☆完結 お礼☆ 番外編 体で払って貰います。 前編
碧威より、ほんの少しばかりのお礼です(*^_^*)
「ほんと好き勝手にやってくれるよな」
壁に貼ってあるPOP広告を見つめながら私がそう吐き捨てると、
隣りに居る人物が「やはり、怒ってるのか?」と不安げな声が帰って来た。
私が見ている物。
それはカラフルなイラストでデコレーションされていて、
さすがとも言うべきか購買意欲をかきたてるものばかり。
『大人気!!魔王様御愛用グッズ』『魔界城限定』『売りきれ御免。個数限定シリアルナンバー付き』などなど――
そしてその下には、棚がありヌイグルミが綺麗に横一列に並べられている。
もちろん、魔王様御愛用グッズなカピバラのヌイグルミ。
しかもいろんなバージョンがあり、大きさもいろいろだし、ドレスを着た夜会バージョンなんかもあるのだ。
下の方にいくにつれヌイグルミだけじゃなくお菓子や文房具もあるけど、これを私と見なければ可愛いと思うから子供にも人気があるのは理解出来る。
あくまで私だと思わなければの話だけど。
しかし、財務大臣め。報告受けてないんですけど?せめて、一言本人に断れよ……
私と魔王が今いるのは、城の一階にある売店。
まだ開店前なので人はおらず、体育館が丸ごと入るような敷地に二人だけポツンと立っていた。
元々コンビニぐらいの大きさだったんだけど、人間界との国交が復活してしまい、来客数が増え改装したの。
その時、カフェスペースまで作ってしまったからこんなに広くなってしまった。
「美咲。無許可で売っているのはすまなかったと思っておる。だが、美咲の人気がすさまじくて売れに売れてしまっているのじゃ」
「私の人気じゃねぇし。カピバラとかの人気でしょうが。っうか、このPOP売る気満々じゃんか」
「ここを管理しているのは財務大臣……リヴァじゃからのぅ」
「ねぇ。一つ気になるんだけど、なんで私だけ動物なのに魔王は人型なの?」
私は視線を左方向へと移す。
そこには魔王の肖像画を始め、彼がデフォルメされマスコットキャラクターとなったグッズなんかがある。
私が動物にデフォルメされているなら、魔王も何かの動物にデフォルメされてなければならないはずじゃん。
それなのになぜ普通に人タイプ?
だったら、私も人にすればいいじゃんか。
「元々、余が美咲のヌイグルミを作って持っておったのが始まりじゃ。それをリヴァが目を付けてのぅ。
余も美咲を売るような気持ちになって、許可をするつもりはなかったのだが財政が。すまぬ、美咲……」
「まぁ、しょうがないでしょ。作ってしまったんだし」
私は棚から一つヌイグルミを取ると、そのタグを見た。
剣に薔薇が絡まっている図。これが公式グッズだよという証。
剣は魔王、薔薇は私を現すらしい。
これは魔王が図案を考えたの。
魔王の名・ディアスは魔界にある三大武器の一つ、ディアスという剣から取ったんだって。そんで、私の美咲という名が薔薇の名前だから薔薇にしたそうだ。
「これ、そんなに売れるの?」
「かなり売れておる。第二弾ウーパールーパー、第三弾のナマケモノ案が出ているぐらいじゃ。
子供達の学校でも大評判らしく、本を出したいと問い合わせが殺到中じゃぞ」
「マジですか。魔界ってわかんねぇ……」
「美咲人気は留まるところを知らぬ」
笑顔の魔王とは打って変わり、私は微妙な気分。
だってさ、これ私が人気じゃなくてカピバラが人気じゃん。
第一私こんな風じゃないし。
そんな事を思っていると、突然第三者の声によって思考が中断されてしまう。
「――おお、こんな所におったのですか。美咲様っ!!」
かつかつとラバーソールの靴音を響かせ、従業員室の扉から出てきたのは一人の男。
オレンジとブラウンの斑な髪を立たせ、赤い瞳でこちらを見ている。
彼はこの魔界の財務大臣・リヴァ。
人間界の守銭奴という言葉が気に入り、座右の銘が守銭奴。
もちろん、リヴァも魔族なので容姿が整っている。
ただ、彼はそんなイケメン達が多い魔界でもかなり目立つ存在。
それは尖った耳にピアスがいっぱいついている上に、唇にもピアスが付いているため。
最初見た時、パンク系?って聞いたぐらい。
その後パンク系を調べてみたら自分好みだったらしく、以後そういった格好をしている。
今日も雲の巣柄の黒いシャツに、スタッズ付きな赤い血のようなネクタイに黒い皮パン。
「魔王様もご機嫌麗しく」
財務大臣は魔王に一礼をすると、私の方を見て口を開いた。
「美咲様、ちょうどお探ししていたんですよ」
「私もちょうど財務大臣に用があったの。どう言う事?私、許可してないんだけど?」
「そんな小さな事は置いておいて」
「はぁ!?」
そんな事じゃないんですけど!!これ、重要っ!!
「美咲様、今日バイトお休みでしたよね?」
「そうだけど……」
「なら急いで着替えて来て下さい」
財務大臣は手に持っていた紙袋を私の方へと渡して来た。
うっすらと空いている袋の口から覗くのは、何やらチェックの布のようなもの。
大量に入っているのかそれとも袋が小さいのかギリギリまで入っている。
「ねぇ、これ何?」
「――……リヴァ兄様っ!!」
尋ねようとしたら、突然かん高い声が耳に届いて来た。
まだ声変わり前の少年のようなソプラノで、歌でも歌いなよ!!とつい薦めたくなるような美しい声は、
だんだんと私達に近付いてくる。