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15  ひとまずお先に合流しました。

「ちょっと、キース!!もうちょっと早く助けなさいよ!!」

私は地べたに座り、全身を使って何度も深呼吸をしながらキースを睨んでいた。

私の呼吸はもう乱れまくり。

まるで100メートル走何本も走った気分。


だが、そんな私の抗議もなんのそのとばかりに、残念ながら彼には伝わってなかったようだ。

キースの目線は、がっちりと私の隣にいる人物に固定されていて微動だにしていない。

もうそれは瞬きすら許さないとばかりに、目を大きくカッと大きく見開いている。


ちょっと、私の存在無視ですかー?

まぁ、無理ないかもしれないけど……

だって私の隣の人物は、なんて言ったって魔界の妖艶姉さんこと・シリウスだから――


一方のシリウスはというと、キースの視線を気にしていないのか、それとも気づいていないのか、それは定かではないけど、「ごめんね~、美咲」と言いながら私の背中を何度も摩ってくれていた。

そしてシリウスと私の丁度中間ぐらいの真後ろでラムセが、まだグダグダと何かお小言を言っているが、聞きたくないのであえてスルーしておく。


「キース。シリウスに夢中になるのも理解できるよ?でも、人の話もちゃんと聞いてくれない?」

「……あぁ。申し訳ありません、美咲様。つい、『チッ、なんだよ、こいつ。羨ましすぎる』という妬みの感情ばかりが先走りまして。

言いにくい事なのですが、あの時は美咲様の事なんて眼中にありませんでした。まぁ、今さら別にそんな細かい事いいじゃないですか。

本望ですって、ほんと。だって、シリウス様の胸に顔を埋められたんですよ?」

「キース。申し訳まりませんでしたという言葉は、たしかに謝罪の言葉だ。だが、それを述べれば謝罪の言葉になると思ってるならば大間違いだからな」

誰がそこまで欲望丸出しの答えを期待したと思う?

してないだろ!!大人なら、時には相手を思って自分の心を偽れって!!


そしていくら憧れの生シリウスだからって、少しは助けを求めていたこっちを気にしてよ。

ラムセが止めてくれなきゃ、マジで窒息するかと思ったっうの。



ついさきほど、あの左右に分かれた男達の間を優雅に歩いて来たのは、ここにいるラムセとシリウスだったのだ。

そう。あの私を貧乳呼ばわりした声の主は、ラムセ。

まず助けに来ての第一声が貧乳とは、相変わらず良い性格をしている。


私と魔界の誰かが接触するのは、実に数日ぶり。

だが、その再会は感動の涙で濡れるものではなかった。

それは貧乳呼ばわりされた私がブチギレ、魔界に居た時と同じように二人していつものようにお互い口喧嘩が始まってしまったから。

だがそれもほんの数秒で終了。

それは私の顔が柔らかい弾力のある物に顔を押しつぶされるようにして埋めれらてしまい、私は言葉を発する事が出来なかったせいのためによる。


最初はなんだか、状況がよくわからなかったのよね。

だって胸ってあんなに弾力があって柔らかいんだよ?いや、知らなかった~。


念のために一応最初に断っておくが、私にも胸はあるさ。

だがら、ある程度は分かっているつもりだった。

でもほらなんていうか、私の胸と違ってシリウスの胸って大きさ――……あぁ。なんか私、今自分で自分を傷つけかけてしまった気がした。考えるの辞め。中止。

とにもかくにも、数日ぶりの感動の再会で感極まったのか、シリウスが「美咲~。本当に無事で良かったわ」と言いながら突然私を胸にかき抱かれてしまったのだ。


「いやぁ~。巨乳って凶器になるね。さっきは窒息するかと思ったわ~」

「ごめんね、美咲」

「あ、うん。もう平気。平気だから気にしないで」

あー。やっと呼吸が元に戻った。

少しの休息と深呼吸に私はやっと一息つけたので、手の平を合わせて謝るシリウスにそう答えた。

すると、その後間もなくしてキースが私に声をかけ、肩を叩いてきた。


「美咲様、美咲様!!」

「何?」

「紹介して下さい」

「……あぁ」

そうか。一応軽く紹介しておくか。

詳しくは、他の騎士達が来てから話せばいいし。

あいつらにも紹介しなきゃ。きっと驚くだろうな~。

私は対面させた時を想像して、少し笑いがこぼれた。


「え~と、ラムセにシリウス。こちらの騎士は、私の護衛をしてくれていたキース。ダルサ城の騎士なの。それで、キース。こっちは知っていると思うけど、ラムセとシリウス」

私は立ち上がると、お互い顔を合わせるように立っているラムセとシリウス、それにキースの間に立ち、交互に紹介した。


「うちの補欠が世話になったな」

「本当にありがとう。ここまで守ってくれたのって、坊や一人?」

坊や……?

