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Thùndï-Æthàltâ  作者: 篠崎彩人
最終解「五分の魂」

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第無環6.z「人の素」

挿絵(By みてみん)

 私は蒼白い光が照らす一本道に一人立っていた。まだ何かが始まってみないと分からないが、隠蔽の盲導と呼ぶには光が温かく穏やかで、灰の暴徒と呼ぶには周囲が静かで落ち着いている。スゥすらも関知していなかった深層心理に属するステージなのだろうか。何も分からないまま、私は歩を進める事にした。

 すると人影が在った。右に男性、左に女性。私はサイボーグホログラムを見ていた関係で面影を読み取った、これはアメリョッカ氏とエゴだ。エゴの方は初見だったがアメリョッカ氏を識別した時点で自然とそうなって来るだろう。スゥより若干小柄で、銀髪と言う出で立ちだ。アメリョッカ氏は私より背が高い、平均値とは言え国柄の事も有るので然もありなんと言った風情か。アメリョッカ氏は話し掛けて来た。

「おめでとう、ヒノモト君。君がデスゲームの真の勝者だ。君の様な人物と初戦を迎えられた事、誇りに思うよ」

 これは甘言で私を惑わかす幻で構成された会場なのか? いやそれは穿った考え過ぎるか、とりあえず今は乗っておく事にする。

「勝者? つまり、何処かのタイミングで太陽球が発生すると言う事でいいのかな」

「君は他にも戦い合って来た同胞が居るだろう? それだけでは無く、同時並行的にサイボーグをやって居た仲間が沢山居る。彼らが全員集うその時まで、この場が閉じる事は無いと思うよ」

「そー言う事。太陽球だなんて焦らず、今は勝利の余韻を味わっていると良いよ」

 エゴもぴょんぴょんと跳ねながらアメリョッカ氏に同調している。小柄と言うより、見た目通り子供っぽい様だ。

「なるほどね、それは大仕事だ、こんなおじさんが皆の祝福を受けられるパーティ会場に招かれるとは。まあパーティ会場にはちとドレスコード違反かも知れんがね、こんな血生臭い姿では」

 と健在な左腕だけを上げお道化てみせる。

「本当にお疲れ様。私達はこの場で見ているだけが精一杯だろうが、祝意だけは表させて貰うよ」

「おめでとーだね。後は三次殺しって名前はポイ捨てしちゃって、地球再建の道をゴーだよ」

 と言いながらグーパンチを私によこすエゴ。

「RPG風に言うなら残HP1か2位なんだから勘弁してくれ。まあ任された。後は俺達に委ねてくれ、貴方の世界の如く雨降って地固まるを実現してみせるさ、何十代後の人類の話なのかは分からんがね」

 俺達、とは言ったがふと暗い影が私の脳裏を掠める。スゥは、どうなったのだ? 売り言葉に買い言葉でなんとなく言ってしまったが、残ったのがハク組だけなら自殺されて全てが終わる道もまだ有り得るのでは無いか。その疑問に誰かが答える事は無く、アメリョッカ氏とエゴの残像は消えてしまった。私は歩き続けながらスゥの事を考えた。スゥはハクを説得したかったのだろう、がそのスゥも最後の方では弱音を吐いていた。いや、私まで弱音を吐いてどうする。今出来る事は進む事、祝意を拾い集める事。その拾い集めた先にもしスゥが立っていれば、それでいい。居なくても、それはそれで探し続ければいいだけだ。


 先の方でまた別の人影。フラニシュ氏とパルムは男女が先程の組と入れ替わって居た。パルムは長身短髪でスゥよりちょっと年が行っている印象だがそれでも若い。

「フラニシュさん、貴方は女性だったのか。腐乱臭界はキツかったよ、正攻法で勝つ方法が分からない位には」

「いえ、貴方の蟲の世界の命刈り取り性能には驚かされましたわ。何はともあれ、デスゲーム終結に導く様な強靭な精神の方と相まみえる事が出来たのは私の一生ものの誇りになりました。今はただ、勝利の美酒に酔いしれてしまえばいいと思います」

「それにしても貴方がたも色んなステージを考えたのだろうが、全て水泡に帰しましたね。思ったよりデスと言う言葉の重さに耐えられる様お互い出来てなかったらしい」

「えぇ、本当にそうですね。ゲーム道中パルムから聞いたのですが、(フラワー)未遂、フレイムシュート。奥行きはまだ色々有ったと言う事です」

(フラワー)未遂か、なんともそそられる名前だ、まあ命の花弁とでも考えるとあまり想像したくは無い何かが待って居そうではあるが。それはそうと貴方に聞くのも可笑しいのかも知れないが、ジィゴク組はどうなったんだ?」

「彼らは自分達の世界で二つ目の蒼の球を触れずに終了しています」

 とパルムがここで助け舟を出す。

「それで勝者が俺達側と言う事なのか。ここが特殊な空間なのは分かるが、そう言った事ももう共有されているんだな」

「貴方も知っての通り私パルムは元々絶対者サンディの一つの魂から派生した命ですからね。遍く場所を越えて実現して来たデスゲームの最後の地がここなのですから、そう言った事もまた自然の摂理の中にある事かと」

