康に良いと聞いたからです。



☆財務大臣よりサプライズバレンタイン


「美咲様」

呼ばれて振り返れば、そこにはリヴァがこちらに向かって歩いている所だった。

廊下に敷かれた真っ赤な絨毯を踏みしめながら、彼は手に何か袋を持っている。

それは魔王ロゴ入りの城の売店の紙袋だ。


「何?」

「これを」

リヴァは手にしていたそれを私へと差し出してきた。

なんだろう? これ。

疑問に思ったが、受け取っておく。


「今日はバレンタインですので。日頃お世話になっている美咲様にと」

「はっきり言え。何があるわけ?」

「なんの事ですか?」

「守銭奴のリヴァが私に何かを送るなんてありえないわ」

「失礼ですねぇ。日頃美咲様にお世話になっているので、気持ちですよ。

ただ城の売店で売っている菓子ですが……」

「え? 本当に裏ないわけ?」

「ありませんよ」

「そうなの? 開けていい?」

「えぇ」

こっちに何か仕掛けがあるわけじゃないわよね?

がさごそと袋から中身を取り出せば、何の変哲もない菓子。


「ごめん。てっきりリヴァから何か送られるなんてびっくりしちゃったから、

疑っちゃった」

「いいえ。それ早めに食べて下さいね」

「あ、うん。ありがとう」

「では、これにて失礼いたします」

リヴァは礼を取り、颯爽と去っていってしまった。


「疑って悪かったなぁ」

何気なく裏を見た瞬間、リヴァが早めに食べろと言った理由がわかった。


「……賞味期限今日じゃん」

これ、売店の在庫処理かよっ!!





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