シリウスの言葉に、私は首を傾げた。

シリウスの視線の先にはキースがいることから、相手はキースという事がわかる。

たしかに年齢がかなり差があるけど、坊やって言うには、ちょっと……

そんな事を考えていたが、キースが裏切りをしてしまい、思考が途中で停止して訂正する事が忘却の彼方へ消えて行ってしまった。


「はいっ!!俺が一人で美咲様をお守りしておりました」

キースはびしっと背筋を伸ばし、直立姿勢のまま、キリッとして表情でシリウスにそう話した。

ちょっと、あんたまさかの裏切りっ!?

そんなに、シリウスに自分を良く見せたいのかっ!?

アルトとか他の騎士もいたじゃん!!


「キース、あんた一人じゃなか――」

他の騎士のためにもすぐさま否定の言葉を口に出そうとしたら、それよりも大きな声でキースが言葉を発してしまった。そのため、私の言葉は途中で遮られる。

こいつ、絶対タイミング見計らっただろ……


「シリウス様。魔王様もご一緒ではないのですか?」

「魔王様は『志乃様』に看病して頂きながら、治療中よ」

「では、どのようにしてこちら側に?」

「志乃様に協力していただいて、志乃様から『アルサス様』にお願いしたの。アルサス様を動かせるのは、志乃様だけだから。本当ならすぐに美咲を助けに行きたかったんだけど、

茨の扉は魔王様の影響で不安定のため、私達の魔力じゃ空間を整える事が不可能。だから、アルサス様に一時的に空間の安定をお願いしたのよ。

魔界で魔王様に匹敵するとまでとはいかないけど、強い魔力を持つのはアルサス様ぐらいですもの。現役を退いてもあの方の魔力は素晴らしいわ」

「ねー。さっきから出てくる、志乃様とアルサス様って?」

「お前、知らねぇのか?魔王様のお父上様とお母上様だろうが。つまり、前魔王様とその妃様」

「……ちょっと、私、初耳なんですけど」

私が魔界に住んで一年以上経つ。

その間、魔王も周りの人からもそんな話聞いたことなかった。

どうしよう。私、挨拶してないよ……城で暮らさせて貰っているのに。


「ちょっと、これ無事に終わったら連れて行ってくれない?挨拶しないと」

「ごめんね、美咲。魔界の制約で魔王様の妻となる人は、相手方のご両親とは結婚式後じゃないと会えない決まりがあるの」

「何、その決まりごと」

「かなり大昔に嫁姑問題が勃発したからみたい。でも、安心して。アルサス様は志乃様以外にはとても厳しい方だけど、反対に志乃様はお優しい方なの。時々珍しい異界の服を着ていらっしゃるけど、とても可愛らしい方なのよ。なんだったかしら?異界の服で……そうそう、セーラー服!!あれがとても良くお似合いになって」

「ちょい、待てっ!!」

今、なんか聞き逃せないフレーズが耳に入ってきたぞ。

セーラー服って言わなかったか?セーラー服って。

魔王のお母さん女子高生説などいろいろと頭の中で憶測が飛び交っていたが、「ライズ!!」と周りが王子の名を呼び急に騒がしくなったので、私は一旦それを考えるのを放棄し、

視線をシリウスから、屈強な男たちがいる左方向へと変えた。


あの人って……――


視界に入ってきたのは、男たちが半円を描くように一人の女性の周りに扇状に集まっている光景。

その中心は、あのさっき遭遇した黒ドレスの女性だ。

彼女は私の視線に気づいたのか、ふと顔を上げこちらを見たかと思うと、急に跪いた。

その彼女の行動に、周りの男たちも同じようにして跪き始める。


えっ!?一体何事っ!?




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