ハロウィン企画 仮装コンテストで頑張って。その2
「待て。ミスコンって、あのミスコン?」
私の思うミスコンとリヴァの想像するのが一緒ならば、綺麗どころが集まって美しさを競うやつじゃん。
そんなの同じ土台に立てるわけないじゃんかーっ!!
なぜ私を出そうと思ったんだ、こいつ。嫌がらせか?
「えぇ。実はこのたびハロウィンという人間界のイベントについて魔王様より伺い、これは是非魔界でもと思いましてね。この間、会議でプレゼンしたんですよ。これが以外と他の大臣達も乗り気でしてね。
ほら、魔界や人間界より観光客を呼、限定グッズ販売などで稼げますし」
「……やっぱそれか」
私はソファに身をうずめると、息を吐いた。
やっぱな。何かしらあると思ったんだよ。
「でも悪くはないと思うよ。外貨獲得して目指せ赤字脱出とまではいかなくても、国庫赤字補填可能だし」
正直国の経費はかつかつだ。
もちろんカフェや土産屋は儲けが出ている。
でも足りない……
魔王はそれでも民の税を増やす前に、やれる事をやってから考えようと。
城の宝物庫や経費削減などをして一応やってはいるんだけど、なんせ女神様が使用した額が……
「えぇ。ここはあの女神の負の遺産をかき消すまで稼いで稼ぎまくりましょう。ということで、
人寄せのためにミスコンをしようと思ったんです。ほら、ハロウィンって馴染みありませんし。
ミスコンというより仮装コンテストですね。それで人の興味を引こうと考えたんです。
男女の部、キッズの部。そうすれば老若男女楽しめますから。投票は特別審査員の他、一般で行います。
一般は城下町や城の土産ショップで買い物をすれば、投票券を貰えるようにするんですよ。
一人一回までの制限付き。ですが、投票券を集めれば抽選でプレゼントあり。どうですか?」
それは賛成。私もたまにやるもん。
スーパーとかでも、自分の買っているものがキャンペーン対象ちょっとテンションあがるんだよね。
あれ購買意欲そそる。とくに、あと一枚だとまとめ買いしちゃうし。
「それは賛成するよ。たが、それならば私要らないよね。シリウスとかにすればいいじゃん」
「えぇ、もちろん。つい数時間前にシリウスは美咲様が承諾なされたように、喜んで同意書にサインしてくれました」
「私、喜んでないし」
「シリウスはこういうイベントを好んでますからね。正直参加を表明して下さって有り難いです。
人間界の男性に絶大なる人気を誇ってますから。彼女目当ての客も多いでしょう」
「じゃあ、やっぱ私いらないじゃん。っうか、同じ土俵に立ちたくない。というか、もうね最初から勝てない」
「いいえ。美咲様は魔王様の婚約者。ここはサプライズゲストとして、登場して頂きたいのです。
ほら、人間界でよくありますよね。ミスコンにサプライズゲストで有名芸能人やモデルなんかが、
登場して会場を盛り上げるって。元々は美咲様の世界のイベント。
仮装の件、魔王様もかなりご期待しております。全力で仮装してみんなの度肝を抜いて盛り上げて下さい」
「ますます出れなくなったじゃないの!!何よ、それ。ハードルじゃなくて高跳びじゃん!!」
妙ににこやかに微笑むリヴァに腹が立った。
それならば最初からコンテスト参加にして欲しい。
私が出てもサプライズになりゃしないじゃんか。
しかもハロウィン仮装なんてした事ないっうの。
――ということがあり、私は結局また面倒な事に巻き込まれてしまったのだ。
「ほんとどうしよう……」
あの話の後にこうして衣装を探しにお店を回っているんだけど、「これだ!」というものがない。
もういっそのこと和風のやつにしようかな。
西洋風の衣装だと、リアル魔女がいる魔界では着用率高いし。
だが、あいにくとここには和風は売ってないようだ。
上から下まで眺めるが、童話の主人公のような格好や骸骨とかばかり。
ネットで探してみようかな……
猫娘とか一旦木綿とかならありそうだし。
そんな風に考えていると、「美咲先輩」という華やかな声と共に肩をポンとたたかれたため振り返った。
「あ、花梨ちゃんと麻奈ちゃんじゃん」
そこに居たのは、片手をあげている大学の後輩二人だった。
花梨ちゃんは茶色のミディアム紙をゆるふわのパーマ。
今回は白いワンピースにパステルピンクのカーデを羽織り肩からはブランド物のバッグを提げていた。
いつもメイクもネイルも完璧な女子力高くモテ子ちゃん。
大学では英文科専攻で、私とはバイト先が一緒。
そしてその隣には、麻奈ちゃん。
黒ぶちの伊達眼鏡をかけ、ポークパイ型の黒っぽい茶色をした帽子を深くかぶっている。
いつもは長い髪なんだけど、編みこんでいるのか今日はおかっぱっぽい。
黒いジャケットに英字のシャツ、それから黒のタイトスカートにロングブーツ姿。
今日はモノトーンカラーで花梨ちゃんとは対照的な雰囲気だ。
私と同じ国文科のため、たまに構内で出会う事がしばしば。
麻奈ちゃんもバイト先が一緒で、二人とも私より一つ下の学年。
「こんにちは、美咲先輩。ハロウィンの衣装探しですか?」
「うん。二人は?」
「クラスでハロウィンパーティーやるんですよー。英文科ですからね。それで衣装探しに」
「へー。何するか決めてるの?」
「はい。やっぱりここは魔女かなって。定番と言えば定番なんですけどね」
「似合いそうだね。麻奈ちゃんも?」
麻奈ちゃんに視線を送ると、彼女は首を横に振った。
「いいえ。私は付き合いで。美咲さんは何をするんですか?」
「それがね……悩んでてさ」
「あっ、わかった!!」
花梨ちゃんはパンと手をたたき、人差し指を立ててずいっと迫ってきた。
「あの無駄にカッコイイ彼氏さん達とパーティーするんですね?
それで悩んでいると。わかりますよー。たしかシリウスさんでしたっけ? 前うちの店に
来て下さった時お会いしましたが、すっごく綺麗な方ですもんね。しかもすさまじくスタイル良すぎ。
やっぱコスプレやりにくいですよね……被ると凹みそうだし。
和風にしたらどうですか?」
「そうですね、それなら和風の方がいいかもしれませんね」
花梨ちゃんの言葉に、麻奈ちゃんも首を縦に振り同意している。
「でもさ、衣装が……ネット通販だとあるかな?」
もうね、忍者でもやろうかなって思えてきた。
外国人には忍者と侍がうけが良いって言うし。
「それならば、私がお力になれますよ。日本ならお任せ下さい。私、民俗学サークルに入ってますので」
「ほんと?」
麻奈ちゃんの言葉に、私は期待が籠り思わずちょっと高めに声が出てしまった。
助かるー。これならなんとかなるじゃん。
やっと出口から光が見えたわ。
「――きっと美咲さんなら着こなせますよ。外国の方にも日本文化を紹介出来ますし。一石二鳥です」