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14 実際はそうだが、別の可能性だってあるじゃん?

またちょっと長めです(*_*;

「さすが美咲様です。やっぱ、持ってますね」

「やっぱり?私も思ったのよ、自分持ってるって」

腕を組みながら頷き感心するキースに、私は強気にドヤ顔を決め、そう強気で言ってのけた。

私ってば、今まで異世界召喚のテンプレオプションが付属されてないって思ってたけど、本当は持っていたかもしれない。

いや、持っていたな。これは確実に言えること。

だってあの第二王子をこの城下町で見つける確率って、砂粒の中から砂金を見つけるようなものじゃんか。時間がかかるのは覚悟の上な捜索だったはず。


それなのに、ほら――


私は体ごと右方向へと向けて動かし、その方向を見つめた。

その光景に思わず、口角が勝手に上がるのが自分でもわかる。

それはダークエメラルドグリーンの瞳の男が、こちらに視線を固定させながら一歩ずつ後ずさりしていく光景。

残念なことに彼の後ろは壁。

そしてさらに残念なことに、左右には建物が建てられているから逃げ道なし。

悪いけど、逃げられないわよ?


「なっ、なんだよ!?あんた達!!人をいきなり追いかけ回して!!」

蜂蜜色の髪を持ったその中性的な顔をしたイケメンは、ダークエメラルドグリーンの瞳を揺らしながらこちらを睨んでいた。

私の身長が160センチ。大体見比べてみると、彼は175センチだろう。


――ということは、彼も該当者。



彼と出会ったのは本当に偶然だった。

私があの黒服ドレスの人物を抱きとめていたら、声をかけながら走ってきたのがこの男だった。

「イズ」と黒服のドレスの人物を呼んでいたので、知り合いか何かだったのだろう。

でもそんな事、彼の姿を捕えた私達にはどうでも良かった。


だって、彼がディオ王子に聞いた特徴に該当していたから。

そういう状況なら、「これは捕まえて話を聞いてみなければ!!」って思うじゃん?

彼が王子の可能性もあるし。


それで話を聞こうとしたら、この人逃げたのよ。もう、激走。

逃げるって事は、何かある=(イコール)王子の可能性アリ。

っうことで、今までキース達と走って追いかけてきたのだ。

セーラさんも途中まで一緒に走ってたけど、途中で脱落。

もちろんセーラさんに何かあると悪いから、ちゃんと騎士を残してきた。


「貴方、第二王子のライズって人知らない?」

「……。」

私の問い掛けに、男の瞳が揺れた。

もちろん、それを私達が見逃すはずはない。

決まりだな、これ。


「さぁ、一緒に城まで来て貰うわよ?緊急事態なの」

ガシッと彼の手首を掴み、拘束をする。

すると、彼は眉をしかめた。


「なんで俺が?」

「ライズ王子に協力して欲しいことがあるから」

「じゃあ、俺じゃなくライズを連れて行けって!!」

「だから、貴方がその王子でしょ?さっき挙動不審だったじゃない。状況は深刻だって言ったでしょ?早くセーラさんの村を救わなきゃ!!」

「ちょっと待てって!!俺は王子じゃない!!王子は……――」

彼の声はそこで途切れた。

なぜなら、彼の声を遮るように複数の人の気配が近づいてきたからだ。

異変に気付き、私もキース達も同じ一点を見て眉をしかめた。


マジかよ……


私たちの後ろは建物があり行き止まり。

そして幅にゆとりを持っているが、左右は建物の壁があるため通行することは不可能。

だから真正面が唯一、通りへと繋がっている通路。

そこに只今、屈強な男達が塞ぐように横一列に並んでいる。

ナイフを持っている者から、指の間接を鳴らしているマッスルまで幅広いジャンル。

それを見て、私達が拘束している彼の顔色が明るく変化した。


「お前ら来てくれたのか!!」

彼はそう叫び彼らの元へと走ろうとしたが、私とキースに腕と手首をを拘束されているため、身動きが取れない。

彼の反応から察するに、どうやらお仲間らしい。


「おい!!あんた達、一体ライズに何の用だ?」

ちょうど列の真ん中にいたガタイの良い男が、一歩進むとそう口を開いた。

やっぱりこの人がライズ王子なのかと思ったと同時に、自分の置かれている状況を嘆きたくてしまう。


だって、この状況不味くない?

なんか、やたら空気が張り詰めているし。

もしかして、私たち誘拐犯とかに間違われている?


こんな所でむやみやたらに争いたくない。

それにはっきり言ってあの中心にいる人、筋肉質じゃなく筋肉なんじゃないか?ってぐらい腕とかかなり太い。

キースも騎士だから鍛えているけど、全然違いすぎる。

キースの腕2本分の太さだよ、あれ。


はっきり言ってマズイ。

これじゃあ、城で捕まった時の二の舞を踏んでしまう可能性あり。

ここは、なんとか穏便にやり込めなければ!!

