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小話集 

ブログの過去拍手まとめです。

溜まったようなのでこっちにupしましたー。

☆クリスマス企画☆


すっかり遅くなっちゃったよ~。

私は自室のクローゼットに鞄とコートをしまうと、壁にかけられている時計を見た。

時刻はすでに深夜一時半を回っている。


あ~あ。パーティー参加出来なかったなぁ……


今日はクリスマスなので、魔界でもクリスマスパーティーを開く予定になっていたんだ。

でもバイト先のカラオケ店で同じバイト仲間の子が急に来れなくなってしまったため、

予定が狂い急遽私が延長して結局この時間。


もちろん魔界にクリスマスはないよ?


元々は魔王が人間界に来た時に町に飾られているイルミネーションを見て、感化されてしまったのが発端。

魔界でも城にある木に飾りつけしたり、サンタの衣装買ってきたり、なんか一人盛り上がっていたっけ。


でもまぁ、バイトだから仕方ないよね。

お風呂入って寝ようかな。クリスマスだから、お客さんの数すごかったし。

私はバスタオルや着替えを持って、隣りの寝室の扉を開けた。

お風呂は大浴場もあるけど、温泉の元が使えるので寝室のお風呂を使用している。

疲れた時は、入浴剤使うとなんか違うんだよね。

扉を開け電気を付けると、何か変な物が視界に入って来てしまい、思わず手にしていた着替えを落としそうになってしまう。


ベタすぎるだろ、あれは……


それは寝室のベッドの上にあった物体――白とミント色のボーダーの靴下だ。

しかも、縦も横も男性が二人入ってもかなり余裕というぐらい大きい。

すぐに見て一発で何か入っていることは、その膨らみから想像することは容易く想像出来る。


どうする?私っ!?と自問自答する間もなく、その靴下は上半身を起こしたかと思うと、ぬっと私の婚約者が顔を覗かせた。


「美咲、疲れたであろう。余の元へ体を休めると良い」

「やっぱそういうベタな展開なのね」

魔王を見て、私は思わず頭を抱えた。

いやだってさ、案の定首にでっかいリボンをしていたんだよ?これ、決定でしょ。


「ねぇ、まさか『余がプレゼントじゃ』とか言うんじゃないでしょうね?」

「すごいぞ、美咲!!余の事がわかるとは、これは愛の力以外考えられぬ」

やっぱそうなのか。

その後は結局、これまたベタな展開で私達はクリスマスを過ごした。






☆悪夢の先には君が☆


今日も良く寝ておるな。

すやすやと眠る美咲の頬に触れた。

仕事を終え寝室に入ると夜着にも着替えず、こうして真っ先にベットへと向かうのが日課となっている。

それは美咲に会うためだ。


余は時々思う事がある。

それは美咲が居なくなってしまうんじゃないかと言う事だ。

だから真っ先に確かめに行く。

体温が吐息が美咲の存在を幻なんかではなく、たしかなものと示す。


――美咲はここにおる


こっちが現実だ。

あの女の悪夢は終わった。

毎日響いていた甲高いあの女の声も、頭を抱える問題も、 殺伐とした城の雰囲気も全てが終わった過去の事。


もし万が一あの女がこの世界に戻って来たら余は……――


「ん~……」

聞こえてきた小さい美咲の声にすぐに手を離すが手をくれらしく、美咲は目を擦りこちらを見つめていた。


「魔王……?」

「すまぬ。起こしてしまったか」

どうやら知らぬ間にいろいろ触り過ぎてしまったらしい。

美咲はゆっくりと上半身を起こすと、余にしがみ付いて来た。

胸に暖かいぬくもりを感じる。


「どうしたのだ?」

「……。」

返事がないので見て見ると、美咲は余に抱きつきながら眠っていた。

ほう、これはなかなか器用な事を。


「美咲。愛しておるぞ」

だから余の傍にいてくれ。

悪夢が終わり、これからはずっと美咲と共に――





☆魔王様の癒し空間☆


ちょっと待て。ちょっと待て。ちょっと待てーーーっ!!


