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Thùndï-Æthàltâ  作者: 篠崎彩人
第一解「電気魂分解」
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虹ノ七環「それは小さな平穏無事」

 二人でアクション映画を鑑賞する事になった。これをサンディと共に脳内で観る事は可能だ、アイカメラを閉ざせば鮮明に再生して思い描く事が出来るし映画に対してのサンディの喜怒哀楽の籠った感情表現だったり考えだったりの共有も出来る。ただ、同じ様なやり方で無意識下の己のデスゲーム構築進捗を把握する事、こちらはどうにも叶わない。繰り返すがサンディ単体なら何となくそれを感知し見て取る事が出来る様なのだが実に歯痒い状況である。ブラッシュアップしたくても細部を知らなければそれも要領を得ない。これでいい、と言ってくれているサンディの評価頼みとしか言い様がない。

 そう言えば、映画を一緒に見たのはこれが初めてだったか。文学のオーディオブックライクな読み聞かせをしてくれた事は有る。と言っても女性の声なのか男性の声なのか分からない無声映画の属性も交じっているかの様なそれは実に歪で、つまり悪戯を仕掛けて来たのだと言うのはすぐに分かったのだがそれでも基本的に私達は一緒に彼の言う「おもちゃ」で遊ぶ事は無かった。「おもちゃ」、つまり娯楽に集中する時今まで私は私で外に居たし彼も彼で私から離れて脳内で過ごしていた。最初この映画は極限状況に置かれる主人公達を見る事でデスゲーム改良の糸口を掴む、と言う口実で見始めたのだが単純にクオリティも高く、見終わるまでノンストップの興奮の中で駆け抜けてしまい終わった時には二人して恍惚の吐息を漏らしていた。まあ吐息と言っても彼にして言えばそれは比喩と言う事になるが、それからデスゲームにはこう言う罠や仕掛けもいいねと映画を参考に話して盛り上がった。

 デスゲームは、半分は相手の感性で作られるそうだ。つまり、自分で自分の首を絞めると言う構図だ。それで無くては困る、100%私の感性だけに因り、かつ実態もいまいち朧気で掴み辛い雲の様にしか把握出来ない物で太刀打ちしようと言ってもそれは無理難題だ。ただそれはこちらにも言える事で、気を引き締めなくては自前の空想力に自身の首根っこを掻っ切られる恐れがある。勝つも負けるも相手と言うパズルのピースの嵌り方如何(いかん)なのだ、と言う事実は大分私の心を軽くさせた。自責点だけで敗北が決まるので無いのなら人類史における重要局面であろうこのデスゲームの勝敗への執着も捨て易くなるし敗北した場合でもその諦めも付き易い。理不尽な敗北、と言う言葉も浮かぶがそれより何より凡人の私の才覚だけが全てを決める訳では無いと言う閉塞感の無い風通しの良さへの安堵が勝る。庭に出る事ももはや雷のうるささのせいでまず無くなって来たし、日々を多く傍らで過ごす彼の言葉に耳を傾ける事も十分に私にとってはエンターテイメントと言えた。

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