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修行ですよ!

 俺とエニスがギルドの前に到着すると、なぜかオーラさんが待ち構えていた。よく見ると、その側には俺の鉄槌みたいな迫力のあるでかい剣が突き立っていた。1メートル半はあるし幅もすごいぞ20センチくらいあるんじゃないか?


「おはよう、ヨウイチさん」


 そして不気味なくらいの笑顔。なんか怖いぞ。


「おはようございます。いきなりですけど、昨日の熊はどうしてます?」

「それならこちらにどうぞ」


 オーラさんは剣を地面から抜くと、肩にかついで歩き出した。そして、ギルドの裏に来てみると。


「まさか!」


 あの熊がいた。エニスは驚いて俺の後ろに隠れるようにした。俺も驚いてたけど、表向き平気な振りをしておいた。


「町に入れちゃって大丈夫なんですか?」

「昨日みっちりと調教しました」


 オーラさんは熊に近づいてその頭を撫でた。熊はおとなしく撫でられていた。びっくりだな。


「この通り、もう危険はありません」


 俺も近づいてその頭を撫でてみた。熊は少し身を引こうとしたが、オーラさんが睨むとそのまま俺に撫でられた。


「タローだな、お前の名前はタローだ」

「タロー? そういえばまだ名前は決めてませんでした。その名前にしましょう」


 オーラさんも同意したので、熊の名前はタローに決まった。エニスは恐々とタローに近づいて手を伸ばした。


 タローはその手を舐めまわした。いったいどんな調教されたんだ、こいつ。もはや愛玩動物だぞ。


「さてヨウイチさん。今日あなたを待っていたのは別に理由があるんです」


 すごい嫌な予感。


「なんでしょう」

「あなたの実力を、私が直接確かめたいと思いましてね」


 そう言ってオーラさんは町の外に向かって歩きだした。俺はとりあえずそれについていくことにした。エニスも一緒だった。


 で、町からある程度離れた原っぱで、オーラさんは立ち止まって、剣を後ろに引きずるような感じで持っていた。


「さあ、いつでも打ち込んできてください」

「打ち込むって、えー、つまり」

「全力で私を攻撃しなさい」


 何もしないとひどい目に会わされそうな気がする。俺は手をかかげた。


「次元の鉄槌よ! その姿を現し我が手におさまれ!」


 俺は鉄槌を握ると、一気に走りそれを真上から振り下ろした。


 だが、オーラさんは剣をすごい勢いで振ると、鉄槌の横を打って無理矢理軌道を変えてきた。鉄槌は地面を思いっきり打った。


「そんなことでは!」


 オーラさんの足が俺の腹を直撃した。俺は後ずさって鉄槌を構えなおした。


「魔獣との戦いで生き残れませんよ!」


 そのままオーラさんは一歩踏み込んで剣を振り上げると、真っ向から俺にむかって振り下ろしてきた。


 俺はじいさんに昨晩言われたことを思い出し、イメージをすると口が勝手に動いた。


「フォーム! シールド!」


 鉄槌が光り、それは縦2メートル、横1メートルくらいの巨大な盾になった。俺はその盾でオーラさんの一撃を受け止めた。


 重い! 本当に人間かこの人?


「まだまだあ!」


 さらにオーラさんは剣を横殴りに振ってきた。俺はそれも盾で防いだが、オーラさんは力を入れて俺を押してきた。


 本当にすごい力だな、この人。でも俺の馬鹿力ほどじゃない。


「おらぁ!」


 俺は力ずくで剣を弾き返そうとしたが、それは空振りになった。オーラさんは俺の動きを察して、いなしたらしい。


 体が泳いだ俺に、オーラさんの剣が襲いかかってきた。でも、それは寸止めされた。


「やはり、あなたは実戦経験が乏しいようですね」


 そう言ってオーラさんは剣を引いた。俺も盾を消した。


「魔獣の中には知能の高い者もいますから、油断してはいけません。しかし、ヨウイチさん。それだけの力があれば、この状況を変えられます」

「状況を変えるって、どういうことですか?」


 俺じゃなくてエニスが聞いた。


「これまでは私は町を守るために留まってきましたが、これからはそうではなくなるでしょう。私とヨウイチさんの2人で交互に外の魔獣を討伐できれば、状況を変えることができるでしょう」


 それを聞いてエニスの表情が明るくなった。


「すごい! すごいですよヨーイチさん」


 そう言って俺の手を握って激しく上下に振った。


 あー、つまり、今までは何かあっても、この恐ろしく強いオーラさんは町を守るために外に出なかったのか。


 それで俺がこの町に来たから、攻勢にでることができるようになる、というわけだ。オーラさんは俺の顔を見て、大体そういうことを読み取ったみたいだった。


「わかってもらえたならそれでいいです。では、ギルドに行きましょうか」

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