優雅でない生活
とりあえず防具屋に行くことになった。
色々それっぽいものがたくさんあるけど、重いのは着ける気がしない。
「できるだけ軽いのがいいんだけど」
「それなら皮製のものがいいですね」
ケインは店員に声をかけて皮の鎧や手袋、ブーツをもってこさせた。
「サイズはある程度調節できますから」
すすめられるまま、私は皮の鎧を着けてみた。
なるほどね。これなら軽いし、動きもそれほど制限されない。グローブとブーツもそれほど悪くない。
「どうですか?」
「いいんじゃないの」
そういうわけで、鎧を買った後は武器屋に向かった。
いいなあ、このファンタジーな武器の数々。
いくつか手にとってみたけど、剣とかメイスとかは重い。正直、これは持ちたくない。
「できるだけ軽くて邪魔にならないものがいいんだけど」
「それならこれはどうですか」
ケインは三十センチくらいの、曲線主体のフォルムのナイフを持ってきた。
「これは軽くて扱いやすいですし、逆手でも順手でも使いやすいですよ」
まあ使う機会はないと思うけど。
「じゃあこれで」
これで私は皮の鎧とナイフを手に入れた。
まあ、この世界にあわせたファッション程度ね。
買物を終えた私達は、その後は町を適当に歩いてから宿に戻った。
「じゃあおやすみ」
私はケインと別れて自分の部屋に戻った。
まあ、明日に備えてじっくり休まないと。
そして翌朝。私とケインは荷物をまとめて兵舎に向かった。
今度は何事もなく中に入って、エセーナの部屋のドアを開けた。
「おはようございます」
部屋の主に座ったまま顔も上げずに挨拶をされた。感じ悪い。
「早速ですが、あなた達には町の周囲のパトロールをしてもらいます」
「わかりました」
ケインはさっと返事をして、まわれ右をした。私もそれに続いた。
「詳しいことは聞かなくていいの?」
「聞いたところで説明はしてもらえないと思います。とりあえず、城壁にそって町の周囲をまわってみましょうか」
思ったより融通がきくんだ。
まあそういうことなので、城門を出てから私はパワードスーツを装着した。
「ところでこの辺りに魔獣っていうのは出るの?」
「あまり出ないはずです。魔獣に悩ませるのは辺境の入植地ですね」
私はそれを聞きながら、センサーを広範囲に切り替えて周囲の状況を確認した。
「でも近くに不自然な反応があるんだけど」
「どういうことですか?」
「ここからまあ、少し離れた場所にどう見ても人間でも普通の動物でもなさそうなのがいるみたいなんだけど」
「それは確認してみる必要がありそうですね」
私とケインは反応のあった地点に向かった。
到着してみても、一見したところ、そこには何もいなかった。センサーを確認してみると、反応は確かにあった。
つまり、対象は上空。
「ケイン! 上!」
「そういうことですか!」
私達の上空には怪鳥としか言いようがない巨大な鳥が飛んでいた。
羽を広げた大きさは十五メートルくらいだろうか。
「どうしますか?」
「その前にあれは危険なやつなの?」
「少し様子を見たほうがいいかもしれません。特に害がないなら放っておいてもかまわないとは思いますが」
それで済むならいいんだけど、どうもそうはいかないことになりそうな気が。と思っているうちに、怪鳥はこっちに向かって急降下してきた。
「アタッチメント! マシンガン!」
左手にマシンガンを装着して、当てることは考えずにとにかく弾をばらまいた。何発かはかすったようだけど、急降下は止まらない。
そこでケインが私の前に立った。そして剣を抜いて自分の腕にあてて一気に引いた。
「我が血をもって、我が願いをかなえよ」
ケインが手をかかげると半透明の膜が空中に出現して、怪鳥を弾き返した。
これはすごい。
「今ですよ!」
「了解!」
今度はしっかり狙って、ファイア!
怪鳥にはうまく直撃したけど、まだ体勢を立て直して上昇した。なんてしぶとい。
そこでケインがもう一度腕を切ろうとした。
「ケイン! 下がって!」
私はケインと怪鳥の間に入るようにして前に出た。
「アタッチメント! 火炎放射器!」
マシンガンを火炎放射器に変えて、もう一度降下してきた怪鳥をよく引きつけてから、一気に炎を放射。
よし! 怪鳥は炎のせいで混乱して動きが止まった。
「アタッチメント! チェンソーブレード!」
右手にチェンソーブレードを装着して、足のジャンプブースターを最大出力で噴射して跳んだ。
チェンソーブレードは怪鳥の羽を片方切り落とした。羽根と血が飛び散って美しい。
そのまま、怪鳥と私はほぼ同時に地面に落ちた。もちろん怪鳥は墜落で、私は綺麗に着地した。
「これでさようなら」
私は火炎放射器をもがく怪鳥に向けて、引き金を引いた。
激しい炎が怪鳥を包んだ。なんとなく香ばしい香りが漂ってきそうな気がする。