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Thùndï-Æthàltâ  作者: 篠崎彩人
第一解「電気魂分解」

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第四環「不可侵領域」

 施設内に留まりサンディとのリンクが強くならなければサンディが顕現しコミュニケーションを取る事が出来ないと言うだけで、脳内のサンディは別に庭での平時大人しくしていると言う訳では無い。私の脳には数々のエンタメ情報が封印されていると言ったが人間の記憶だけで完全な情報保存など叶う訳が無い以上これはつまり彼の物置として私の脳機能が行使されていると言う事で、私と意識共有が無い時間帯には何に接しているかは分からないにせよそれらの電子おもちゃ箱をひっくり返して遊んでいるのだそうだ。ただ庭から帰って来た時にいちいち私の脳がとんでも無くとっちらかった印象に捉えられる訳でも無いので、或る意味でおもちゃ箱をひっくり返すと言うのは言葉の綾なのだが、まあ本人がそう言う表現をしているのだからサンディの不可侵な個人領域はあまり整然と美しく飾られている訳では無いのだろう。それはともかく凡人だった私は暇つぶしもそう上手くやって居た記憶が無いので、巧みに寄せ集められた(貸し出し中とばかり抜けがアトランダムに有るのでそれがいわゆる使用中候補のおもちゃ、か)映画、音楽、文学の類いには救われている。なんせここにしか居られないのだからほぼ家猫で有り、退屈しのぎが出来るのならばもはやその解消手段はなんでもいいのだ、むしろ私より世界をより知っていると言っていいサンディの神がかった傑作選としてのチョイスは退屈しのぎと言うには得難い行き過ぎた代物、天の恵みとさえ言えた。

 脳内のサンディを映像や音声で感じる事は無い。私なりに投影している男性としての姿は有るがそれに従って脳内で彼が動いてくれる訳では無い。そう言う意味でもサンディは不可侵だ。ただ考えを共有してくれる概念体としての彼が私のアクセス権限では許されていると言う程度に留まっているに過ぎない。デスゲームが始まったらきっともっと触れ合えるよ、とサンディは可笑し気に言って見せるがあまり片付け下手で野蛮なエンタメオタク野郎と接してどうなるとも思えない。そしてこの脳内において剛速球でぶつけられている筈の中傷に対してもサンディは怒るでもなく何も言って来ない、何か余裕の裏の隠し玉が彼にはあると言う事なのか…。もしかしたら、と言う当てずっぽうで奴は女性なのではとは思うが、いやそんな脳内で異性がうろうろしているなどと言うのはたださえ人類の終局での代表として追い込みを掛けて来ている神の悪趣味さがあまりにあまりなので考えない様にしている。うろうろと言っても考えの共有しか出来ない間柄ではあるが、こればかりは気構えの問題である。神イコールサンディと言う気掛かりな発想もあるが、ここでは石ころの軌道からデスゲームから何から何までの行く末を把握している絶対神の事としたい。

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