帰ってきた人達
それから大体一月後、早朝にまもるさんとケインが帰ってきた。
二人とも元気そうだったけど、とりあえず一日休んでもらってから、ギルドに集まって話を聞くことになった。
「さて、旅はいかがした?」
まずはオーラさんが口を開いた。
「旅はおおむね順調でした。行きに立ち寄った村でサンダーアントを相手にしたくらいです」
「首都に到着してからはどうでした?」
そこでまもるさんとケインは顔を見合わせた。
「なにかあったんですね」
オーラさんがそう聞くと、まもるさんはうなずいた。
「ビッグホーンとかいう魔獣が出て、それなりに苦労しました」
「ビッグホーン、ですか」
オーラさんはそうつぶやいて腕を組んだ。
「それは大変だったでしょうね」
「ええ。でもマモルさんのおかげでなんとかなりました」
ケインがそう言って、まもるさんのほうを見た。
あっちでも大活躍だったんだな。俺よりも強いんじゃないか?
「あれは倒すのはけっこう大変なはずだけど、どうやったのよ?」
セローアが口を挟んだ。
「マモルさんの奥の手ですよ」
ケインはそれだけ答えた。オーラさんは少し目を細めた。
「興味深いですね」
それからしばらく全員が黙り込んだ。
それを破ったのはオーラさんだった。
「それはいずれ見せてもらうとして、エセーナはどうでしたか」
それにはケインが答えた。
「元気でしたよ」
「そうですか。こっちに手を貸してくれれいいんですが、そうもいかないでしょうね」
まもるさんとケインは同意のうなずきをした。
わけがわからなかったので、俺は隣のセローアに小声で聞いてみることにした。
「なあ、エセーナって誰だよ」
「オーラさんの妹よ。首都で兵隊共を指揮してんの」
「それってけっこうお偉いさんだよな」
「まあそうだけど」
つまるところ、複雑な家庭の事情ってやつね。
「あなた達の期待するような面白い話はありませんよ」
オーラさんには聞こえていたようで、あっさり切り捨てられた。
後でケインかまもるさんに聞くことにしよう。
「では、ビッグホーンとの戦いの様子を聞かせてもらいましょう」
「はい」
ケインは返事をして説明を始めた。
聞いてみた感想としては、まあなんというか、まもるさんの強さはよくわかったな。
オーラさんは満足気にうなずいていた。
「よくわかりました」
それから俺のほうに顔を向けた。
「ヨウイチさん、今の話を聞いてどう思いましたか?」
「まあすごいなと、そう思いましたけど」
「あなたなら、勝てますかね」
「正直言ってわかりません」
「自信を持って、勝てると言えるようになってもらわなければいけません」
次に言われるのは予想がついてる。
「マモルさんも戻ってきましたから、これからは今までよりもさらに力を入れて訓練をしましょうか」
やっぱりな。
「私もパワードスーツの扱いにもっと慣れたいし、よろしく要一君」
まもるさんも楽しそうだな。
そこでオーラさんが立ち上がった。
「早速始めましょうか」
「いや、でもまだまもるさんは疲れてるんじゃ」
たぶん駄目だろうなと思いつつそう言ってみた。
もちろんまもるさんは笑顔を返してきた。
「大丈夫大丈夫。張り切っていこうじゃないの」
まあこうなるわけね。俺も仕方なく立ち上がることにした。
外に出た俺達は町外れに向かった。
「今日はマモルさんがやりたいようにやってもらいます」
オーラさんがそう告げると、まもるさんは文字通り、にやりと笑った。
「要一君と格闘戦がしたいですね」
「わかりました」
オーラさんはうなずいて、俺のほうを見た。
「どんなフォームを使うかはヨウイチさんに任せます」
それから俺とまもるさんは距離をとって向かい合った。
まずはまもるさんがパワードスーツを装着した。
「次元の鉄槌よ! その姿を現し我が手におさまれ!」
さて、格闘戦ならアーマーフォームだけど、ただそうするんじゃオーラさんに怒られそうだな。
「フォーム! アーマーアンドガントレット!」
通常のアーマーフォームよりもガントレットの部分が強化されたフォームだ。
格闘戦にはこれがぴったりだろ。
「いつでもどうぞ」
「じゃ、遠慮なく」
いきなりパワードスーツが急加速して突っ込んできた。
「おおっ!」
なんとか俺はその体当たりを受け止めたが、ほとんど吹っ飛ばされるような勢いで押し込まれた。
勢いを止めたと思ったら、今度は腕が左から横殴りにきたらしく、俺はそれをまともにくらって横に吹っ飛ばされた。
転がりながらまもるさんのほうを見ると、今度は俺のほうに跳びあがってきた。踏み潰す気かよ!
俺はなんとか立ち上がって、バランスを崩しながらも後ろに跳んだ。
次の瞬間には、俺のいた位置にパワードスーツが落ちてきていた。
あれに踏み潰されてたらただじゃ済まないだろ。相変わらず実戦的すぎる。
これは俺も本気でやらないと殺されかねないぞ。