私は素直に話をすることを選んだ。


「火急の用事!!とある村が大変なの、だから王子の手を借りたくて探してたんですよ。今、城下でディオ王子も捜索隊を出してライズ王子を探しています」

「そうかい。じゃあ、その証拠を出せ」

「はいっ!?」

「出せないのか?」

「出せないも何もそんなのないから!!もしかして、ライズ王子に害のある人物だって思われてます?私達、別に怪しい者じゃないですよ!?」

「そうですよ。こちらのお方は魔王様の婚約者様で、俺達はダルサ国の騎士。今は美咲様の護衛中です」

「……魔王様の婚約者だと?」

「はい。信じられないかもしれませんが、本当のことです。美咲様は魔王様の伴侶となられる尊きお方。ですから、ご無礼のないように」

キースの言葉に、全員の視線が私に集中する。

なんか、見定められているようで嫌な気分。

それはほんの数秒もかからないぐらいの時間だったけど、そう感じた。


「――おい。こいつらを捕えろ」

「はぁ!?なぜ!?」

悲鳴に近い声を上げる私をよそに、キース達は「やっぱりか……」という言葉を吐き出した。

もしかして、この平民服が原因か?

そりゃあそうだよね。魔王の婚約者が平民服着てるって普通思わないはずだもの。

事情知っている魔界の連中じゃないし。

やっぱり似合わなくても、あっちの貴族令嬢の方にすればよかったわ。

制服やスーツって、着用しているだけでびしっとなるしね。


「お前が魔王様の伴侶だと?嘘つくなら、もっとマシな事を言って誤魔化せばいいものを。もしかして、お前魔王様をご覧になった事がないのか?お前があの女――可憐のような容姿なら納得できるが、どう考えたって無理だろ」

「ちょっ!!またそういう話かよっ!!」

鼻で笑った男に対し、私は思わず突っ込んでしまう。

私はどうしても、そこで躓いてしまうのか?

毎度毎度のことながら、はっきり言ってかなり面白くない。


「待って下さい!!美咲様はこんなんですけど、本当に魔王様の婚約者様なんです!!嘘だと思うならダルサ城の王子に確かめて下さい」

「わかった。だが、あんたらの身柄は素性が明かされるまで預からせて貰うぞ」

「そんな時間はありません。さきほど美咲様もおっしゃいましたが、火急の用事があるんです。どうか、俺達を信じて貰えませんか?たしかに美咲様はあまりに平凡すぎて町を歩いてても、見失うぐらい溶け込めるぐらいのレベルですよ。一般的に考えて魔王様の隣に立たれる方は、魔王様と一緒にならんでも引けをとらないほど美しい方だと思うかもしれません。ですが魔王様はそのような姿形は関係なく、心の目で美咲様を見染められたのです」

キース。微妙なフォローありがとう。

欲を言えば、もう少しオブラートに包んで欲しかったな。


だが、キースの言葉は彼らの心に届かなかったらしい。

男の再度の指示に、その仲間達が一斉に私たちの方へ走って向かってきた。


「待って!!信じてよ。本当に私は――」

「おい、貧乳っ!!」

そう、本当に私は貧乳。……って、おいっ!!

突如として耳に届いてきたその貧乳という聞き捨てならない言葉に、私は眉間に力が入った。


「ちょっと!!誰よ、今貧乳って言った奴!!セクハラ!!」

「いっ、いや。俺じゃない!!」

ついキツク睨みすぎたのか、男は慌ててぶんぶんと首を横に振った。


しかもなぜ私が貧乳と知ってる?

わからないじゃないか、着やせしているかもしれないし、胸をさらしで巻いているかもしれない。

いろんな可能性があるから一見して胸がないように見えるかもしれないが、実際は大きかったって

事もあるはず。


……まぁ、私は自然ナチュラルに地ですが。


「じゃあ、誰!?そっちから聞こえたわよ」

「誰って言われても……おい」

男は周りの仲間を見渡すが、みんな首を横に振っている。

幻聴?いや、確実に聞いた。

こいつら、すっとぼけてんのか?


「――貧乳、お前勝手な行動してんじゃねぇよ。魔王様にご迷惑とご心配をかけさせやがって」

一人ずつ尋問でもしょうと思っていると、また再度貧乳という反応せずにはいられないフレーズを含んだ言葉が耳に届いてきた。

もちろん、さっきと同じ人物の声。

だだもう一度あらためて聞いてみると、どっかで聞いたことあるような気が……


私がなんとか思いだそうと考えていると、モーゼの十戒のように海が左右に分かれるかの如く、急に男たちが左右に避け始めた。

そして開かれた中心部に見えてきたのは、男女二人組。

彼らを見て、私は心臓が止まるかと思った。

だって、彼らがここに来るにはまだ早いはずだから。









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