「なるほどね。彼らがスゥの手助けをする気になってくれればいいのだが。彼らは生きているんだよな?」

「はい、我々とは違って」

 悲し気に目を伏せながらフラニシュ氏が呟く。

「そうか。ではまた会える日が来る事を願って。俺もすぐやる事やったらそちらに行くだろう。あまり悲しまないでくれ、同胞」

「ありがとう、そしてさようなら、優しい方」

 フラニシュ氏は手を振って、パルムは敬礼で道の先を行く私を見送ってくれた。


 先に行くと三つの人影だ。全員女性。一人は見間違える筈も無い、スゥだ。周りの二者は今までの法則で言うとジィゴク・ハク組だろうか。祝意を抱いていないせいか微動だにしない、まるでスタチューの様に。

「お帰り~ニィロ」

「ニィロ? また妙なあだ名を作ったのか?」

 私は正直健康そうなスゥを見てまた感動で泣きそうになったのだが、よく考えれば今までのアメリョッカ組フラニシュ組とて亡くなった者達が幻として出現したに過ぎない。死後の世界では無いかと言う興醒めの考えはどうしても有るので涙は取っておく。本当のスゥに出会えたと確信するその時まで。

「うん、ニィロ。これならワンちゃん要素も盛り込めてかつ二つの名前も無理無く入っている。三次殺しデスゲーム世界と言う、バベルの塔を否定するz軸不在の”二”次元化”ロ”ードを駆け抜けた証の”虹色”の名前だよ、今までの曇天の空模様に想いを馳せるならね。ニィロも言ってたよね、雷、止むのかな? ってさ。きっと戻ったら快晴の空だよ」

「なるほど、そこが俺の名前のゴールと言う訳か。結局ワンコの呪いからは抜け出せなかったな」

「まあいいじゃん、私だって時々はサンスゥ呼びしてくれていいよ、ギブアンドテイクだね」

ワン(いち)コで言うなら1と9x9位の差を感じるのは気のせいだろうか」

「あはは。それにしても百合もOKey、かなぁ? 偏愛だとは今でも思ってるけど、これから会おうと思っている相手達だもんね、まずはいい印象を抱く所から始めないと」

「会うって事は、お前は生きているのか?」

 ブッと吹き出してしまうスゥ。

「笑う事ないじゃないか。本気で心配したんだぞ」

「ごめんごめん、逆にその本気さがそんなボロボロの身体のニィロから見られた事が嬉しくってさ。ここは人の素界、って言うらしい。私も感知出来なかった範疇に潜んでたラストオブラストの隠し玉だね。私はもうこの世界に来た段階でフル充填だったよ。ニィロ、私達電気生命体の受肉を叶えさせるキィミが勝つ事が人類の勝利条件だった。ジィゴクが勝つ事が三次殺しと言う概念の勝利条件だった。端的に言うとこうだね。だから多分打ち克てる、今の私、いや私達なら。ハクが抱いている怨念めいた信念に」

 私達なら、の所でスゥは手を差し出して来た。生身のスゥとの握手はこの時までした事が無かった。私は比較的綺麗な左手でそれに応えると、眩い太陽の輝きが周囲を包み込んだ。そして明るくなったこの舞台の隅々まで、百を超える国々のペアが拍手をしながら私達の握手を見守ってくれている事に気付く。一旦は消えていたアメリョッカ氏、フラニシュ氏組の姿も確認出来た。スゥはニコニコしながら空いている片方の手を振ってそれに応えているが、右腕が使い物にならない私はそれをゾンビの様にぷらんぷらんさせる事位しか出来ない。それを見兼ねたスゥはしゃがんで私の右手との握手をし始めた。これなら私も左手を振る事が出来る。周囲の祝意に応えていると涙が零れて来た。スゥは、生きている。勿論現実世界に戻って全てが幻だったとなる可能性も有るが私にはどうしても今優しく右手を労ってくれているスゥが幻とは思えない、いや、思いたくない。

「泣き虫おじさん」

 スゥの厳しい一言が飛ぶ。

「いや、泣き虫お父さん。ニィロは第二のニノパパだよ、私にとって」

 その落差にやられて更に鼻水まで出て来た。もはや父親の威厳もクソも有ったもんじゃない。だが、今はそれでいい。カッコ付かなくても、ボロボロでも、元気なスゥが微笑んでいればなんでも構わない。私は太陽光の眩しさが全てを包み込み出す中、いつまでもいつまでも左手を振り続けたのだった。気のせいだろうか、ハクとジィゴクの口の端も僅かに上がっている様な雰囲気を感じたのは。何かを企んでいると言う事では無いとは言い切れないが、周囲の熱気に感化されての事ならこんなに嬉しい事は無い。なんせ今現実世界に残って居て唯一言葉を交わし合える同胞なのだから。

二人とも服装がおかしいけどイメージ的にはジャストフィットでしたので

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