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Thùndï-Æthàltâ  作者: 篠崎彩人
第一解「電気魂分解」
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第日環「個体ヒノモト」

 私の名はヒノモトと言う事になる。この元地球には様々な国が有ったが、どうやら国ごとに人は一人しかサイボーグ転生出来なかった様だ。サンディは言う、<ニノは極々平均値だった>と。ニノとはサンディと言う、太陽と言う意味でも日々と言う意味でも”日”を司る神の加護の下に居る私の愛称である。第二の名、と言う事でも有るらしい。日とは”火”の球太陽、日とは”ニ”ンゲンの心の灯火。そういう発想で行くと本名と愛称とで両方を含有出来ている感じがして悪い気はしない。

 平均値と烙印を押された私の生身時代の素性についてだが、まあまあ分からないでもない、どっちつかずだ。かつて恋人は居たが結婚はしていなく、免許は持って居たがペーパーで、学力は中ほど、容姿も悪くは無く運動はそこそこ出来たが眼鏡を掛け、小太りだが青年時代は瘦せていた。そう、壮年と言うにも若く青年と言うには年老いている、人生の年輪的な意味合いでもそれはどっちつかずなのだった。勿論時勢が導いた物もあって時と場合によっては私の属性が中庸を逸脱する恐れは有るし、それに要素要素で基準値以上基準値以下と言う判定は有ったろうが、それは置いておいてもその総合値としての普通さが或る意味で全人口の中で研ぎ澄まされ続け、私はこのヒノモトの名を国から継承する特殊な一個体として生まれ変わったらしい。

 私は今施設に居る。これは大多数の人類を感電死させる前に使役して作らせたある種の機械としての生命維持空間で、ここで私はある事を続けている。それは元居た国に纏わるデスゲーム会場を構築する事だ。と言ってもまだそのデスゲームがなんであるのか経験した事が無くまた直接的な試験運用をする訳にも行かない以上、ああでも無いこうでも無いと空想を膨らませていると言うのと大差無い気がするのだが、サンディとしては<それで十分>なのだと言う話だ。まあ脳内を自由に揺蕩えるサンディの方が私の脳裏になんとなく描いているデスゲーム会場の出来栄えを俯瞰出来るからこその余裕の提言なのだろうが、それを感覚で捉え辛い自身としてははいそうですかと簡単に頷いていい物かはよく分からない。私は割と国を愛していたし、それでも中ほども中ほどの自分の人生に満足し切って居た訳でも無い。そんな自分がデス、人ひとりを死に至らしめるなどと言う極限状況を脳裏とは言え構築出来る物なのだろうか。

 サンディは<まだ時間はある>とも言っていた。サンディ相当の存在同士での定期連絡は無い様だがそれでもこうしてサンディ別個体は己の宿主にデスゲーム構築を大なり小なり働き掛け出している筈で、それは今始めるに遅すぎると言う事は無いんだそうだ。時間があると言う事は、余暇を楽しめる余地も有ると言う事だ。幸いこのサイボーグ脳のデータベースには私がまだ触れた事の無いエンターテイメント情報が過多と言って良い程有り、それを虱潰しに楽しみながらオイルの紅茶を嗜むのが今事ここに至っての私なりのお気に入りである過ごし方だった。

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