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じいさんからの贈り物

 俺はケインと一緒に、エニスと出会った森に向かった。森はそんなに大きなものでなく、薬草なんかもたくさん生えていて豊かだったらしい。


 でも最近例の熊、オーガベアーが出るようになって、ここにはあまり近づけなくなっていたらしい。


 つまり、エニスは無茶をしていたわけだけど、そのおかげで俺が楽できたんだし、あまり文句は言えない。


「確認されているだけで、オーガベアーは3体はいます。このせまい森にそんな数がいるのも異常なんですが、なにより、そのうちの1体は通常よりも2倍ほどのサイズらしいです」


 俺はケインの説明に適当にうなずいた。しかしあんなのが3匹もいて、1匹は2倍の特盛サイズか。やんなるね。


「それで、そいつらを探すのはどうすればいいんだろう」

「好戦的なので、森の中を歩いていれば向こうからやってくるはずです」

「なるほど」


 そういうわけで、俺とケインは森の中をぶらぶらうろつくことにした。運がいいことに、というか悪いことに、けっこうすぐに熊さんの気配がしてきた。


「近くにいますね、注意してください」


 ケインがそう言った直後、ちょっと離れた茂みから熊みたいなのが姿を現した。それは身長3メートルくらいのオーガベアーだった。


 俺は慌てず騒がず、ズボンのポケットから1枚の紙を取り出した。この服に着替える時にパジャマのポケットに入っているのに気がついた、あのじいさんからの送りものだ。俺はそこに書いてある通り、右手をかかげて、口を開いた。


「次元の鉄槌よ! その姿を現し我が手におさまれ!」


 思い切って叫ぶと意外と気持ちいい。そう思っていると俺の頭上の空間が光り、それは巨大なハンマーの形になった。


 俺がかかげた手でその柄をつかむと、光は一瞬で実体、巨大な鉄槌になった。柄の長さは大体2メートル。そのヘッドは直径で言うと50センチはあるという、まさに化物みたいな鉄槌だった。


 そんな代物でも、今の俺は片手で頭上にかかげていられた。どんだけ化物じみた怪力になってるんだ、俺は。


 ケインもオーガベアーも、突然の出来事に固まっていたけど、俺はそれにはかまわず、鉄槌を肩にかつぐようにして前に走った。


「おらああああああああああああああ!」


 で、それを横殴りにフルスイングした。木を砕いたけど手ごたえは特になかった。


 そのまま鉄槌はオーガベアーにぶち当たり、軽い手ごたえを感じながら振りぬくと、その巨体ははるか上空に打ちあがった。


 ああ、実によく飛んだな。ホームランだ。


「それがヨウイチさんの言っていた武器ですか」


 しばらくしてから立ち直ったケインは半分呆れたような顔だった。まあそれもそうか。


「そうだよ」

「これなら、あと2体も簡単に終わりそうですね」


 ケインはそう言うと歩き出した。と思ったら、地響きが聞こえてきた。ケインと俺は立ち止まって、地響きの方向に体を向けた。


 まさに大迫力。身長6メートルはあるオーガベアーがこっちに向かって走ってきていた。あんまりうれしくないぞ。


 俺は鉄槌を振り上げるようなイメージで低く構えた。そして、おおいかぶさるように襲いかかってきたそいつに向かって。


「さようならー!」


 振り上げる形でフルスイングした。鉄槌はオーガベアーの腹に直撃して、その巨体を浮き上がらせた。


 もちろん浮くだけじゃなく、さっきほどの勢いじゃないにしても、空高く舞い上がっていった。


 しばらくしてから地響き、そして静寂。完全にしとめたな。ケインの顔を見てみたら、もう驚いた顔はしていなかった。順応の早い奴だな。


「あと1体ですね」


 また2人で歩き出した。10分くらい歩いていると、俺が最初にこの世界に現われた場所、森の中の広場みたいな場所に到着した。


 そこにはなぜか、たぶん俺が最初に会ったオーガベアーが仰向けになってゴロゴロしていた。


 とりあえず俺は鉄槌を地面に打ちつけてみた。するとそいつは飛び起きて俺の顔をじっと見た。それからまた仰向けになって、俺に腹を見せた。


「これって、どういうことだ?」

「たぶん降参してるんでしょう」


 俺は腹を見せているオーガベアーをじっと見た。ペットにしては、ちょっと凶悪だし、でかすぎるような気がする。


 どうしよう。

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