最終決戦の始まりか?
それから二ヶ月くらいは大したことは何もなく過ぎ去った。もちろん例の魔獣との戦いはあったけど、それほどすごいものはなかった。
そしてある日、俺は腹に響くような地響きで目を覚ました。
地震かとも思ったが妙な感覚を覚えた俺は、すぐに身支度を整えてギルドに向かうことにした。
ギルドに入ってみると、すっかり身支度を整えたオーラさんが座っていた。
「おやヨウイチさん、おはようございます。あなたも何か感じたようですね」
まるで俺が来るのがわかってたみたいだな。
「さっきのあの地響きは何だったんですかね」
「わかりませんが、確認する必要はあります。すぐに出発できますか?」
「まあ、大丈夫です」
俺の返事を聞いたオーラさんは何か小さな包みと、まだ寝ているセローアを腕にかかえて持ってきた。
これでも起きないんだから大物だよ。
「なんですか?」
「朝食ですよ」
「えーっと、セローアは?」
「例の魔獣なら、感じ取るのは難しいでしょうが、無理というわけではありませんからね」
というわけで、俺はセローアをおぶって早速出発した。
まだ少し薄暗い中、俺は朝食を食べながら周囲を見回しながら歩いた。背中ではセローアが大きなあくびをした。
「やっと起きたのか」
「うっさいわね」
肩越しに眠そうな声がした。
「起きたんなら、自分の足で歩いてくれ」
「別にいいじゃない。魔獣を感知するのが私の役目でしょ」
「ここんとかはずればっかりじゃないかよ」
「そういう生意気なこと言ってると後悔するわよ」
セローアはそう言って俺から降りる気配はなかった。仕方なく俺達はそのまま地響きの原因を探すことにした。
でも、陽が昇る時間になってもなんの成果もなかった。
そろそろ戻ろうかと思ったとき、セローアが俺の肩を強く握った。
「ちょっと止まって」
立ち止まると、セローアは俺の背中から飛び降りて、首から下げているアミュレットを手にした。
数分後、セローアは顔を上げた。得意そうな顔してるな。
「何かわかったのか?」
「まあね、とんでもなくでかそうなのが近づいてきてるっていうか、うーん」
セローアは首をひねってうなった。
「どういうことなんだ?」
「不思議な感じね。近づいてくるっていうより、なんか段々存在が濃くなってくる感じっていうか」
「なんだよ、それ」
「わからないわよ。でも、初めての感覚なのは確かね」
じゃあそれがやっかいごとの正体なのかもな。たしか次元の歪みから生じる、とか言ってたし、セローアの説明はなんとなくそれらしい気がする。
「じゃあ、しばらくは何も起こらないのか?」
「そうとも限らないわよ。今朝の地響きのことだってあるんだし」
あれを聞いたってことは起きてたのかよ。ということはさておき、完全に姿を現してなくても影響があるってことは?
「どこからか、段々姿を現すかもしれないってことか」
「かもね」
部分的に姿を現すかもしれない巨大な魔獣、と言っていいのかわからないけど、そういうことかもしれないのか。
「まあ、今日のところは何もなさそうだな」
「そうね、帰るわよ」
俺達がギルドに戻ると、その前でザグが適当に体を動かしていた。
「ああ、戻ったね。今朝のあれの原因は見つかったかい?」
「いいや、何もなかったけど、セローアが面白いことを言ってた」
俺とザグは同時にセローアを見た。セローアはわざとらしくため息をついて口を開いた。
「しょうがないわね。この私がぼんくらに説明してあげるわ」
「よろしく、先生」
ザグは皮肉っぽい。でもセローアは気づいてないらしい。
「私の能力で、近いうちに今までにないような巨大な魔獣が出てくるっていうのがわかったのよ」
「巨大な魔獣? それはどこから来るんだい?」
「どっかから来るんじゃなくて、ヨウイチの考えじゃ、段々姿を現してくるかもしれないってこと」
「姿を現す?」
ザグはそう言って腕を組んだ。
「つまり、ある日気づいたらそこにいたっていうような感じで出てくるってことなのかな」
「わからないけど、多分そういうことになるんじゃないかな」
俺がそう答えると、ザグは肩をすくめた。
「それは手強そうだね。いきなり出現するんじゃ、対策を立てるのが難しそうだ」
それはそうだな。セローアが確実に予知できるわけでもないだろうし。
「まあ今まで通りにやっていくしかないだろ」
「だろうね。ああ、もうすぐオーラさんが戻ってくるから、それまでゆっくりしておいたほうがいいよ」
「言われなくてもそうするわよ。あんたも仕事しなさいよね」
「わかったよ、小さなセローア」
ザグはそう言うと、槍を持って歩き出した。セローアはその背中に舌を出してる。
それから、俺とセローアはギルドに入って昼食にすることにした。




