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Thùndï-Æthàltâ  作者: 篠崎彩人
第一解「電気魂分解」
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第SUN環「石ころの行く末」

 この施設外はまずまず散歩にも向く景観が揃っている。オイル紅茶を流し込んでばかりで気が紛れるでも無いので、私はデスゲーム構築をしている時間に疲れるとこうして施設を取り巻く庭に出向いて気分転換をしている。

 小さな滝をイメージした模型、川のせせらぎのBGM、虹の煌めきを映し出す装置、花に集う蝶や蜜蜂のホログラム、人の賑わいの録音、田園風景の映像投影。歪と言えばそうだが、私のノスタルジーを刺激するこれらの庭園の構成要素は例えて言うなら生前の人々が丹精込めて作ったアカシックレコードと言った風情だ。これらを作った人々は全員死んでしまったのだろうが、これだけの美意識を凝縮する事の出来る国を同じくする人々の創意工夫のなんと愛おしい事か。私はデスゲーム構築への想いを新たにする。

 サンディ曰く、<勝ちに行け>と言う事だ。容赦はするな、侵入者を全員駆逐する勢いでお前の発想力の全てを見せてみろと。サンディはまだ多くは語らないが、デスゲームと言う言葉の裏に有るのは勝者と敗者だ。多分近々国を代表する生存者サイボーグの悪意の籠ったデスゲーム会場での暮らしが今の暮らしと置き変わる形で私やサンディを支配するだろう。だがそれに負ける訳には行かない、それは恐らく相手としても同じ条件であろうからだ。必ず不備、突破口は有る。今出来る事は国の名誉を守る為のデスゲーム構築における発想の熟成だ。滝からの身投げ、川流れ、肉体の八つ裂き、化け物サイズで生き血を吸う蟲、死へと誘う阿鼻叫喚、十全たる牢獄。先程の庭のアカシックレコード群に準えて言うならそう言った元も子も無い仄暗い発想を寄せ集める事が恐らく私やサンディの生存確率を上げる事に繋がる。果たしてそのデスゲームの末に生きた証を掴む日が来るのかは分からないが、今はそれに一心不乱に取り組んでみたいと言う心持ちだ。それは子を成せなかった人生の代償行為かも知れないが、サイボーグにもそれが有るとして走馬燈で振り返った時に後悔の無い一時一時(いっときいっとき)を過ごしたいものだ。

 私は庭の散歩を早々に切り上げるべく踵を返す。サンディに聞きたい事が出来たからだ。サンディに連絡出来るのは施設内だけと決まっている。独りになりたい時はこうして自由を確保出来る庭での静かな時間が約束されているのだ。帰りの道すがら、路傍の石ころを蹴る。石ころを蹴る軌道とは物理学的な観点で言えば蹴る前から決まっているが、それを正確に把握する事は蹴る本人には難しい。これからの全ての出来事は、この石ころの軌道の様に行く末が決まっているのかも知れない。だが今は何も知らない者なりのその無軌道さをエンジョイしたいと言うのは、赤ん坊サイボーグとしての他愛もない我が儘なのだろうか。

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