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番外編 七月七日

ブログより転載です。

この人達には珍しく恋人同士っぽい。

七月七日。七夕デートにと、私と魔王は夜景を見にやってきていた。

ここは町から車で一時間ぐらいの場所にある山の展望台。

ベタなデートだけど、夜を味方にしたカップルには自分たちの世界に入るのは容易いらしい。

あちこちでいちゃつきまくっている。


いつもに増して人が多い。

今日は七夕なので、天の川を見にきたのだろうか。

ここは気象条件がいいため、天気が良ければ肉眼でも見れるらしい。

私達もそれを目当てでレンタカーでやってきたんだけど……――


「何故じゃ!? なぜそのような血も涙もないような事をするのじゃ!?」

漆黒に浮かぶ天の川が幾重にもブレて見える世界で、

私はまたこいつ暴走したなとどこか他人事のように思っていた。言わずもがな犯人は魔王。

私の両肩を両手で押さえ揺すっている。

周りで夜景を見ているカップル達が何事かとこちらを見つめているけど、それもブレている。


「なぜ織り姫と彦星は一年に一度しか会えぬ? それはあまりにも惨いではないか!」

「んなもん知らん。大体そういう物語なんだからしょうがないでしょ。それに自業自得でしょ。

恋愛脳になって、自分の仕事すっぽかしてたんだから」

「その件に関しては織姫達もきっと重々反省しているはずじゃ。のぅ、なんとかできぬのか!?」

「……私はその辺にいる女子大生なんですけど」

「そうじゃよな。美咲は平凡じゃったの……」

「お前今、平凡っていったな」

がしっと私の体を揺らしている魔王の腕を掴んだ。


「なぜ美咲は怒っているのじゃ……? 余はまた何かしたのか? 短冊にかかねばのぅ。美咲が怒りませんようにと」

「書かないでよ! それじゃあ、まるで私がいつも怒っているみたいじゃない!」

「怒っておるではないか」

「誰のせいだ。誰の。いいから、せっかく展望台まで来たんだから、夜景でも星でも

見なさい。夜景の中にハートに見える箇所があって、それを見ると願い事叶うみたいな話が

あるから探してみれば?」

「本当かっ!?」

うきうきとしながら魔王は柵に手を添え、前のめりになり夜景を眺めその箇所を探している。

やっと落ち着けたと息を吐き、魔王の少し後方にあるベンチに座りながらその子供っぽい様子を見つめた。


乙女チックな魔王は、他人の恋バナやジンクスに大変興味があるらしい。

なので、今日は七夕なんだけど、その話にも食いついてきた。

短冊に願い事すると叶って私に聞いて、魔界で七夕の飾りを作って短冊作成し飾っている。

魔界に天の川ないのに。


……まぁ、気分だろうけどね。


「……あの~」

急にすぐそばで声がしたので、びくりと体が大きく動いた。

しかもか細い助成の声だったため、私はてっきり幽霊かと思ったのだ。

視線を向ければ、そこには私と同じぐらいのカップルが。


「さっき聞こえたんですけど、夜景がハートに見えるって」

「あぁ、はい」

そう返事をすると、女性が困惑顔になった。

どうしたのだろう? 首をかしげながら、その人の次の言葉を待った。


「あれここじゃなくて、西町にある音大近くの別の展望台です……ですから、見つからないと思いまして……彼氏さん、なんかすごく楽しそうに探しているみたいでつい声かけちゃったんです。

すみません、余計なことをを……」

「え」

パッと今の話を聞かれたかと思い、魔王を見れば変わりなく探している。

どうやら夢中になり聞いていなかったようだ。


「あ~、そっちだったか。わざわざありがとうございます」

「いえ」

カップルはぺこりと軽くお辞儀をすると、そのまま去っていく。


まさか、音大付近の展望台だったとは。

友達に聞いてうろ覚えだったからなぁ……

全然違う場所だから、いくら探しても見つかるわけないか。


「まお……」

「おおっ!!」

ごめん。場所間違えてたと訂正しようとしたら、魔王の声にかき消された。


「美咲! 見つけたぞ。ほら!」

振り返った魔王は、笑顔で一か所を指さしている。


――嘘。まさか、あったの!?


腰を上げ魔王の隣に立ち、その場所を見るがハートは見当たらない。

むしろ、原型すらない。


「ごめん。どこ?」

「あの一番高いビル付近じゃ。どこからどう見てもハートじゃろ」

魔王が指す場所は頑張ってもハートには見えない。

視力悪くなったか? 私。

たしか、1・5だったはず。

もしかして光が集まっているから、個人の感性によってはハートに見えるのかも。


「美咲とずっと一緒に居れますようにとお願いせねばな!」

「……」

相変わらず乙女チックだね。

私なら、バイトの時給が上がりますようにってお願いするのに。

でも、魔王らしいと思わず笑みがこぼれる。


「――そのお願いさ、きっと叶うよ。ハート見つかったんだもん」

「そうじゃのぅ~」

私が魔王の手を握り笑うと、魔王も微笑みを返した。



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