目にしたその驚愕の光景に、私は扉を開けたまま立ち止まってしまっている。

その光景は、一度目に焼き付けてしまうとなかなか頭から出て行ってくれない。

それほどこの光景は異常だ。


「美咲?」

微動だにしない私の異変に対して怪訝に思ったのか、この部屋の主は首を傾げながらだんだんと私との距離を詰め近づいてくる。

ついさきほどまで彼が仕事をしていた絶対に一人では運べなそうな重厚な執務机の上には、未処理と思われる書類が山になっていた。

机だけじゃなく、本棚などの配置も変わって無い。

部屋を見回してみると、たしかにここは見慣れた魔王の執務室。


ただ一つ変わってしまっているのは――壁だ。


なんと壁には一面に、写真がびっしりと貼られている。

何十枚。いや、何百枚の写真が使われているそれは、異様な空気を醸し出していた。

その実に奇妙な光景に私が動きを止めてしまうのは、仕方のないこと。


綺麗な風景を写しだした写真なら、まだ良いと思う。

芸術的かもしれない。

だが、この部屋に飾られているのは、あいにくと私の写真。


――すっげぇ怖ぇ……背筋ぞわっとしたし……


「美咲?一体どうしたのだ?」

「どうしたのだじゃないでしょうが!!これ、何なのよ!?模様替えとか言うんじゃないでしょうね!?」

私は壁に視線を送ると、魔王はなぜか眉を下げて顔を綻ばせた。

おい、なんでその反応をする?


「――余の癒し空間じゃ」

「……。」

これの何処に癒し要素が含まれているんだ?

私には狂気的にしか感じられないんですけど。

そんなどんびきな私をよそに、魔王は目尻を下げて写真を眺めていた。


その後私の写真は魔王がデジタルフォトフレームの魅力に取り付かれるまで、貼られることになる。

はがそうとしても、グレイル達家臣により、「魔王様の執務能力があがったのですから」

ととめられてしまっていたからだ。






☆呼んでみたかっただけ~魔王×美咲ver~☆


「みーさーき」

なんだか突然余の愛する人の名を呼びたくなったので、美咲の名を呼んでみた。

名とはなんて素晴らしいものなんだろう。

口にするだけで、こんなにも胸に深く広がっていく。


普通名を呼ばれれば、当人が「何?」とこちらを見るはずだ。

だが、美咲は余の事を無視していおる。

しかも美咲が視線を釘付けにしているのは、余ではない。

塔のように積まれた、カラフルな積木のようなもの。

美咲はそれに向かって右腕を伸ばしている。


――美咲。余がいるのにそんなにそれに視線を集中させるとは、余は妬けてしまうぞ。


「美咲」

余はもう一度愛する者の名を呼ぶ。

彼女の目に自分を映し出すために。

だが、美咲はそれも無視した。


「みーさーき」

「……。」

「美咲」

「……。」

「美咲」

「……。」

「美咲」

「……なに?」

やっと 振り向いた美咲の瞳に、余が映し出された。

なぜか美咲の顔が険しいが、そういう表情も凛々しいのぅ。

余は愛する者のどんな表情も愛しく思うぞ。


「呼んでみたかっただけじゃ」

「魔王、ふざけてんの?」

「美咲はなぜ怒ってるのじゃ?」

ここははにかむ所ではないのか?


もしてして、照れているだけかもしれぬな。

だが、次に美咲が発した言葉に余の考えは違っていた事を知る。


「――んな事、ジェンガ中にするな!!」

美咲の叫びが室内へと木霊した。


「そもそもジェンガしたいって言ったのは、魔王でしょ?」

「そうじゃ」

「じゃあ、ジェンガ中は辞めて」

「なぜ?」

「んなもん、集中できないからに決まっているでしょうが!!」

美咲は獣が叫ぶように、余に向かってその言葉をぶつけてきた。


もしかして、何か嫌な事でもあったのかもしれぬな……

よいぞ、美咲。余はどんな美咲も受け止める覚悟があるから。







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