表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Thùndï-Æthàltâ  作者: 篠崎彩人
第二解「電気雨」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/36

第六環「雨が降る」

「スゥ悪い。今まではリードして貰っていたが今後は俺がどっちに水たまりを跨いだ移動をするか指し示すからそのルートを予め潰しておいてくれないか」

「ほいほいオーケー。で、どっちに進む? 大分入り組んでるね、水たまりを踏む訳にはいかないニノの視点だと」

「そうだな。左はかなり回り込む事になりそうだから、ちょっとジャンプ幅が必要になりそうだが右かな」

「りょーかい。尻もちでも付いたら両手から草が生えちゃって相当のタイムロスだろうから慎重にね。そうなったら草刈り専念で実質もう負けみたいなもんだ」

「こ、怖い事言わないでくれよ…と言っても緊張感を保つ為には聞いておくべき事か」

「そういう事、では参ろうか」

 念入りに水たまりの上を舞う様にスゥは進む。水たまりの何処を跳んでも私が鉄の雨を被らない様にとの配慮だろう。それが功を奏してボトボトとナイフや針が複数水たまりに沈んで行く。その飛沫を浴びぬ様一歩下がっていた私は、また前に出て屈むと一思いに、跳ぶ。水たまりの向こう側に着地出来たまでは良かったが、尻もちを是が非でもつくまいとした勢いで頭が若干前に出てしまったその一瞬の隙を見逃さず、鼻先をハンマーが掠めた。その反動で正に尻もちをつく自分が頭の片隅に浮かんだが実際はそうはならなかった、あと一歩の所で踏み留まる事が出来た。光の球までの距離と言うか、ステップしなくてはならない予測数はまだまだ有る。こんな所で足踏みしては居られない、また跳ぶにしてももう少しは自分なりでいいからスマートさが必要だ。

「ヒュー危ない所だったね。頭をしこたま叩かれた挙句お手付きエンドのニノが垣間見えた気ィがしたわ」

「スゥの茶化しを聞ける位には合格点だった、って事だな。それはそうと、次も頼む」

「アイアイサー。私の読みの甘さがさっきの状況を生んだ面もあるからもっと念入りにしなきゃね」

 スゥは空中で敬礼をした後、次はこっち次はあっちと指示を飛ばす私に的確に応じてくれる。阿吽の呼吸とまでは行かないが二人に慣れが出て来た所で、不意に右腕に痛みが走った。正確には水気を一瞬感じた後に痛みが襲った。見ると、見覚えのある草が生えている。水たまりと比べれば極々微量の水だったので草もそれ相応の物でしか無かったが、だからと言って無視できる程の感覚でも無い。私は右腕を押さえようとしたが、今度は左耳に似た様な痛みが走った、これはつまり、レース終盤の究極の障害物として雨が降り始めたのだ。

「これが緑化の雨か…。あと5m位なのに、いやそれだからか」

「これを遮る手段は流石に私も持たないね…後はニノの根性頼みだ」

 勿論降って来る鉄方面の雨は逃すまいと私の進路の先で念入りな事前チェックをしてくれながら、スゥは祈る様な口調でそう告げた。後は、私がどれだけ痛みを我慢して光の球にいち早く接触出来るか、そこに全てが懸かって居る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