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Thùndï-Æthàltâ  作者: 篠崎彩人
第二解「電気雨」

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虹ノ七環「それは小さな輝く雨」

 残り5m、ならばそれは実際には2.5m程だ。後は何も考えず光の球に手を伸ばして全力で身を投げるかの様に跳べばいい。いや跳ぶしかない、何故なら光の球の下は全て水たまり化して居るからだ、どっちかを選んで跳べば足の植物化を回避出来るなどと言う次元ではない。水たまりによって足が植物化したら雨によるその進行とは比べ物にならない、そうである以上屈んでジャンプする上での溜めが作れなくなるので失敗は許されないだろう。目の前の水たまりを無事越えたら、その次の一回に全てを賭ける。もう頭からも左腕からも草が生え出している、思考が阻害される勢いで、ただただ痛い。あともう一歩近づく為にスゥの滞空する方へ、跳ぶ。最後の水たまり越えに成功した、光の球へ向き直る。そしてこれが最後の飛翔だ、一二の三。微かだが球に指先が触れた、が、状況が終わらない。私は即座に理解した、スゥの助けが必要だと。水たまりに足を浸して座り光の球に欠かさず指先が触れる様にしながら、見る見る浸食されて行っている両足の激痛を伴う植物化になるべく意識を向けない様にして絶叫した。

「スゥ、球に! 光の球に触ってくれ!」

「任されて!」

 すかさずスゥが私の上空に回り、光の球を触る。私は、続いていた痛みとそれからの開放感の中で眩い光が炸裂するのを確かに把握した後、間もなく気絶した。


 施設で最初に目覚めた時もこんなだったな、と思いながら私は意識を取り戻した。その時は頭の中で一緒に目覚めた小さなサンディが欠伸をしていたが、今はと言うと目の前でこれまた小柄なスゥが佇んでいる。バイバイ、と言う感じで虚空に向けて手を振るスゥ。「エゴ」と小さな声が漏れていた。

「エゴ?」

 私はオウム返しに聞き返す。

「あ、起きたんだね傷付きし戦士ニノ。そう、あっち方サンディのスゥみたいな二つ名。最後光の球に触った時一瞬繋がった感じが有ったんだ、その時向こうが一言伝えてくれたのが、エゴって名前。私もキィミにニノって二つ名を渡したでしょ?」

 傷付いた、と言うのは精神的にはそうなのかも知れないが肉体の方は全快していて、強制的に草の生えていた事も含めそんな形跡は見事に跡形も無くなっていた。これが幻の肉体でデスゲームに勝利する事の褒美と言う物か。

「気に入ってはいるよ。でも、スゥやエゴと比べると随分あだ名レベルで安直なんだが…」

「あはは、まあいいじゃないそれ位の方が可愛くて。私達のは正直遺言なのよ。何を遺したかったかって事だから」

「スゥの場合デスゲームって数式の読解者としての自分を遺したかったって事か?」

「それもベースに有るけど、このゲームで地獄が()う事になった数多の人の生き血への贖罪、の意味も有るかな。あとはアレ、スゥハァ、スゥハァの吸う」

 ここでスゥは深呼吸をして、ゆっくりとその息を吐いて空気中に拡散させた。

「私が吸い込んだ人類の魂を吐いた時そこに煌めく文明の息吹が有って欲しいってそんな願い。人類は上手く地球で呼吸つまり生きる事が出来なくなっちゃったから今が有る訳じゃない? だったら半分その呼吸の肩代わりをしてあげようかなって。エゴもエゴで、この世界三次殺しを生むまでに肥大化した人のエゴとそしてそれを断罪しようと言う三次殺し自体のエゴの両方をその二つ名で背負(しょ)い込みたかったんだと思う。さあて、お次の兄弟姉妹の遺言はどんなもんかしらね~」

 そう言って伸びをしながら私に背を向けるスゥの頬に光る物が有ったのを私は見逃さなかったが、それに触れる程野暮でも無いので黙っておいた。

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