でかぶつ退治
さて、小さいのはザグとイザリルに任せるとして、でかいロックゴーレムは俺とセローアで相手をすることにした。
「私があいつを止めるから、ヨウイチは一撃で決めなさい」
それなら、俺もこの槍をもっとうまく使いこなさないとな。想像力想像力。
「さあ、かかってきなさい」
セローアはロックゴーレムに向かって手招きをした。あのでかいのはそれに応じるようにして動き出した。
セローアは足元をちょこちょこ動き回りながら、的確に攻撃を当てていった。
俺は槍をかまえてじっとしていた。意識を集中して弱点の頭の中心だけを見る。
「伸びろ!」
動きが止まった瞬間を狙って、俺は頭の中心を狙って槍を伸ばした。槍はすごい勢いで伸びていって、頭を直撃した。
だが、貫けない。これだけじゃ力が足りないか。俺は槍を戻してかまえ直した。綺麗に決めるのができないなら!
「フォーム! 次元の鉄槌!」
頭をまるごと叩き潰せばいい!
「セローア、あいつをなんとか転ばしてくれ」
「やってあげるから、しっかり決めなさいよ!」
セローアはロックゴーレムの足の間を走り抜けて後ろにまわると、地面に手をつけ、衝撃波を使って飛び上がった。
そのままそいつの後頭部に手をあてた。
「倒れなさい!」
その一撃でロックゴーレムの体は俺のほうに倒れてきた。
俺は鉄槌を下から振り上げるような形でかまえた。
「砕けろおおおおおおお!」
そして倒れてくるロックゴーレムの頭に次元の鉄槌を下から叩きつけた。
手ごたえ十分、頭は砕けた。俺が一歩下がると、一瞬止まった巨体が轟音と共に地面に沈んだ。
「早く次行くわよ」
セローアは小さいほうのロックゴーレムに向かって走り出した。
俺もすぐにその後を追った。ザグとイザリルは奴をしっかり封じ込めていた。
「大きいほうは倒したようだね」
イザリルはかなり汗をかいていたが、俺のほうに笑顔を向けた。
「こっちは中々厄介だ。力は弱いが、動きが素早くてね」
話してる間にも、ザグは攻撃を捌いていた。
「エニス君の作ってくれた物をうまくつかう必要があるね。ヨウイチ君、あいつの足を止めてくれ」
何か考えがあるらしいな。
「フォーム! チェーン!」
俺はチェーンを小さいのに向かって投げたが、それはかわされた。機敏だな。
「それじゃ駄目だよ。まずは少しずつでもあいつにダメージを与えるんだ!」
「わかった。ザグ下がってろ!」
俺は今度はチェーンを横殴りに振った。
これなら動きを止めることはできなくても、確実に当てられる。
俺は連続でチェーンを振ってロックゴーレムを追い込んでいった。
「で、これからどうするのよ」
俺の後方でセローア達三人は相談を始めたらしかった。まとまるまで、こいつを食い止めようか。
「ヨウイチ君があいつを追い込んだら一気に仕掛けるよ」
「仕掛けるって、あいつの弱点はどこなのよ」
「体の中心だよ。どうやら大きいのとはちょっと違うらしい」
「なるほど、私とセローア君が仕掛けるから、ザグはエニス君の薬を使って奴の動きを封じる、ということだね」
「そう、そのチャンスはもう来たらしいよ」
俺はロックゴーレムを追い詰めていた。
そして、俺の横にセローアとイザリルが並んだ。
「あいつの弱点は体の中心だ。ヨウイチ君、あの槍を使うんだ」
そうだな、今度こそ。
「フォーム! スピア!」
俺が鉄槌を槍に変えると同時に、セローアが前に走り、衝撃波を放った。
さらにイザリルがあいつの周囲に壁を作って動きを封じた。
そこにザグが爆薬二つを投げつけた。さらに爆発でロックゴーレムがよろめいたところに、粘着剤を投げた。
よし、これで完璧に動きが止まった。
「伸びろ!」
俺は前にダッシュしながら槍を伸ばした。狙いは奴の体の中心!
「今度こそ貫けええええええ!」
手ごたえ、あった!
俺の槍はロックゴーレムの体の中心を貫いていた。
「戻れ!」
俺が槍を戻すと同時に奴は倒れた。
「これで終わったかな」
「そうらしいね」
イザリルは倒れた奴を確認した。
「やれやれ、思ったより苦戦しちゃったよね」
ザグが汗を拭いながら近づいてきた。そしてカバンから傷薬を取り出した。
「傷は早めに治療しといたほうがいいよ」
確かに、みんな大したことはないけど、傷は負っていた。
俺達は傷薬を互いに塗った。
「けっこう軽い傷があるじゃないのよ。ほら、背中も見せて」
俺はセローアに言われるがままに背中を見せた。
傷薬を塗られたところはひんやりとして気持ちがいい。
「はい、終わったわよ」
「いてっ」
セローアは俺の背中を強く叩いた。
「ザグ、これでここらへんの魔獣は片付いたんでしょ」
「そうだよ。とりあえずはこれでしばらくは安心できそうだ」
「これもセローアとヨウイチ君のおかげだ。ありがとう」
「は、は、はい。こんなことならいつでも言ってください」
そんな感じで、俺達は山を下りた。