第四環「運命の分岐点」
さてそこそこに摂取を続けて来た所で気付いたのは、段々と通路の歩幅が狭まって来ている事と、白の割合が増している事だ。私は白の方が好きで、デスゲームの発想の上での参加型と言うシステムを相手取るならより私を美酒で一早く惑わしたいと言う流れが生まれつつあると言う事なのだろう。そして決定的な流れの分岐点が来た、同時に赤と白が浮かぶ地点まで歩いて来たのだ。これはどうも赤を選んだ方が正解な気がするがどうか…白を選ぶと遠回りをしてでも延々と摂取の続きをさせられる予感が有ると言うか。
「ちょっといいかスゥ。俺は左の赤を選ぼうと思うんだが、そっちが距離的な正当ルートだとしても何も罠が無いとは限らない。先の方まで偵察をして貰っていいだろうか」
「構わないよ。でも赤を選んだ理由を聞ィかせて貰っていい?」
「ああ。白の方が好きなんだが、デスゲームに発想を読み取られると言う事で言うとこっちは危険な香りがするんだ、多分トータルの摂取量はこっちの方が多くなる。かと言って裏をかこうと赤に行ってそれがすんなり受け入れられるとも考え難いんだよ」
「そう言う事か、情熱の赤の方がお似合いだけどね。でも分かったよ行って来る」
そしてちょっと行った所で丁度私の足が通過するであろう地点でのバットの一振りが幾つか確認出来た。敵もさるもの、簡単にはこの分岐と言う新たな死の間の門を潜らせてはくれないと言う事だ。そしてスゥがバットのアクションが在った個所に再度の攻撃が無いのを点検してくれた後、私は更なる歩を進める事にした。バットの場所は覚えている、私だけの地雷と言う物がアメリョッカの水たまりの様に仕掛けられていないとも限らないので覚えておくに越したことは無い。一口、二口、五口、ああ、白が恋しい。だがそんな悠長な事を考えても居られない。スゥが私の頼みを聞いてくれた時のバットの応酬は結構激しかった。私の歩を進めると言う攻めに対するそれが何時発動してもいい様に毎度酒を口にする度に身構える。そして私だけをターゲットにした一発はやはり在った、バットの発現を目にしたタイミングで、跳ぶ。私を転ばそうと振られたバットはまんまと私の真下を通過した、成功だ。その後白のルートと赤のルートが合流したと思しき地点に私はまた戻った様だ、若干白が多いにしろ白と赤の交互が復活している。こんな状況で安心するのもどうかとは思うがいやはややはり白はいい物だ。…いい物はいい物だがこんなに満足度がいちいち高かっただろうか、幾ら赤に口が飽きつつあったその前提があるとはいえ。私は次に見えている白をまじまじと見つめてみる。粒が、大きくなっている。私は苦笑いを零す、いい物である訳が無い、死に誘う食虫植物の蜜、これが更なるスケール感で私の前に立ちはだかろうとしていた。残り目測、10m。道幅に対する私の正気もいよいよ心許ない。ひたひたと迫る酔いの死神との最後のレースが、私のクラウチングポーズを待たず始まったのだ。




