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Thùndï-Æthàltâ  作者: 篠崎彩人
第一解「電気魂分解」
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第六環「クリアな青空」

「『平均値なのは分かったがそれでいいのか?』 これって”キー”になるかな」

 早速私は質問を繰り出す。向こうも帰って来た本当の理由を察していたのだろう、対応は迅速に行われた。

<おっ、それはいい”キー”になるね。じゃあ探して来るんでちょっと待ってね。……[この世界は分かり易い例だとスポーツにしてもアブストラクトゲームにしても過剰に優れた者が出て来てしまった。頂点を極めた世界は危ない、それが警告の形で私と言う歪みの結実存在をこの世に産んだと考えている。一旦人の在り方はリセットされるべきだ、中庸の頂点を極めた人間のデスゲームによって]て事の様だね>

 私にインプットされた断片としてのデジタル手記は必要最小限の内容しか書かれていないと言って良かったが、こう言った事を淀み無く答えてくれるのであれば彼自身がその生き字引で有り、隣に居て疑問をぶつけて回答を引き出すに相応しい逸材であった。他国のサイボーグも手探りの日々の中で(こと)にこう言う己の立ち位置世界の在り方などに関してはサンディ別個体に掛かりっ切りなのではないだろうか。ただ、こう言う相方としての私の質問と言う取っ掛かりが無いと彼はなかなか回答を引き出せないのだと言う。それが先程私達の出したサンディの口癖ともなっている《キー》と言う言葉と重なって来る。悪戯好きな彼ではあるがこの点に関して言えばそれはAIが挙動としてこちらの問い掛けに答えるまで自発的には関わって来ないと言うスタイルを想起させた。そう言う意味では持ちつ持たれつなので私もアンテナは終始張り巡らす様にしている。元サンディの超越した立場から描かれたデジタル手記の全容は、まだまだ読破までは果てしないと言えそうだ。

 先程の断片の解釈を試みる。その倫理的是非を問う生産性についてはもはやそこまで興味が無いが、裏返して言えば彼いや元サンディが悪の頂点として生まれてしまったのだ、卓越したスキルを持ち時代の寵愛を受けた者達の足元から伸びる切っても切り離せない影として。セカンドワーストと言うか、最悪核で滅びた後の石と木の棒の世界大戦だって冗談抜きで有り得る訳だから今この状況が考え得る限りの底辺だとは思わない、まだ行く所まで行き着いた文明の体裁は取り繕われていると私個人は考える。ただ、気掛かりも有る。中庸を極めし、人間、なのか、そう私は未だに人間と呼べる者なのかと言う点だ。そうだから大丈夫だよ、と言う気休めが欲しいのでは無いがこればかりはこの先勝ち上がったとしても振り払えそうも無い。何故なら、[自問自答以外に解消のしようの無い事]として片付けられてしまうからだ。確かにそうだと思うが、もし未来が見えている絶対神の手記であるならば、何かしらのアクセス権限の問題でのバグでこう言う解が返って来るのだ、とそう思いたい。人の魂を宿すサイボーグにはサイボーグなりの開けたクリアな青空が在ってもいいのではないか。

「雷さ、止むのかな?」

 青空が欲しい、と言う部分を微妙に掛けてそう問うてみた。向こうもそれを察してかどうか、

<止むといいね。でも雷が繋ぐ間柄だったりしてね、案外私達>

 と茶化した返事をよこした。

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