都会に到着
私達は村を出てからは特に寄り道をしなかったので、予定通りに目的地に到着した。
城壁に囲まれていて、いかにも中世都市っていう感じで、けっこういいムード。
ここでパワードスーツを乗り回したら絵になりそうだなあ。
「マモルさん、馬車を厩舎に預けるので、降りてもらえますか?」
「ああ、そう」
私は言われるがまま馬車から降りて、辺りを見回した。
城門付近だけど、人通りが多くてにぎやかだ。
しばらくそうしていると、ケインが戻ってきた。
「行きましょう。まずは宿を取らないといけませんね」
「ここにギルドの支部はないの?」
「ここには兵士がいますから、小さな事務所くらいしかないんです」
それから私達は宿をとって、町に出た。
「これからどうするの」
「とりあえずギルドの事務所に顔を出してから、オーラさんに頼まれた野暮用を片付けます」
じゃあ、町の見物とかは明日以降か。
そういうわけで、私とケインはこじんまりとした建物の外階段を上っていた。
「ずいぶん小さい事務所なんだ」
「ええ、そうです」
そう言いながらケインはドアをノックした。
ドアは内側から開けられ、眠そうな顔をした女の子が顔を出した。
「ああ、ケインさん。おはようございます」
それから私のことを見た。
「あのー、そっちの方は?」
「こちらはマモルさん。最近ギルドに協力してもらってるんですよ」
「ああ、そうなんですか。私はアリア・イレンザです、よろしくお願いします」
手が差し出されたので、とりあえず握り返した。
「よろしく、アリア」
「さあ、狭いですけど遠慮なく中に入ってください」
私達はアリアに迎え入れられた。中は確かに狭い。アリアは椅子を用意してくれた。
「どうぞ、今お茶を淹れますから」
アリアは奥に引っ込んで、数分経ってからお盆にカップを乗せて戻ってきた。
「はいどうぞ」
私とケインはそれを受け取った。
「それで、突然どうしたんですか?」
「オーラさんから、マモルさんを案内するように頼まれたんです。この辺りのことをあまり知らない方なので」
「オーラさんがそう言ったっていうことは、何かわけがあるんですよね」
「他にも野暮用があるんですけどね」
だからその野暮用って何?
「ああ、まさかアレですか」
「そうです」
なんか二人とも暗い顔をしてる。
「そのアレっていうのは何なの?」
「それならすぐにわかりますから」
ケインの言葉にアリアはうなずいた。
「面倒は早めに片付けることにしましょうか」
そう言ってケインは立ち上がった。私も立ち上がってケインに続いた。
ギルドを出た私達はしばらく歩いて、いかにもな兵舎という建物の前にいた。
「これはいわいる兵舎?」
「そうです」
ケインはそう言って、見張りの兵士に何か手紙みたいなものを見せた。
兵士はそれを受け取って確認すると、敬礼をして扉を開けた。
私達は中に入って、どんどん奥を目指して進んだ。
そして一番奥の部屋の前に到着すると、ケインはドアをノックした。
「どうぞ」
中からはハスキーな女性の声が聞こえた。
ケインがドアを開けると、その奥には鎧を着込んだ、なんか見たことがある感じの人が座っていた。
「オーラさん?」
とりあえずつぶやいてみた。そうするとその人は目を光らせた。
「オーラは私の姉です。私はエセーナ・パラーシャ」
はあ、どうりで似てるんだ。
「お久しぶりですエセーナさん」
ケインは懐から手紙を取り出した。
「オーラさんからの手紙です」
エセーナさんはケインから手紙を受け取って、中身にざっと目を通した。
それから、私のことをいぶかしげな感じで見た。
「手紙によると、そちらの方が私達に協力していただけるということですが」
感じ悪い気がする。
「私はまもるです」
そういうわけで自己紹介。
「マモルさんですか。では早速実力を見せてもらえますか?」
エセーナさんは立ち上がって歩き出した。私とケインも一緒に歩き出した。
で、着いたのは広いスペースの訓練場的なところだった。
そこには兵士らしき人達がいて、訓練をしていた。
「さあみんな!」
エセーナさんはそう言って手を叩いた。兵士達はこっちを注目した。
「これから模擬戦を始める」
その呼びかけに兵士達が集まってきた。
「すぐに始めるから、武装して集合!」
そんなわけで、フル武装の兵士が集まった。エセーナさんは私とケインを見て、何かたくらんでそうな笑顔になった。
「さて、それでは見せてもらいますよ」
そういうことなら仕方がないか。というわけで、私はパワードスーツを装着した。
周囲から驚きの声が聞こえてきた。それはそうだ。横を見ると、ケインも剣を抜いて準備万端らしかった。
それにしても、あんまり訓練っていう雰囲気じゃない。ひょっとして、ここの兵士さんとギルドって仲が悪い?
まさかアタッチメントを使うわけにもいかなし、何も使わないでさくっと終わらせないといけないか。