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番外編 海水浴へ行こうっ!

「さすが美咲様です。俺ら異世界の文化という物に俺は以前から興味があったのですよー。この水着という衣装」

「いや~。俺達にシリウス様の『ビキニ』……じゃなかった。水着姿を拝める機会……でもなくてこんな風に文化に触れる機会を与えて下さって感謝ですね。マジで。美咲様が魔王様の伴侶でよかったっス」

「よっ。魔界一!」

灼熱の太陽の下で波音が心地良いビーチにて。

私はハワイアン柄のビニールシートに座りつつ、かき氷を食しながら目の前でへこへこと頭を下げ手を揉み合わせている男達を見ていた。奴らは今まさに海パン一丁で白砂の上にて正座をしている。

いつの間に正座というものを覚えたのだろうか。こっちの世界にはそんな風習ないというのに。

しかしなんて典型的なゴマの擦り方なんだ。


……というか、砂熱くね?


「お前らほんと都合良いよな~。普段人の事コケにするくせに」

一度たりとも敬った事すらないのにさ。

だったら普段から褒めろよ。讃えろ。どうせすぐにいつも通りになるんだろ?


「何をおっしゃいますやら。俺達にはさっぱり。なぁ?」

「だよな。いつも美咲様の事を尊敬していますって。コケにするなんて滅相もない」

「そうですよ。今日も美咲様のお誘いだからと仕事を休んで魔界まで来たのですから」

お前ら気づいているか? さっきから台詞が棒読みなんだよ!!

あと目が死んだ魚のようになっているから、無理しているのが一発でわかるっつうの。


私達がなぜ海に来ているかというと、本日は魔界で海開きが行われる。

私は大学が夏休みのため先にキース達を引き連れ、ビニールシートを敷いたり、

クーラーボックスなどの準備を先にしていた。

元々魔界には海水浴という風習がなかったのだけれども、人間界で海水浴を楽しんだシリウス達が

是非魔界でもやりたいとこうして開かれることになり、話が盛り上がり20~30人ぐらい来る予定だ。


「なら仕事戻れ。毎度私を理由に仕事休むなって」

「はぁ!? 冗談じゃありませんよ。シリウス様を見るまで帰れません! えぇ、ここを何がなんでも動きませんから。シリウス様のビキニ姿とやらを拝むまでは!!」

くわっと目をかっぴらき、キース達は立ち上がり声を高く響かせた。

シリウスの水着一つでこれか。さすがだな、魔界のフェロモン姉さんは。

だが一つ言いたいことがある。


「気づいているか? 私も一応、水着なんだが。これがビキニというものだ」

そう。海という事もあって私も水着だ。黒地に星柄。

去年買ったのがあるから今年は買わずにいたんだけど、魔王が新しいの用意してくれた。

だが、あれを着るのは辞退するしかなかった。

だって、あれ水着じゃなくて紐に近かった。あのエロ魔王め。

一体何処で仕入れてきたんだ!? 生まれも育ちも人間界だが、あんな水着見たことないぞ!?

んなもん着れないという事で、結局去年の水着となった。


「あ、そうですか。それよりシリウス様まだですかねー?」

「早くお会いしたいよなー」

キース達はきょろきょろと辺りを見回している。

「……お前ら私の水着姿はスルーかっ!!」

さも興味ない様子を見せるな。大人なら少しは社交性を出せ。

「その水着似合いますね」的なありがちな言葉でもいいから言えよ。


しかし、毎回思うが異世界召喚ってこんなもんなのか?違うだろ。

あー。逆ハーになりて~。ちやほやされて~。

「やだ。今水着だから、そんなに見ないで」とか、頬染めて言いて~。


魔王の婚約者という立場はあるが、全然崇められない。その気配すら見えない。

一見普通のあの子は実は……――なんてテンプレがあるはずなのに、どうして私には適応されないんだ?

おかしい。平凡だし庶民だしで条件は満たしているはずだ。

もしかして後からそういうオプションが付属されるのか!? これは焦らしプレイなのか!?

少々焦らしすぎだと思うのだが。


「あぁ、そうだ。私、ティッシュボックス持って来てないから。自分達でなんとかしてよね」

そう言ったら、キース達は目をまん丸くさせた。

「ティッシュボックスとは……?」

「鼻をかむ時に使うの。シリウスの水着姿にキース達絶対鼻血出すだろうから」

「心外な! 俺達は騎士ですよ。そんな不埒な事を考えるはずがありません!

ただ異世界の生活について知りたいだけなんですよ。それなのになんですか、その言い方は。

まるで俺達がシリウス様達の水着姿にウハウハになり、興奮して鼻血を出すみたいじゃないですか」

「そうですよ。そんなの必要ありません!」

そう力説していた彼らだが、数分後シリウス率いる魔界の美女軍団登場に鼻もとを押さえる羽目となる。

無理もない。ビキニ姿の綺麗なお姉さん達が、手を振りながらたわわな胸を揺らしてこちらに来るのだから。

そして結局私が危惧していたように「ほらだから言っただろが!」と、キース達の介抱を請け負う羽目になった。





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