第無環6.b「地獄の門」
そんな事を考えている内百足の意識の快復が有った様だ。百足は自身の身体に結び目が出来ている事に気付いた様だがそうして来た犯人である私に対する憤怒なのかそれともただ単に血を吸いたい吸わせてくれと言うその半狂乱状態の続きなのか判然としないが結び目をどうこうしようとするでも無く私に一直線に向かって来た。だがその五体不満足な体でどうこう出来ると思われても困る、と私はサッカーボール状の結び目を力の限り蹴り飛ばして自己の20m圏内と言う陣地を守る。その度に百足は激しく悶えるがそれをお構い無しで割と即座に活動を復帰させて私に迫り来る。この応酬で時間を潰しながら私は結び目ボール制作のアイディアへの自画自賛、そして頭上のスゥの死闘への様子見をしていた。
スゥは段々速度のマックス値が落ちて来た様でひたひたと迫るカチカチ鳴って居る嘴もどきにあわや捕まるかと言う場面が増えている。相手を苛つかせる作戦とも見受けられるがその側面が段々縮小傾向に有るだろう、幾ら電気の空飛ぶ超人とて限界は有る。むしろ守られるべきお姫様、と言う言葉を借りるならそれが冗談では済まない段階に来ているのかも知れない。目の前の蹴鞠状態の芋虫野郎の弱体化含め、そろそろ潮時だな、と考えた私は20mの距離を縮めてみた。15m、何も起こらない。12m、まだだ。
「シロ、そこはまだ待てだよ!!」
スゥの絶叫。あ、何かとんでもないミスをしたなと思ったが10m地点で地獄の門は開いてしまった。二匹目がズズズと亜空間から羽根を閉じた、まるで蛹が羽化した直後の様な形態で現れた。しかしそんなツメが甘い弱弱しい存在が今この場に現れる意味など有る筈も無く、既に準備万端と言った出で立ちで羽根を巨大な団扇の様に四枚振るっている。その風圧だけで10m地点から押し戻されそうだ。そして彼はこちらをちらりと見やると、迷う事無くスゥの下へ飛んで行った。気を引くどころの騒ぎでは無かった、私は罪悪感に苛まれた。二匹がスゥを追う状態を作り上げてしまったのだろうか、もうこの場に希望は残されては居ないのだろうか、と圧し潰されそうな心の重圧に耐えていると私を休ませるつもりは無いとでも言った体でスゥを追って居た一体が私の目の前に降り立った。片目が潰れている上もう片方の目の周りも火傷の跡が多数有る。彼女の狙いは失明だったのだ、それを未遂のままに標的を図らずも横取りしてしまった様だ。そして足の痛み、唖然として上空の蛾同士のバトンタッチ劇に見入って居たのが失敗だった、諦めなかった半芋虫状態の百足がようやく二度目の噛みつきに成功したのだ。
なんで地上おんねんw




