魔獣討伐共同組合
服を着替えた俺はケインと一緒に町を歩いていた。
「これから向かうのは魔獣討伐共同組合、ギルドと呼ばれることが多いですね」
「ギルドっていうことは、なんか依頼を受けたりするアレ?」
「アレと言われてもよくわかりませんが、魔獣討伐の依頼は受けてますよ。ああここです」
ケインはドアを開けて中に入っていった。上を見てみると、ベッドの絵が描かれた看板がぶら下がっていた。どうやら宿屋と一緒にあるのかな? 俺はその建物の中に入った。
中は食堂のような感じでテーブルが並び、入口脇にカウンターがあった。ケインはそこに座っているおっさんに話しかけていた。
話はもう済んだらしくて、ケインは俺の方に振り返った。
「どうぞ、適当に座ってください。これからこの町のギルドの説明をしますから」
「わかった」
俺は一番入口に近いテーブルに向かった。まあ、他のテーブルには武装した人達が座ってたりして埋まってたし。
しばらくして、ケインは人を一人連れて俺の向かい側に来た。ケインと一緒に来たのは、ショートカットの女性、たぶん30歳くらい? ゆったりした服を着て、穏やかな顔をしてる。
「オーラ・パラーシャ、この町のギルドの責任者です。初めまして」
「宮崎要一、要一です」
「話は聞きました、ヨウイチさん。素手でオーガベアーを退けたそうですね。あの魔獣はとても素手で1人の人間が相手にできるものではないのですよ」
「まあそれは成り行きで」
「そして、魔獣を倒すための旅をしているというということですね。ぜひ我々に力を貸してもらいたい」
俺はとりあえずうなずいた。
「もちろん、我々もできる限り力をお貸ししますよ」
オーラさんはにっこり笑った。なんか黒いものを感じたような気もする。でも他に頼るところもないしな。
「もちろんです。それで、俺は具体的には何をすればいいんでしょう」
「ギルドには様々な魔獣の情報が集まります。魔獣の根源の情報もいずれわかるでしょう」
はてな、という顔を俺はしていたらしかった。
「魔獣の根源を倒せれば、今のような異常な魔獣達は出現しなくなるはずです」
ケインの助け舟だな、ありがたい。たぶんその魔獣の根源ていうのをなんとかすれば、この世界の問題を解決したことになるんだろう。そうすれば帰れる、よな?
「しかし、魔獣の根源というのは、まだわかっていないのですよ。今は出てきた魔獣を叩くということしかできていません」
オーラさんはため息をついた。まあ、そんなことだろうと思ってたけど、仕方がない。
「もちろん協力しますよ」
「それなら、早速ですが依頼したいことがあります」
あ、嫌な予感。
「あなたと遭遇したというオーガベアーを退治していただきたいのです。装備などのバックアップは我々がしますので」
ありがたい話しだけど、実は武器は必要ない。
「もちろん力を貸してもらえるのは大歓迎です」
オーラさんはケインを見た。
「ケイン、ヨウイチさんと一緒に行きなさい」
「わかりました」
ケインは立ち上がって俺のを見た。
「では、ヨウイチさんの装備を揃えてから、魔獣討伐に行きましょう」
俺はうなずいて立ち上がった。
それから、ケインと一緒に防具屋に向かった。
そこには色んな防具があったが、ケインと相談して選んだのは、鉄の胸当てと肘当て、それから膝当てに、皮のグローブとブーツという比較的軽装なもの一式。
まあ、今の俺ならプレートメイルを着ても重いとは感じないだろうけど、動きやすさと値段でこれになった。おごりで贅沢は言えないでしょ。
次は武器屋だけどさっきも言ったように、実は俺には武器は必要ない。なんだけど、買ってくれるというなら遠慮はしない。
そういうわけで、小さめの斧を選んだ。剣よりも短いし、腰に下げててもこっちのほうが邪魔になりにくいかと思って。
「本当にそんな斧でいいんですか?」
ケインは心配そうに聞いてきたが問題ない。
「大丈夫。俺の武器は他にあるから、これは予備というか、そういうものだよ」
俺の言葉に、ケインは不思議そうな顔をしたが、それ以上何かを聞いてこようとはしなかった。
「それでは、オーガベアーが現われた場所に行きましょう。おそらく遠くには行ってないはずです」
「よしきた、行ってみよう」