帰還するぞ
そして翌日。
「ヨウイチ君のおかげでうまくいった。ありがとう」
アルケラさんは俺に向かって頭を下げた。
「役に立ててよかったですよ」
俺がそう言うと、アルケラさんは深々とうなずいた。
「とりあえずこの町はこれで大丈夫だ。君はオーラさんのところに帰るといい」
そういうことなら、ザグとイザリルに一声かけておかないとな。と思ってたら、二人がやってきた。
「やあ、あっちの町に帰るのかい」
「そうするつもりだよ」
「僕としてはここに残ってもらいたいくらいだよ。でもまあ、あっちのほうが何かと忙しいよね」
「そう。そして、ヨウイチ君の力はこれから色んな場所で必要とされるだろうね。大変だろうが、期待しているよ」
期待されちゃってるのか。まあ、色々動きまわれれば、この世界の問題を解決するのも早くなるか。
「ああ、頑張るよ」
俺はそう言ってギルドを出ると、エニスが手伝っている錬金術屋に向かった。
で、ちょうど店の前でエニスと鉢合わせした。
「あ、ヨーイチさん。どうしたんですか、こんなに朝早く?」
「いや、こっちでの問題は解決できたから、そろそろあっちの町に戻ろうと思うんだ。エニスは帰らないのか」
「そうなんですか。あたしもそろそろ戻ろうと思ってたところなんです。お父さんもこのあたりの調査は終わったみたいなので」
「それなら、一緒に帰ろうか」
「はい! お父さんにも伝えておきます」
「それじゃ、俺はセローアを誘っておくよ」
「出発は明日ですね」
俺はエニスと別れて、もう一度ギルドに戻った。
セローアはイザリルと一緒にお茶を飲んでいた。
「セローア、明日のことなんだけど」
「わかってるわよ、あっちに帰るんでしょ」
「ああ、エニスとタスさんも一緒だ。セローアはどうする?」
「もちろん私も帰るわよ」
「それがいい。戻っても頑張るんだよ、セローア」
「は、はい! 頑張ります!」
相変わらず、イザリルの前だと硬くなるな。
「出発は明日だ。遅れるなよ」
俺はそう言ってギルドを出た。
それから俺は適当に町をぶらつくことにした。お金はある程度あるし、買い食いでもするか?
と思ったけど、武器防具類を売ってるらしい店があったので、入ってみることにした。
「いらっしゃい」
なんとなく眠そうな顔をした店員が俺を迎えた。
俺はとりあえず見せに並んでる物を一つ一つ手にとってみて、じっくりと見た。
色んな武器と防具があるもんだな、これはフレイルで、あれはフルフェイスのヘルメット付のプレートメイルか。ちょっと着てみたいかも。
「お客さん、それに興味があるんですか」
眠そうだけどちゃんと見てるんだな。
「ああ、ちょっと試着させてもらいたいんだけど」
「いいですよ、着け方はわかりますか?」
「いや、わからない」
「それなら説明しますよ」
俺は店員の説明を受けながらプレートメイルを身に着けてみた。
なるほど、ある程度サイズの調整もできるようで、俺の体にちょうどフィットしてる。思ったより動きにくくないな。
「おお、ぴったりですね。これは材質もいいですし、おすすめの一品ですよ」
まあ、買う気はないんだけど。
そういうわけで、俺はプレートメイルを脱いだ。他にめぼしいものは。
「武器をお探しなら、これはいかがですか」
店員が差し出したのは湾曲した剣だった。
「これは切れ味抜群の逸品ですよ。打撃力には劣りますけどね」
なるほど、こういう剣もあるのか。
「じゃあ、これを一本もらえるかな」
「ありがとうございます。ああ、鞘はサービスしますよ」
そういうわけで、俺は斧の反対側にその剣を下げた。
俺は代金を払ってその店を出た。それからは、適当に買い食いしたりしてすごした。
そうしているうちに、質屋みたいなところで面白いものが見つかった。
「おお、兄さん、それは掘り出し物だよ」
俺の手の中にあるのは、小さな本で武器図鑑みたいなものだった。
「今なら安くしておくよ」
そういうことらしいので、俺は財布を取り出してその本を買ってみた。
これは役に立つかもしれない。これがあれば次元の鉄槌のバリエーションが増やせるかもしれない。
翌日、ギルドにエニスとタスさんがやってきた。俺もセローアも準備はできていたのですぐに出発した。
そして三日後、俺達はあの町に戻ってきていた。
エニス達は自宅に戻って、俺とセローアはギルドに向かった。
ギルドの外にはオーラさんが立っていた。
「そろそろ戻ってくる頃だと思ってましたよ。向こうの町はどうでしたか」
「色々おもしろかったですよ。目的もしっかり達成できたし」
「それはよかった。その経験はこれからも役に立つでしょう。セローアもお疲れさま」
「あれくらいならいくらでも任せてくれればいいわよ」
オーラさんはそれを聞いて何か含みのある感じの笑顔を浮かべた。
「とりあえず、しばらくはゆっくりしてもらいましょう。いつまでも、というわけではないでしょうがね」